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心憂い2
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「カーラさんが気を回して、調べる作戦を立てましたが、私がおそらくメリーアン夫人と、同じドレスの色だったのではないかと思います」
これはメリーアンに話をして、覚えていれば、裏が取れることである。
「そして、トイズ様は運命は間違うはずがないと、その後は調べることはしなかったそうです」
「父は、私たちが、結婚するなどと、考えていなかった…」
トイズが生きていた頃は、そんな話も出ていなければ、関わりすらなかった。そして、カーラが生きていた頃も、二人は婚約などしていなかった。
関わりがあることも、カーラの立場では把握は出来なかったのかもしれない。
「そうだと思います」
「そんな…では、私たちは…」
ダリアは頭を抱えて、小さくなってしまった。
「ですが、まだ決まったわけではありません。リリー夫人ですら、分かっていないのです」
「リリー夫人も…?」
「はい、メリーアン夫人はリリー夫人に似ており、見た目では判断が出来ません。トイズ様がそうだったように、リリー夫人も脅しに使っていただけなのです」
「リジーナ元側妃も同じだった。彼女も鑑定をするまで、分からなかった。分かった際も、やはりそうだったのかと、潔く認めたんだ」
スノーの言葉に、オブレオが捕捉を足し、ダリアは小さく頷いた。
「事実はまだ分かっていないのです。公爵様、そうですよね?」
スノーは、バークスに目をやって、問い掛けた。ここからは聴取の話になる。
「ああ、聴取の際にそう言っていた」
「ですが、ならばどうして、リリー夫人は私の結婚を後押ししたのですか!」
「私たちもそのことを考えていた。リリー夫人は親子鑑定が出来ることを知らなかった。口に出すのも憚れるが、二人に子どもが生まれれば、答えが出るのではないかと思っていたそうだ…」
皆が吐き気を催すような話であり、可能であればダリアに伝えたくはなかったが、聞かせなければならない。
「そんな…」
「なんてことを…」
トーサムは口を押えて、絶望したような声であった。
「遺伝的疾患があれば、ということですか」
「…そういうことらしい」
「そんなことを…信じられない」
「これからはリリー夫人は、狂っていると思って接した方がいい。まともに取り合わないようにしなさい。壊されるのはもう沢山だ」
もしかしたらリリーから聞きたいこともあるかもしれない、だが何を言ってもダリアを傷付けることになるだろう。
「実際、どうなの?何か娘さんに、疾患はあったりするの?」
ヒューナが今しか聞く機会はないと思い、優しい口調で問い掛けた。
「…実は、耳が片方聞こえ辛いのではないかと、言われています」
その言葉にスノーとリアンスは、やはり勘違いではなかったと思った。あの一時的な私たちでも、気付いたのだから、両親は敏感に気付くだろう。
でも認めたくなくて、気のせいだと、あの頃は思っていたのかもしれない。
「そう…でもだからと言って、確定したわけではないわ」
「…はい、あの子に罪はない…でも、そうであったらさらに、そうでなくても祖母たちのことに…」
ダリアはマーガレットに、ただ生まれただけなのに、罪深さを背負わせることに心を痛めた。
「ダリア、結婚する前だったら、せめて子どもが生まれる前だったらと思ってしまうのではないか?」
「…はい」
黙っていたリアンスが、ダリアに問い掛けた。
「私たちもそう思った。スノーはトイズ殿のことを思って、誰にも言っていなかったんだ。だが、私と関わったことによって、彼女のパズルが合わさってしまった」
「スノー様を責める気はありません。むしろ被害者ではないですか」
ダリアは間違っても、スノーを責める気はなかった。
むしろ間違って、助けて貰ったとしても、置き去りにされたということは、子どもだったらとても怖いことではあったのではないかと思った。
私も置き去りの犯人の息子ではないか。
これはメリーアンに話をして、覚えていれば、裏が取れることである。
「そして、トイズ様は運命は間違うはずがないと、その後は調べることはしなかったそうです」
「父は、私たちが、結婚するなどと、考えていなかった…」
トイズが生きていた頃は、そんな話も出ていなければ、関わりすらなかった。そして、カーラが生きていた頃も、二人は婚約などしていなかった。
関わりがあることも、カーラの立場では把握は出来なかったのかもしれない。
「そうだと思います」
「そんな…では、私たちは…」
ダリアは頭を抱えて、小さくなってしまった。
「ですが、まだ決まったわけではありません。リリー夫人ですら、分かっていないのです」
「リリー夫人も…?」
「はい、メリーアン夫人はリリー夫人に似ており、見た目では判断が出来ません。トイズ様がそうだったように、リリー夫人も脅しに使っていただけなのです」
「リジーナ元側妃も同じだった。彼女も鑑定をするまで、分からなかった。分かった際も、やはりそうだったのかと、潔く認めたんだ」
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「事実はまだ分かっていないのです。公爵様、そうですよね?」
スノーは、バークスに目をやって、問い掛けた。ここからは聴取の話になる。
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「私たちもそのことを考えていた。リリー夫人は親子鑑定が出来ることを知らなかった。口に出すのも憚れるが、二人に子どもが生まれれば、答えが出るのではないかと思っていたそうだ…」
皆が吐き気を催すような話であり、可能であればダリアに伝えたくはなかったが、聞かせなければならない。
「そんな…」
「なんてことを…」
トーサムは口を押えて、絶望したような声であった。
「遺伝的疾患があれば、ということですか」
「…そういうことらしい」
「そんなことを…信じられない」
「これからはリリー夫人は、狂っていると思って接した方がいい。まともに取り合わないようにしなさい。壊されるのはもう沢山だ」
もしかしたらリリーから聞きたいこともあるかもしれない、だが何を言ってもダリアを傷付けることになるだろう。
「実際、どうなの?何か娘さんに、疾患はあったりするの?」
ヒューナが今しか聞く機会はないと思い、優しい口調で問い掛けた。
「…実は、耳が片方聞こえ辛いのではないかと、言われています」
その言葉にスノーとリアンスは、やはり勘違いではなかったと思った。あの一時的な私たちでも、気付いたのだから、両親は敏感に気付くだろう。
でも認めたくなくて、気のせいだと、あの頃は思っていたのかもしれない。
「そう…でもだからと言って、確定したわけではないわ」
「…はい、あの子に罪はない…でも、そうであったらさらに、そうでなくても祖母たちのことに…」
ダリアはマーガレットに、ただ生まれただけなのに、罪深さを背負わせることに心を痛めた。
「ダリア、結婚する前だったら、せめて子どもが生まれる前だったらと思ってしまうのではないか?」
「…はい」
黙っていたリアンスが、ダリアに問い掛けた。
「私たちもそう思った。スノーはトイズ殿のことを思って、誰にも言っていなかったんだ。だが、私と関わったことによって、彼女のパズルが合わさってしまった」
「スノー様を責める気はありません。むしろ被害者ではないですか」
ダリアは間違っても、スノーを責める気はなかった。
むしろ間違って、助けて貰ったとしても、置き去りにされたということは、子どもだったらとても怖いことではあったのではないかと思った。
私も置き去りの犯人の息子ではないか。
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