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リリー夫人3
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「あれは頼まれて渡したのよ、困っているからと」
「夫婦生活の相談をされたのか?」
「そうよ、だから善意で渡したのよ!事故とは関係ないわ」
「リジーナ元側妃から得た媚薬をか?」
「ええ、そうよ」
リリーは睡眠薬だと言って、渡したことを忘れているようだった。媚薬と睡眠薬では作用が全く違う。
「何か忘れていないか?」
「…え」
「実行犯は既に拘束されているんだぞ?」
「だから、リサナ夫人が私を巻き込もうとしているのでしょう?私は侯爵夫人なのよ、伯爵夫人より、私の言うことが正しいに決まっているじゃない」
確かにそういった風潮はあるが、ここにいるのは公爵家と侯爵家である。便宜を図ってくれるような相手ではないということが、分からないのか。
「都合のいい時だけ、侯爵夫人とは…」
「陛下の耳にも入っているわ、あなたに直接聞きたいことがあったから、騎士団はまだ来ていない状況なの。分かる?」
「陛下だって私の言うことを信じてくれるわ」
「どうして?」
「もう側妃はいないのにか?」
「っっっ!」
「リジーナ元側妃を脅していたのは、こういう時に使う気だったのか。なるほどな、ようやく分かったよ」
オブレオの言葉に、バークスとヒューナも頷いた。
媚薬も手に入れたかったのだろうが、マリエルのことで疑われることになったら、リジーナ元側妃を脅して、自分の疑いを外してもらうつもりだったのだろう。
力はなくとも、托卵という疑惑のためにはリジーナもやるしかなかった。
「リジーナ元側妃はもういない、さあどうする?ユーフレット侯爵も、今頃、説明を受けているはずだ」
王城で我々が聞き取りをしているという説明が、なされているだろう。
「そんな…誤解なのに」
「証拠があると言っているだろう!」
「何の証拠よ!デタラメを言わないで!」
リリーはヒステリックに喚くが、リリーが感情的になればなるほど、3人は手応えを感じていた。
「マリエル宛ての嫌がらせの手紙だよ」
「そんなもの書いていないわ」
「筆跡が一致している。それを見付けたのは、ダリアだ…ショックだっただろうな、これからどうなることか」
「折角、子どもも生まれたところなのにね」
「……え、うそ、ダリア様が知っていると言うの?」
リリーは真っ青な顔になっており、上半身をあたふたと動かしている。
「えっ、ダリア様が私を、えっ、どうすれば、違うの、あれは、違う」
不思議とメリーアンを心配する言葉は出て来ず、ダリアのことで頭がいっぱいのようである。
「ダリアも、母親を殺した相手の娘が妻だなんて耐えられないかもしれないな」
「違う、違う、違う」
「ダリアは君を、トイズ以上に嫌悪するだろうな」
「トイズにも、ダリアにも嫌われてどんな気分?」
ヒューナはリリーの弱点である2人を引き合いに出して、一気に動揺を誘った。
「違う!そんなことあってはならないのよ、絶対に、私は間違っていないわ」
「君が手を貸したことは、証拠も証言も取れている」
リジーナが媚薬をリリーに渡した証言、必要ならトイズに使ったという手紙もある。そして、チェリーの証言と証拠、リサナの自白は既に繋がっている。
どのくらいの罰になるかは、まだ分からないが、無罪になることはない。
「何がしたかったの?マリエルを殺して、自分も離縁して、トイズと再婚する気だったの?オスレ伯爵夫妻が許すわけないじゃない、まさかそちらも殺す気だったの?」
リリーは大きな瞳で、じっとヒューナを見つめた。
「あ…そうか」
そう呟くと、リリーはアハハハハと笑い出し、その声はどんどん大きくなっていき、その場は異様な雰囲気に包まれた。
「私を愚かだと思っているのでしょう?でもいいわ、もう。私はもういい、だってやり遂げたもの」
「夫婦生活の相談をされたのか?」
「そうよ、だから善意で渡したのよ!事故とは関係ないわ」
「リジーナ元側妃から得た媚薬をか?」
「ええ、そうよ」
リリーは睡眠薬だと言って、渡したことを忘れているようだった。媚薬と睡眠薬では作用が全く違う。
「何か忘れていないか?」
「…え」
「実行犯は既に拘束されているんだぞ?」
「だから、リサナ夫人が私を巻き込もうとしているのでしょう?私は侯爵夫人なのよ、伯爵夫人より、私の言うことが正しいに決まっているじゃない」
確かにそういった風潮はあるが、ここにいるのは公爵家と侯爵家である。便宜を図ってくれるような相手ではないということが、分からないのか。
「都合のいい時だけ、侯爵夫人とは…」
「陛下の耳にも入っているわ、あなたに直接聞きたいことがあったから、騎士団はまだ来ていない状況なの。分かる?」
「陛下だって私の言うことを信じてくれるわ」
「どうして?」
「もう側妃はいないのにか?」
「っっっ!」
「リジーナ元側妃を脅していたのは、こういう時に使う気だったのか。なるほどな、ようやく分かったよ」
オブレオの言葉に、バークスとヒューナも頷いた。
媚薬も手に入れたかったのだろうが、マリエルのことで疑われることになったら、リジーナ元側妃を脅して、自分の疑いを外してもらうつもりだったのだろう。
力はなくとも、托卵という疑惑のためにはリジーナもやるしかなかった。
「リジーナ元側妃はもういない、さあどうする?ユーフレット侯爵も、今頃、説明を受けているはずだ」
王城で我々が聞き取りをしているという説明が、なされているだろう。
「そんな…誤解なのに」
「証拠があると言っているだろう!」
「何の証拠よ!デタラメを言わないで!」
リリーはヒステリックに喚くが、リリーが感情的になればなるほど、3人は手応えを感じていた。
「マリエル宛ての嫌がらせの手紙だよ」
「そんなもの書いていないわ」
「筆跡が一致している。それを見付けたのは、ダリアだ…ショックだっただろうな、これからどうなることか」
「折角、子どもも生まれたところなのにね」
「……え、うそ、ダリア様が知っていると言うの?」
リリーは真っ青な顔になっており、上半身をあたふたと動かしている。
「えっ、ダリア様が私を、えっ、どうすれば、違うの、あれは、違う」
不思議とメリーアンを心配する言葉は出て来ず、ダリアのことで頭がいっぱいのようである。
「ダリアも、母親を殺した相手の娘が妻だなんて耐えられないかもしれないな」
「違う、違う、違う」
「ダリアは君を、トイズ以上に嫌悪するだろうな」
「トイズにも、ダリアにも嫌われてどんな気分?」
ヒューナはリリーの弱点である2人を引き合いに出して、一気に動揺を誘った。
「違う!そんなことあってはならないのよ、絶対に、私は間違っていないわ」
「君が手を貸したことは、証拠も証言も取れている」
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どのくらいの罰になるかは、まだ分からないが、無罪になることはない。
「何がしたかったの?マリエルを殺して、自分も離縁して、トイズと再婚する気だったの?オスレ伯爵夫妻が許すわけないじゃない、まさかそちらも殺す気だったの?」
リリーは大きな瞳で、じっとヒューナを見つめた。
「あ…そうか」
そう呟くと、リリーはアハハハハと笑い出し、その声はどんどん大きくなっていき、その場は異様な雰囲気に包まれた。
「私を愚かだと思っているのでしょう?でもいいわ、もう。私はもういい、だってやり遂げたもの」
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