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リリー夫人4

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「あなたたちには一生分からない崇高なことを、既にやり遂げているの」
「何だ、それは」
「教えてあげないわ、私だけのものだもの、うふふ。私がいなくなっても続くわ」

 リリーは得意げに、3人に向かって、満足そうに笑っている。

「ヒントが欲しい?でも、理解も出来ない方に、知って貰っても無意味よね」
「子どものことか?」
「子ども?」
「ああ、子どものことではないのか?」
「じゃあ、トイズのことかしら?」

 3人もここまで来ても、リリーが素直に話すとは思っていない。

 リジーナ元側妃を脅したり、リサナを利用していたことから、勉強は出来なくても、悪巧みは出来ることが分かったからである。

「トイズ様のこと…?」

 リリーはどんどん困惑した表情に変え、不安そうな声になっていった。

「リリーがトイズを襲ったことは、罪状に含めましょう」
「ああ、そのつもりだ」
「待って!何よ、それ…」

 思いがけない言葉に、リリーは声を上げた。

「トイズを襲ったでしょう?媚薬も飲ませているから暴行罪もあるわね。そして、強制性交罪になるわ」
「同意の上よ」

 性交を行ったことを認めたことを、リリーは理解しているのだろうかと思ったが、既にそんなことは気にしていないのだろう。

「媚薬を飲ませて置いて、同意にはならないわ。証拠もあるから」

 トイズは何かを盛られたことを侍医に調べさせており、相手は伏せていたようだが、今回の馬のハンカチの成分と一致しており、カーラの手紙もある。

「え…待って」
「あなたはさらにダリアに嫌われることになるけど、崇高なことを行ったのだから、いいのでしょう?」
「そうだな。崇高なのだから、脅迫罪、殺人教唆罪、暴行罪、強制性交罪くらいでは揺らぐことはないだろう」

 追い込むバークスとヒューナに、オブレオも同意するように頷いている。

「待って、そんなことをしたら、トイズ様が恥を掻くわ」
「恥?なぜかしら?」
「だって、女性に襲われたなんて…恥ずかしいことでしょう?トイズ様がそんなことを望むはずがないわ」
「女性ではなく、リリー・ユーフレットだ!女性をひとまとめにするな!」

 バークスは大きな声で怒鳴り、リリーも体をビクリとさせた。

「恥を掻くのはユーフレット侯爵と、息子と娘、あと孫だろう。一生、言われるだろうな」

 落ち着いた声で続いたのはオブレオであった。

「そんな…」
「トイズは訴えるべきだったと、後悔していたそうだ」
「そんな、そんなこと…あり得ないわ」
「マリエルのために、トイズは黙っていたのよ。それなのに、ユーフレット侯爵に言うと言って、脅していたのでしょう!吐き気がするわ」

 ヒューナは言っても言わなくても、トイズもマリエルも苦しむことになる。そうなれば、トイズは知らせない方を選ぶことは、想像が出来る。

「だって、私は、トイズ様と…」
「あなたは、婚約を解消されたの!何度言ったら分かるの?」
「違う!トイズ様は望んでいないわ、私を嫌うなんて、あり得ない」

 リリーは頭を抱えて、髪の毛をガシガシと掻いている。

「無理矢理に関係を持って幸せだった?マリエルを殺して幸せになれた?」
「だって、トイズ様は亡くなって…私にはトイズ様が全てだったのに、どこにいるかも分からなくなって…亡くなったと言われて、私は、私は…」

 マリエルが亡くなって、トイズはユーフレット侯爵に言いたいなら言えばいいと、会ってくれなくなり、仕舞いには姿を消してしまった。

 そして、次に聞いたのは病死したということだった。あの日、リリーの世界は一度、真っ白になった。

「で、メリーアンはトイズの子なのか?」

 疲弊していたはずのリリーはその言葉に、今日一番目を大きくした。
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