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悲しい事実4
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「聞きます、君は辛いなら席を外すか」
ダリアは再びしくしくと嘆いているメリーアンに、声を掛けた。
「っいいえ、私も聞きます」
「先ほどのこととどちらが辛いか、比べることではないが、私も話すことが心苦しいと思って聞いて欲しい」
「はい」
「はい…」
ダリアは母が義母に殺された以上に辛いことはないと思っており、メリーアンはまだあるの、どうすればいいのかと、だが席を外して、ダリアだけが聞いて、何も知らないではいられないと聞くことにした。
「リリーは、暴行罪、強制性交罪でも裁かれることになる」
「…」
ダリアは暴行罪だけであれば、まだ想定内だっただろうが、予想外の言葉に言葉が出なかった。
「…そんな、母は、母は認めたのですか!」
「ああ、認めている」
「そんな…」
メリーアンの顔は悲しみを帯びていたが、絶望に変わった。
「父に……ですか」
「ああ、そうだ」
ダリアは静かに強い眼差しで、バークスに問い掛けた。
「え…」
ダリアは話の流れから察していたようだが、メリーアンはなぜか相手はトイズではないと思っていた。
「嘘、ですよね…」
「いいや、あのリリーの様子からして、相手はトイズだと思わないか?媚薬を盛って、性行為を強要したそうだ。強い薬で、トイズには記憶がなかった」
「だったら、母だという証拠は」
メリーアンには殺したことに加担した上に、元婚約者で、自身の義父で、夫の父を襲っていたなんて…そもそも男性を襲うなど、同じ女性としても間違いであって欲しかった。そんな母親を持っていることを、認めたくなかった。
「リリーが媚薬を盛ったことも、本人が認めている」
「そんな…嘘…」
メリーアンはどんな顔をしていいか分からず、ダリアの方を見れなかった。
「トイズはマリエルのことを思って、訴えなかった。マリエルが知っていたかは分からない。だが、訴えるべきだったかと、トイズは言っていたそうだ」
「結婚後のことなんですね…」
「そうだ、トイズも結婚しているということは、リリーもユーフレット侯爵と結婚してからのことだ」
「そうですか…」
ここまで来ると、ダリアにとっては想定内のことであった。
だが、リリー夫人は両親が生きている頃は、近付いてくるようなことはなかった。メリーアンと出会う前、婚約する前、結婚する前、せめて子供が生まれる前であったならばと、考えていた。考える時点でダリアは後悔していた。
「ダリア…私、どうやって償えばいいか分からないわ」
「ああ…」
「いくら不甲斐ない母親だったとしても、犯罪を犯すなんて…なんてことを…どうすれば、いいのか」
メリーアンは、ダリアにメリーアンは関係ない。親は親、子は子だと言って欲しかった。
だが、ダリアはそのような精神状態ではなく、両親のことは不幸なことで、仕方ないと諦めながらも、どこかでずっと求めていた。
母は事故で、父は病気、そう思って生きていた。
リリーの名前が挙がっていると聞いても、そんなまさか、間違いだろうと思っていた。でもどこかソワソワする気持ちは抑えられず、メリーアンにここへ来るまでに打ち明けることも出来なかった。
だが、母は殺されて、父は媚薬を飲まされて、襲われていた。それが一生添い遂げようと思っていた、妻の母だと言われたら、私は恨まずにはいられない。
そこへメリーアンの兄・トーラスが慌てた様子で、応接室にやって来た。
「メリーアン、聞いたか?」
「……はい」
「ローザ公爵様、公爵夫人、ランドマーク前侯爵様、ダリア殿も、王城で父が呼んでおりますので、メリーアンを連れて行ってもいいでしょうか」
皆は頷き、メリーアンは後ろ髪を引かれながら、トーラスに連れていかれた。
「一つ聞いてもいいですか」
「なんだ?」
「今になって、一気に分かったのはなぜですか」
「場所を変えようか」
トーラスもメリーアンもいない以上、ユーフレット侯爵邸にいる意味はない。
ダリアは再びしくしくと嘆いているメリーアンに、声を掛けた。
「っいいえ、私も聞きます」
「先ほどのこととどちらが辛いか、比べることではないが、私も話すことが心苦しいと思って聞いて欲しい」
「はい」
「はい…」
ダリアは母が義母に殺された以上に辛いことはないと思っており、メリーアンはまだあるの、どうすればいいのかと、だが席を外して、ダリアだけが聞いて、何も知らないではいられないと聞くことにした。
「リリーは、暴行罪、強制性交罪でも裁かれることになる」
「…」
ダリアは暴行罪だけであれば、まだ想定内だっただろうが、予想外の言葉に言葉が出なかった。
「…そんな、母は、母は認めたのですか!」
「ああ、認めている」
「そんな…」
メリーアンの顔は悲しみを帯びていたが、絶望に変わった。
「父に……ですか」
「ああ、そうだ」
ダリアは静かに強い眼差しで、バークスに問い掛けた。
「え…」
ダリアは話の流れから察していたようだが、メリーアンはなぜか相手はトイズではないと思っていた。
「嘘、ですよね…」
「いいや、あのリリーの様子からして、相手はトイズだと思わないか?媚薬を盛って、性行為を強要したそうだ。強い薬で、トイズには記憶がなかった」
「だったら、母だという証拠は」
メリーアンには殺したことに加担した上に、元婚約者で、自身の義父で、夫の父を襲っていたなんて…そもそも男性を襲うなど、同じ女性としても間違いであって欲しかった。そんな母親を持っていることを、認めたくなかった。
「リリーが媚薬を盛ったことも、本人が認めている」
「そんな…嘘…」
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「トイズはマリエルのことを思って、訴えなかった。マリエルが知っていたかは分からない。だが、訴えるべきだったかと、トイズは言っていたそうだ」
「結婚後のことなんですね…」
「そうだ、トイズも結婚しているということは、リリーもユーフレット侯爵と結婚してからのことだ」
「そうですか…」
ここまで来ると、ダリアにとっては想定内のことであった。
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「ダリア…私、どうやって償えばいいか分からないわ」
「ああ…」
「いくら不甲斐ない母親だったとしても、犯罪を犯すなんて…なんてことを…どうすれば、いいのか」
メリーアンは、ダリアにメリーアンは関係ない。親は親、子は子だと言って欲しかった。
だが、ダリアはそのような精神状態ではなく、両親のことは不幸なことで、仕方ないと諦めながらも、どこかでずっと求めていた。
母は事故で、父は病気、そう思って生きていた。
リリーの名前が挙がっていると聞いても、そんなまさか、間違いだろうと思っていた。でもどこかソワソワする気持ちは抑えられず、メリーアンにここへ来るまでに打ち明けることも出来なかった。
だが、母は殺されて、父は媚薬を飲まされて、襲われていた。それが一生添い遂げようと思っていた、妻の母だと言われたら、私は恨まずにはいられない。
そこへメリーアンの兄・トーラスが慌てた様子で、応接室にやって来た。
「メリーアン、聞いたか?」
「……はい」
「ローザ公爵様、公爵夫人、ランドマーク前侯爵様、ダリア殿も、王城で父が呼んでおりますので、メリーアンを連れて行ってもいいでしょうか」
皆は頷き、メリーアンは後ろ髪を引かれながら、トーラスに連れていかれた。
「一つ聞いてもいいですか」
「なんだ?」
「今になって、一気に分かったのはなぜですか」
「場所を変えようか」
トーラスもメリーアンもいない以上、ユーフレット侯爵邸にいる意味はない。
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