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手紙1
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「そうですね、私なら渡しませんね…」
「でも離縁する前だったら…どうにかすると預かったのかもしれない」
オリラが嫁いでいたのは、マリエルよりも爵位の高い侯爵家であった。
「確かに、これがいつの手紙かが分かりませんものね」
とりあえず読んでみようということになり、オリラが眠る部屋でそのまま、二人で読むことになった。
そこにはどの手紙も、オリラの言ったように、別れろ、離縁しろ、相応しくない、殺してやるとも書かれていた。差出人の名前はどこにも書いていなかった。
しかも、字体も全部ではないが、違うものになっており、同じ人間が書いたものではない。誰かに代筆させたのだろう。
「これなんて酷いわ」
そう言ったメイラの持つ手紙には、男性といるところを見た。あの男と不貞をしているのだろう、この阿婆擦れが!などと書かれていた。
そして、不細工、気持ちの悪い顔、よく表を歩ける、死んだ方がいいんじゃないかとも書かれているものもあった。
自分に宛てられたものでなくても、おかしくなりそうだった。
「ノイローゼになりそうです」
「本当にそうね、だからオリラはこの缶に閉じ込めてしまったのかもしれないわ。こんなもの読めるような状態ではなかったもの」
「それなら返して欲しいと言いそうではありませんか」
「そうね、でもこんなもの、オリラも返したくはないと思ったのかもしれない」
確かに手元に置いておくだけも嫌だろう。
「夫に相談していなかったのかしら?」
「オリラが言うように、リリー夫人だったならば、言い難かったのかもしれないわ」
リリーも当時も、今も侯爵夫人である。
「それでオリラが預かったのかもしれない」
「調べた可能性もあるということでしょうか…」
「あるかもしれないし、相手にされなかったということも…あるかもしれない」
「ランドマーク侯爵家に頼めば良かったのに」
メイラはスノーのその言葉に、ぎゅっと目を瞑った。
「それは私のせいね、関わらないようにしていたから、オリラも頼ってはいけないと思ったのかもしれないわ」
「…ごめんなさい」
スノーは簡単に言ってしまったが、メイラにとっては様々な思いがあり、失言だったと反省した。
「いいえ、スノーの言う通りなの。あなたがランドマーク侯爵家に行くことになった時に、ようやく頼るべきだったと思ったの。意地になんてならなければ良かった。爵位って、高いものに守って貰うという使い方も出来たはずなのよね」
頼っていれば、オリラはこんなに苦しむことはなかったかもしれないと、思ったことは何度もある。
「私も、前ならそうは思わなかったかもしれません」
「もしかして、ランドマーク侯爵家で辛いことがあった?」
ランドマーク侯爵家に行って、良くして貰っていると言っていたが、何もなかったということではない。
「いえ、良くしていただいたのは事実です。でも、無意識に弁えていたとは思います。ここは私の家ではないと…かと言って、レリリス伯爵家でもなかった」
「スノー…」
「でも今は少し変わりました。手に負えないことは、手遅れになる前に助けを求められるなら、求めるべきだと考えています」
「そうね」
オリラが結婚する前に、離縁する前に、心を壊す前に、マリエル様もこのような状態だったのなら、相談は出来なかったのかもしれない。
「この手紙、預かってもいいですか」
「ええ、オリラもそのつもりで渡したのでしょうから。オリラには目が覚めたら、私から説明しておくわ」
「叔母様、大丈夫かしら」
眠ったままのオリラだったが、ずっと一人で抱えていたのだと思うと、スノーは誰よりも気持ちが分かる気がした。
「でも離縁する前だったら…どうにかすると預かったのかもしれない」
オリラが嫁いでいたのは、マリエルよりも爵位の高い侯爵家であった。
「確かに、これがいつの手紙かが分かりませんものね」
とりあえず読んでみようということになり、オリラが眠る部屋でそのまま、二人で読むことになった。
そこにはどの手紙も、オリラの言ったように、別れろ、離縁しろ、相応しくない、殺してやるとも書かれていた。差出人の名前はどこにも書いていなかった。
しかも、字体も全部ではないが、違うものになっており、同じ人間が書いたものではない。誰かに代筆させたのだろう。
「これなんて酷いわ」
そう言ったメイラの持つ手紙には、男性といるところを見た。あの男と不貞をしているのだろう、この阿婆擦れが!などと書かれていた。
そして、不細工、気持ちの悪い顔、よく表を歩ける、死んだ方がいいんじゃないかとも書かれているものもあった。
自分に宛てられたものでなくても、おかしくなりそうだった。
「ノイローゼになりそうです」
「本当にそうね、だからオリラはこの缶に閉じ込めてしまったのかもしれないわ。こんなもの読めるような状態ではなかったもの」
「それなら返して欲しいと言いそうではありませんか」
「そうね、でもこんなもの、オリラも返したくはないと思ったのかもしれない」
確かに手元に置いておくだけも嫌だろう。
「夫に相談していなかったのかしら?」
「オリラが言うように、リリー夫人だったならば、言い難かったのかもしれないわ」
リリーも当時も、今も侯爵夫人である。
「それでオリラが預かったのかもしれない」
「調べた可能性もあるということでしょうか…」
「あるかもしれないし、相手にされなかったということも…あるかもしれない」
「ランドマーク侯爵家に頼めば良かったのに」
メイラはスノーのその言葉に、ぎゅっと目を瞑った。
「それは私のせいね、関わらないようにしていたから、オリラも頼ってはいけないと思ったのかもしれないわ」
「…ごめんなさい」
スノーは簡単に言ってしまったが、メイラにとっては様々な思いがあり、失言だったと反省した。
「いいえ、スノーの言う通りなの。あなたがランドマーク侯爵家に行くことになった時に、ようやく頼るべきだったと思ったの。意地になんてならなければ良かった。爵位って、高いものに守って貰うという使い方も出来たはずなのよね」
頼っていれば、オリラはこんなに苦しむことはなかったかもしれないと、思ったことは何度もある。
「私も、前ならそうは思わなかったかもしれません」
「もしかして、ランドマーク侯爵家で辛いことがあった?」
ランドマーク侯爵家に行って、良くして貰っていると言っていたが、何もなかったということではない。
「いえ、良くしていただいたのは事実です。でも、無意識に弁えていたとは思います。ここは私の家ではないと…かと言って、レリリス伯爵家でもなかった」
「スノー…」
「でも今は少し変わりました。手に負えないことは、手遅れになる前に助けを求められるなら、求めるべきだと考えています」
「そうね」
オリラが結婚する前に、離縁する前に、心を壊す前に、マリエル様もこのような状態だったのなら、相談は出来なかったのかもしれない。
「この手紙、預かってもいいですか」
「ええ、オリラもそのつもりで渡したのでしょうから。オリラには目が覚めたら、私から説明しておくわ」
「叔母様、大丈夫かしら」
眠ったままのオリラだったが、ずっと一人で抱えていたのだと思うと、スノーは誰よりも気持ちが分かる気がした。
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