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浮かび出る
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「リリーは、侯爵家には味方などいなかったのだから」
「ですが!」
ローザ公爵はカーサスがどういった反応をするかは、分からなかったが、こんなに興奮するとは思わなかった。
「ジーリスの子どもと鑑定をすべきかな。どちらにせよ、君の両親には話さなくてはならないから、一緒に相談をしようではないか」
「両親を…」
カーサスは今日は罰を聞けるのだと思っていたため、混乱を極めていた。
ローザ公爵は、父親である前侯爵であるツート・ユーフレットと、前伯爵夫人であるシシラを王城に呼ぶように手配した。
「私たちも混乱したのだ」
「はい…」
それはそうだろう、私の子か、トイズ様の子かと疑っていたところに、そうではない事実が出て来たら、時間も掛かっただろう。
だから、まだ罰も決まらないのだろう。
「信じられないのも、無理はない。メイドはジーリスは君の前ではいい顔をしていたが、蔑んでいい相手にはこっそりと嫌がらせをするような人間だったと言っていた」
「そんな!」
「だから、まずはユーフレット侯爵家から既に離れた人間に、調査のために話を聞いたら、事実だと言っていた」
カーサスは首を振り、それでも信じられなかった。
「事故で亡くなったと聞いているが」
「はい、騎士でしたので、遠征の際に怪我で亡くなりました」
「そうか」
ローザ公爵は仕事もあったので、席を外したりもしていたが、ようやくツート・ユーフレットと、シシラ・ユーフレットがやって来た。
「どうして私たちまで呼ばれたのでしょうか」
「早く離縁しないからでしょう」
「そうではありません。メリーアンの父親が、ジーリス・ユーフレットである可能性が高いことが分かりました」
「は?」
「え?どういうことですの?」
二人も当たり前ではあるが、メリーアンはカーサスの子どもだと聞かされていた。
「カーサスの子どもではなかった」
「それでなぜジーリスが」
「リリーがジーリスに強姦されたという証言が出ている」
「な!」
「…」
ツートは目を吊り上げていたが、シシラは真っ青な顔になった。
「トイズ・オスレの子ではないのか!」
「違います」
「ユーフレット侯爵が近いと出ています」
「な!だが、あの子が…そのようなことを」
ローザ公爵はツートも同じ反応なのだと思った、だがシシラ夫人はショックで真っ青になったのかと思ったが、どうも様子が違うに気付いた。
「夫人はいかがですか、ご存知だったのではありませんか」
「な!母上」
「お前」
「知りません、知るはずないではありませんか」
「見て見ぬ振りをしていたのですか」
「ち、違います」
シシラ夫人はさらに顔色が悪くなっており、ローザ公爵は何か心当たりがある、もしくは知っていることに間違いないと思った。
「同じ女性として、どうして黙っていたのですか!」
「だって、あんな出来の悪い子を引き受けてあげたのだから!」
「お、お前…」
ツートは驚いて目を見開き、カーサスは声が出なかった。さすがに強姦が行われているなど、許容が出来ることではない。
「あ…」
興奮したシシラは、ようやく失言だったと気付いた。
「母上、事実なのですか」
「ジーリスがリリーの部屋に入っていくのを何度か見ただけの…だから、子どもだなんて、知っていたわけではないわ」
「それだけではないでしょう!」
「…リリーがメイドをこっそり呼んでいたの…ジーリスは他者を見下すことで、あなたたちにいい顔をしていたの。私のことも馬鹿にしていたもの」
なぜシシラだけが気付いたのかは、ジーリスに見下されている中に自分が入っていたからである。
「どうして言わなかった!」
「だって、リリーも何も言わなかったじゃない!だから、きっと話でもしていたのだろうって…思おうって」
「そんな…」
「ですが!」
ローザ公爵はカーサスがどういった反応をするかは、分からなかったが、こんなに興奮するとは思わなかった。
「ジーリスの子どもと鑑定をすべきかな。どちらにせよ、君の両親には話さなくてはならないから、一緒に相談をしようではないか」
「両親を…」
カーサスは今日は罰を聞けるのだと思っていたため、混乱を極めていた。
ローザ公爵は、父親である前侯爵であるツート・ユーフレットと、前伯爵夫人であるシシラを王城に呼ぶように手配した。
「私たちも混乱したのだ」
「はい…」
それはそうだろう、私の子か、トイズ様の子かと疑っていたところに、そうではない事実が出て来たら、時間も掛かっただろう。
だから、まだ罰も決まらないのだろう。
「信じられないのも、無理はない。メイドはジーリスは君の前ではいい顔をしていたが、蔑んでいい相手にはこっそりと嫌がらせをするような人間だったと言っていた」
「そんな!」
「だから、まずはユーフレット侯爵家から既に離れた人間に、調査のために話を聞いたら、事実だと言っていた」
カーサスは首を振り、それでも信じられなかった。
「事故で亡くなったと聞いているが」
「はい、騎士でしたので、遠征の際に怪我で亡くなりました」
「そうか」
ローザ公爵は仕事もあったので、席を外したりもしていたが、ようやくツート・ユーフレットと、シシラ・ユーフレットがやって来た。
「どうして私たちまで呼ばれたのでしょうか」
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「そうではありません。メリーアンの父親が、ジーリス・ユーフレットである可能性が高いことが分かりました」
「は?」
「え?どういうことですの?」
二人も当たり前ではあるが、メリーアンはカーサスの子どもだと聞かされていた。
「カーサスの子どもではなかった」
「それでなぜジーリスが」
「リリーがジーリスに強姦されたという証言が出ている」
「な!」
「…」
ツートは目を吊り上げていたが、シシラは真っ青な顔になった。
「トイズ・オスレの子ではないのか!」
「違います」
「ユーフレット侯爵が近いと出ています」
「な!だが、あの子が…そのようなことを」
ローザ公爵はツートも同じ反応なのだと思った、だがシシラ夫人はショックで真っ青になったのかと思ったが、どうも様子が違うに気付いた。
「夫人はいかがですか、ご存知だったのではありませんか」
「な!母上」
「お前」
「知りません、知るはずないではありませんか」
「見て見ぬ振りをしていたのですか」
「ち、違います」
シシラ夫人はさらに顔色が悪くなっており、ローザ公爵は何か心当たりがある、もしくは知っていることに間違いないと思った。
「同じ女性として、どうして黙っていたのですか!」
「だって、あんな出来の悪い子を引き受けてあげたのだから!」
「お、お前…」
ツートは驚いて目を見開き、カーサスは声が出なかった。さすがに強姦が行われているなど、許容が出来ることではない。
「あ…」
興奮したシシラは、ようやく失言だったと気付いた。
「母上、事実なのですか」
「ジーリスがリリーの部屋に入っていくのを何度か見ただけの…だから、子どもだなんて、知っていたわけではないわ」
「それだけではないでしょう!」
「…リリーがメイドをこっそり呼んでいたの…ジーリスは他者を見下すことで、あなたたちにいい顔をしていたの。私のことも馬鹿にしていたもの」
なぜシシラだけが気付いたのかは、ジーリスに見下されている中に自分が入っていたからである。
「どうして言わなかった!」
「だって、リリーも何も言わなかったじゃない!だから、きっと話でもしていたのだろうって…思おうって」
「そんな…」
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