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鑑定結果
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「鑑定結果を伝えていいか?」
「はい…」「は、はい」「…」
カーサスとトーラスは何とか答えたが、メリーアンは声が出なかった。
「まずトーラス・ユーフレットは、カーサス・ユーフレットの子どもであった」
「はい」「はい、ありがとうございます」
似ている二人は、疑うまでもなかったが、ホッとするよりも、問題はメリーアンの結果である。
「メリーアン・オスレは、カーサス・ユーフレットの子どもだった」
重たい空気の中、カーサスとトーラスは、息を止めていたようで、結果を聞いて息を吐きだした。メリーアンは、口をパクパクしながら、泣き出した。
「良かった…」
「はい、良かったです」
「あっ、あ…あああああ」
トーラスはメリーアンの背中を擦って、落ち着かせることにした。
「リリーには伝えられたのでしょうか」
「いや、時期を見て伝えてることになっている。自暴自棄になって、面倒なことになったら堪らないからな」
リリーには鑑定をしたことすら伝えておらず、聞かれたとしても時間が掛かると言えば、納得するだろうと思っている。
ある意味、リリーが言ったように、ダリアやメリーアンに結婚を強制したわけではなく、二人が望んだ結婚であったので、何か罪になるわけではない。聴取や裏取りが終わり、罰が決まってから伝える予定になっている。
「そうですね」
「もし面会をしたとしても、結果のことは言わないでくれ」
「承知しました」
「トーラスもメリーアンもいいな?」
「はい」「はい」
ローザ公爵は鑑定結果を伝えに来ただけであったために、そのまま退室した。
「良かったですね。それでリリー・ユーフレットなのですが、着替えは持って来て欲しいとのことですが、このまま貴族牢で過ごして、聴取を受けると言っていますが、それでいいですか」
「はい、構いません」
「そうですか、再犯の恐れも、逃亡の恐れはないので、邸に戻って貰うことも可能なのですが、双方合意でよろしいですね」
「はい」
貴族牢に収監されているので、世話役はいないが、人並みの生活が出来る。素直に聴取に応じるリリーの様子に邸に戻してもいいと判断したが、本人が着替えだけ持って来て欲しい、帰る気はないと拒否した。
ユーフレット侯爵もリリーと、既に何か話し合うような段階ではないので、後は必要なら面会をして、後はロス伯爵家と話をすることになるだろう。
3人はまた呼び出しがあるかもしれないがと言われて、今日は帰ることになった。
行きの馬車は誰もあまり口を開こうとはしなかったが、帰りの馬車ではメリーアンが口火を切った。
「ダリアと話をしないと…」
「ダリア殿も、結果を聞いて安堵しているだろう」
カーサスとトーラスは、メリーアンが娘で、妹であることに安堵したが、これからのことに気を引き締めなくてはならないと考えていた。
「ええ、マーガレットに顔向けが出来なかったもの!これでようやく会いに行ける、早く会いたい。早く抱きしめたいわ」
「何があっても、我々は受け入れるしかないことは分かっているね?」
「え…でも血の繋がりはなかったのよ」
メリーアンは兄と妹ではなかったことに、浮かれてしまっていた。確かに大事なことではあったが、それは倫理的な話であって、ここから罪と向き合うことになる。
兄妹でなかったとしても、リリーの罪は消えることはない。
「何度も言っただろう、私たちはダリア殿の両親を害した側だと」
「でも、罪を犯したのはお母様じゃない」
「それは分かっている、だがダリア殿がどう考えるかだ」
「私も決めるのはダリアだと思う」
話し合いも大事だとは思うが、ダリアがどう受け止めたかを、カーサスとトーラスは知らない。
「ダリアなら分かってくれるわ!」
「はい…」「は、はい」「…」
カーサスとトーラスは何とか答えたが、メリーアンは声が出なかった。
「まずトーラス・ユーフレットは、カーサス・ユーフレットの子どもであった」
「はい」「はい、ありがとうございます」
似ている二人は、疑うまでもなかったが、ホッとするよりも、問題はメリーアンの結果である。
「メリーアン・オスレは、カーサス・ユーフレットの子どもだった」
重たい空気の中、カーサスとトーラスは、息を止めていたようで、結果を聞いて息を吐きだした。メリーアンは、口をパクパクしながら、泣き出した。
「良かった…」
「はい、良かったです」
「あっ、あ…あああああ」
トーラスはメリーアンの背中を擦って、落ち着かせることにした。
「リリーには伝えられたのでしょうか」
「いや、時期を見て伝えてることになっている。自暴自棄になって、面倒なことになったら堪らないからな」
リリーには鑑定をしたことすら伝えておらず、聞かれたとしても時間が掛かると言えば、納得するだろうと思っている。
ある意味、リリーが言ったように、ダリアやメリーアンに結婚を強制したわけではなく、二人が望んだ結婚であったので、何か罪になるわけではない。聴取や裏取りが終わり、罰が決まってから伝える予定になっている。
「そうですね」
「もし面会をしたとしても、結果のことは言わないでくれ」
「承知しました」
「トーラスもメリーアンもいいな?」
「はい」「はい」
ローザ公爵は鑑定結果を伝えに来ただけであったために、そのまま退室した。
「良かったですね。それでリリー・ユーフレットなのですが、着替えは持って来て欲しいとのことですが、このまま貴族牢で過ごして、聴取を受けると言っていますが、それでいいですか」
「はい、構いません」
「そうですか、再犯の恐れも、逃亡の恐れはないので、邸に戻って貰うことも可能なのですが、双方合意でよろしいですね」
「はい」
貴族牢に収監されているので、世話役はいないが、人並みの生活が出来る。素直に聴取に応じるリリーの様子に邸に戻してもいいと判断したが、本人が着替えだけ持って来て欲しい、帰る気はないと拒否した。
ユーフレット侯爵もリリーと、既に何か話し合うような段階ではないので、後は必要なら面会をして、後はロス伯爵家と話をすることになるだろう。
3人はまた呼び出しがあるかもしれないがと言われて、今日は帰ることになった。
行きの馬車は誰もあまり口を開こうとはしなかったが、帰りの馬車ではメリーアンが口火を切った。
「ダリアと話をしないと…」
「ダリア殿も、結果を聞いて安堵しているだろう」
カーサスとトーラスは、メリーアンが娘で、妹であることに安堵したが、これからのことに気を引き締めなくてはならないと考えていた。
「ええ、マーガレットに顔向けが出来なかったもの!これでようやく会いに行ける、早く会いたい。早く抱きしめたいわ」
「何があっても、我々は受け入れるしかないことは分かっているね?」
「え…でも血の繋がりはなかったのよ」
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「何度も言っただろう、私たちはダリア殿の両親を害した側だと」
「でも、罪を犯したのはお母様じゃない」
「それは分かっている、だがダリア殿がどう考えるかだ」
「私も決めるのはダリアだと思う」
話し合いも大事だとは思うが、ダリアがどう受け止めたかを、カーサスとトーラスは知らない。
「ダリアなら分かってくれるわ!」
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