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理由3
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「そして、ダリア様とメリーアン様に会ったあの日、マリー様がオリラ叔母様の友人だと分かって、叔母様に会いに行って、マリー様とダリア様の話をしたのです」
「私も?」
「はい、幼い頃なら、会ったことがあるのではないかと思ったものですから。ですが、叔母様は何も話してはくれませんでした…」
「そうだったのですか」
ダリアは記憶にないが、母が手紙を預けるほどの友人ならば、連れて行ったこともあるのかもしれないと思った。
「リリー夫人が裁かれると分かれば、叔母と話が出来るのではないか、私はそう思っています。マリー様の話を聞けるのではないかと…」
あの後、オリラはメソメソと泣いてばかりいるそうで、それでも感情が出せるようになったことは、良いことだと祖母は言っていた。
「そして、オリラ叔母様はいつもは反応さえしないのに、マリー様という言葉に僅かに反応をし、もしかしてと思い、リリー夫人の名前を出すと、取り乱して、『マリーを殺したのは、あの女よ』と言いました」
「ーっ」
「そして『そこに、手紙が入ってる…私は、私は、弱虫で、何も出来ない女だから、何も出来なかった!ごめんなさい、マリー、マリー、ごめんなさい』と泣き出しました。手紙はマリー様が持って来てくれたお菓子の空き缶に入っていました」
ダリアは同じように缶に手紙を入れる、友人だと言っていたオリラを、一瞬でも疑ったことを恥じた。
「遅くなってしまったことは、大変申し訳ございません。叔母は心を壊したことで、今自分が話しても、信用されないことを危惧していたのだと思います」
「謝るのは私の方です。私はローザ公爵様からオリラ様のことを聞いた際に、少なからず疑った自分を、今とても恥じています。母も手紙をお菓子の缶に入れていました…そんな方を、申し訳ありません」
「いえ、私もですが、叔母が誰かを頼っていたら…そう思っています」
スノーも、オリラも、誰も頼ることをしなかった。
「相手はユーフレット侯爵家ですからね」
「父親に頼れる状況でなかったことを、祖母は悔いておりました」
オブレオはその言葉に、僅かながら反応をしたが、これからは何らかの形では、助けになろうと誓った。
「そして、マリー様の調査が行われて、ローザ公爵夫妻のおかげで証拠が見付かりました」
「はい、時間は掛かりましたが、事実が分かって良かったと思っています」
「…メリーアン夫人とのことは、どうお考えですか?」
そろそろ、核心に迫らなければならないため、今後の考えを聞くことにした。
「正直なところ、困惑しているので、今、冷静な判断は出来ません。ですが、母にとって、父にもですね、私がメリーアンと結婚したことは裏切り行為ではないかと考えてしまいます」
「ダリア!それは、知らなかったことなのだから」
声を上げたのは、トーサムであった。
「ですが、両親のせめてどちらかが生きていたら、私たちは結婚することはなかったでしょう」
トイズもマリエルも被害に遭った女性の娘と、結婚させることはなかっただろう。
「それはそうだが…だが、メリーアンは何もしていない。冷静になって、マーガレットのことを考えないと」
「分かっています、でも蟠りが互いに残るのは事実でしょう。メリーアンとも話さなくてはなりませんね」
リリーの罪が確定することは間違いないだろう、ユーフレット侯爵はおそらく離縁する。だが、トーラスとメリーアンは子どもであることからは逃れられない。
「マーガレットに罪はない、同時にメリーアンにも罪はないと、私は思う」
「そうですね。小父上、ありがとうございます」
まだ赤子で未来しかないマーガレットに罪があると言われたら、耐えられない。そう考えると冷静になれた。
ただ話の流れに、言い出しにくくなったのはスノーであった。だが、下手に耳に入る前に、伝えなくてはならない。
「私も?」
「はい、幼い頃なら、会ったことがあるのではないかと思ったものですから。ですが、叔母様は何も話してはくれませんでした…」
「そうだったのですか」
ダリアは記憶にないが、母が手紙を預けるほどの友人ならば、連れて行ったこともあるのかもしれないと思った。
「リリー夫人が裁かれると分かれば、叔母と話が出来るのではないか、私はそう思っています。マリー様の話を聞けるのではないかと…」
あの後、オリラはメソメソと泣いてばかりいるそうで、それでも感情が出せるようになったことは、良いことだと祖母は言っていた。
「そして、オリラ叔母様はいつもは反応さえしないのに、マリー様という言葉に僅かに反応をし、もしかしてと思い、リリー夫人の名前を出すと、取り乱して、『マリーを殺したのは、あの女よ』と言いました」
「ーっ」
「そして『そこに、手紙が入ってる…私は、私は、弱虫で、何も出来ない女だから、何も出来なかった!ごめんなさい、マリー、マリー、ごめんなさい』と泣き出しました。手紙はマリー様が持って来てくれたお菓子の空き缶に入っていました」
ダリアは同じように缶に手紙を入れる、友人だと言っていたオリラを、一瞬でも疑ったことを恥じた。
「遅くなってしまったことは、大変申し訳ございません。叔母は心を壊したことで、今自分が話しても、信用されないことを危惧していたのだと思います」
「謝るのは私の方です。私はローザ公爵様からオリラ様のことを聞いた際に、少なからず疑った自分を、今とても恥じています。母も手紙をお菓子の缶に入れていました…そんな方を、申し訳ありません」
「いえ、私もですが、叔母が誰かを頼っていたら…そう思っています」
スノーも、オリラも、誰も頼ることをしなかった。
「相手はユーフレット侯爵家ですからね」
「父親に頼れる状況でなかったことを、祖母は悔いておりました」
オブレオはその言葉に、僅かながら反応をしたが、これからは何らかの形では、助けになろうと誓った。
「そして、マリー様の調査が行われて、ローザ公爵夫妻のおかげで証拠が見付かりました」
「はい、時間は掛かりましたが、事実が分かって良かったと思っています」
「…メリーアン夫人とのことは、どうお考えですか?」
そろそろ、核心に迫らなければならないため、今後の考えを聞くことにした。
「正直なところ、困惑しているので、今、冷静な判断は出来ません。ですが、母にとって、父にもですね、私がメリーアンと結婚したことは裏切り行為ではないかと考えてしまいます」
「ダリア!それは、知らなかったことなのだから」
声を上げたのは、トーサムであった。
「ですが、両親のせめてどちらかが生きていたら、私たちは結婚することはなかったでしょう」
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「それはそうだが…だが、メリーアンは何もしていない。冷静になって、マーガレットのことを考えないと」
「分かっています、でも蟠りが互いに残るのは事実でしょう。メリーアンとも話さなくてはなりませんね」
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「マーガレットに罪はない、同時にメリーアンにも罪はないと、私は思う」
「そうですね。小父上、ありがとうございます」
まだ赤子で未来しかないマーガレットに罪があると言われたら、耐えられない。そう考えると冷静になれた。
ただ話の流れに、言い出しにくくなったのはスノーであった。だが、下手に耳に入る前に、伝えなくてはならない。
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