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悲しい事実3
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「申し訳ありません…」
「いや、誰が話すか、リリーを同席させるべきか、悩むような内容ではあった。だが、何も見ないまま事実を聞かされるより、事実を目にした方がいいのではないかと思ったのだが…無理をさせたな」
「いっ、いえ…」
「ダリア、ごめんなさい、本当に、どうしたら…」
謝られても君は関係ないと、言えそうもなかった。
子どもに罪はないとは思えず、ダリアは今まで当たり前に呼ばれていたはずの『ダリア』と呼ぶことも、どこか嫌な気持ちになっていた。
「リリー夫人は父が好きだったから、母を殺したのですね」
「…そのようだな」
返事をしてくれなかったメリーアンに、静かに泣き出しており、今までのような自信のある侯爵令嬢だった姿は、どこにもなかった。
「父とは納得して婚約を解消していなかったのでしょうか」
「リリー夫人は、納得していなかったのだろうな…トイズに何度も復縁を迫っていたそうだ」
「リリー夫人がそう言ったのですか?」
「いや、私がトイズからそう聞いている」
バークスも聞いているが、スノーも本人から聞いている。
「父が?」
「リリーはトイズの兄が亡くなったから、婚約を解消したと思い込もうとしていたようだが、時間軸が違う。トイズは子爵家の勉強をしていたのだが、リリーは構ってくれないと齟齬が出来て、二人の都合で解消となった」
「そう聞いています」
その言葉に微かに息を呑んだのはメリーアンだった。二人はあまりトイズとリリーの話は、過去のことであり、互いに話すことはなかった。
ダリアはリリーから、トイズについて聞くこともなかった。
「リリーは泣く泣く引き裂かれたと、記憶をすり替えていた。メリーアンはどう聞いていたんだ?事実とは異なるのではないか?」
「…私わっ、母が話していたように聞いていました」
「リリーからか?」
「はい…だから、あなたは、好きな人と、結婚して欲しいと…」
メリーアンもこの状況で言い辛そうではあったが、3人はリリーが言いそうではあると見抜いていた。
「…リリー夫人にとって、愛する人の息子だから、私たちの関係を応援してくれていたのでしょうか」
「ああ、そのようだ」
譲ってあげたと言っていたことは、出来れば知られたくはないが、いずれ聞くことになるかもしれないと、バークスは思った。
「もし、父が生きていたら、おそらく結婚を反対していたと…トーサム小父上が言っておりました」
「…え」
驚いたのはメリーアンであり、反対をしているのは、父であるユーフレット侯爵であると思っていた。
実はダリアも、ローザ公爵家のように親戚内では、リリーの娘ということで、反対を受けていた。だが、メリーアンは、リリー夫人に似ているのは顔だけだと、説得をしたのだ。
「君には言わなかったが、リリー夫人と関わりたくないとは言われていた。でもそれは周りが皆、思っていることだと…でも違ったかもしれませんね」
「もしかしたら、トーサムはトイズから聞いていたもかもしれないな」
従弟であるトーサムなら聞いていた可能性は高い。だが、メリーアンのことを聞いて、ダリアのことを思って、伝えなかったのかもしれない。
「だったら、母は危惧していなかったのでしょうか」
「関わらないようにしていたと思うわ」
オリラがリリーの名前を出していたように、マリエルもリリーに関わることはなかった。
トイズもおそらく、そのような状況なら避けていただろう。
「マリエルとリリーとの接点はないもの。だから、直接の嫌がらせではなく、嫌がらせの手紙だったのでしょう」
「そうですか…」
「あと、また心を乱すことにはなる話をしなくてはならない」
「リリー夫人のことですか」
「そうだ…」
バークスはまだ脅迫罪、殺人教唆罪しか伝えていない。これからどちらか罪深いかは分からないが、暴行罪、強制性交罪を告げなくてはならない。
「いや、誰が話すか、リリーを同席させるべきか、悩むような内容ではあった。だが、何も見ないまま事実を聞かされるより、事実を目にした方がいいのではないかと思ったのだが…無理をさせたな」
「いっ、いえ…」
「ダリア、ごめんなさい、本当に、どうしたら…」
謝られても君は関係ないと、言えそうもなかった。
子どもに罪はないとは思えず、ダリアは今まで当たり前に呼ばれていたはずの『ダリア』と呼ぶことも、どこか嫌な気持ちになっていた。
「リリー夫人は父が好きだったから、母を殺したのですね」
「…そのようだな」
返事をしてくれなかったメリーアンに、静かに泣き出しており、今までのような自信のある侯爵令嬢だった姿は、どこにもなかった。
「父とは納得して婚約を解消していなかったのでしょうか」
「リリー夫人は、納得していなかったのだろうな…トイズに何度も復縁を迫っていたそうだ」
「リリー夫人がそう言ったのですか?」
「いや、私がトイズからそう聞いている」
バークスも聞いているが、スノーも本人から聞いている。
「父が?」
「リリーはトイズの兄が亡くなったから、婚約を解消したと思い込もうとしていたようだが、時間軸が違う。トイズは子爵家の勉強をしていたのだが、リリーは構ってくれないと齟齬が出来て、二人の都合で解消となった」
「そう聞いています」
その言葉に微かに息を呑んだのはメリーアンだった。二人はあまりトイズとリリーの話は、過去のことであり、互いに話すことはなかった。
ダリアはリリーから、トイズについて聞くこともなかった。
「リリーは泣く泣く引き裂かれたと、記憶をすり替えていた。メリーアンはどう聞いていたんだ?事実とは異なるのではないか?」
「…私わっ、母が話していたように聞いていました」
「リリーからか?」
「はい…だから、あなたは、好きな人と、結婚して欲しいと…」
メリーアンもこの状況で言い辛そうではあったが、3人はリリーが言いそうではあると見抜いていた。
「…リリー夫人にとって、愛する人の息子だから、私たちの関係を応援してくれていたのでしょうか」
「ああ、そのようだ」
譲ってあげたと言っていたことは、出来れば知られたくはないが、いずれ聞くことになるかもしれないと、バークスは思った。
「もし、父が生きていたら、おそらく結婚を反対していたと…トーサム小父上が言っておりました」
「…え」
驚いたのはメリーアンであり、反対をしているのは、父であるユーフレット侯爵であると思っていた。
実はダリアも、ローザ公爵家のように親戚内では、リリーの娘ということで、反対を受けていた。だが、メリーアンは、リリー夫人に似ているのは顔だけだと、説得をしたのだ。
「君には言わなかったが、リリー夫人と関わりたくないとは言われていた。でもそれは周りが皆、思っていることだと…でも違ったかもしれませんね」
「もしかしたら、トーサムはトイズから聞いていたもかもしれないな」
従弟であるトーサムなら聞いていた可能性は高い。だが、メリーアンのことを聞いて、ダリアのことを思って、伝えなかったのかもしれない。
「だったら、母は危惧していなかったのでしょうか」
「関わらないようにしていたと思うわ」
オリラがリリーの名前を出していたように、マリエルもリリーに関わることはなかった。
トイズもおそらく、そのような状況なら避けていただろう。
「マリエルとリリーとの接点はないもの。だから、直接の嫌がらせではなく、嫌がらせの手紙だったのでしょう」
「そうですか…」
「あと、また心を乱すことにはなる話をしなくてはならない」
「リリー夫人のことですか」
「そうだ…」
バークスはまだ脅迫罪、殺人教唆罪しか伝えていない。これからどちらか罪深いかは分からないが、暴行罪、強制性交罪を告げなくてはならない。
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