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叔母
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「謝ることではないわ、私もますますお会いしたかったわ」
「スノー様から見て、母はどんな人でしたか?」
「お優しい方でした、よく3人で喫茶店に行ったりしました」
スノーはもしかしたら、トイズはマリエルから、私の話を聞いていたことがあったのかもしれないと思った。
「私も母と行ったことがありました」
「ダリア、今度行ってみましょうよ。スノー様、お店を覚えているかしら?」
「はい、マキシムや、ロコン、後はパーデュラスにも行ったことがありました」
「まあまあ、全部行ってみましょうよ」
「そうだな」
二人は嬉しそうに、微笑んでおり、スノーも叔母のことで隠すようなことはないのだが、ホッとした。
「やはり、スノーは記憶力がいいな」
「そうですかね?でも人から思い出しているだけです」
「なるほど、そういった回路になっているのか」
リアンスは少々焦ったが、改めて感心したように、スノーを見ながら言った。
「いや、スノー様が言えば説得力がありますから、きっと友人だったのでしょう。是非、一緒にとお誘いしたいところですが、難しいですよね」
「はい、会話もなかなか難しい状態ですので、申し訳ございません」
「いいえ、無理を言いました」
そして、オスレ伯爵家への訪問は思わぬ形で、穏やかに終わった。
帰りの馬車でリアンスとスノーは解放された気持ちにもなったが、マリエル様とも会っていたことに驚いた。
「まさかまた見覚えのある人が現れるとはな、何かあるのではないかと焦ってしまったが」
「申し訳ありません、ただ驚いてしまって…」
「いや、知らなかったなら、驚いて当然だろう」
「マリー様がダリア様のお母様だったとは思いませんでして」
全く二人が繋がっていなかった。顔を見るまで、マリエルという名前を聞いてもスノーには分からなかっただろう。
「ダリアは、完全にトイズ様に似ているからな」
「マリー様は、色味は私と同じだったんです。叔母が二人が並ぶと親子みたいだと言っていて、さすがにあの場では言えませんでしたけど」
「ああ…今は口に出したくない話だな。娘は…スノーも気付いたよな?」
心構えとして、知識として、近親婚でどんな不調が現れるかということを、二人は調べているので、過敏になっている。
「耳ですよね、色眼鏡で見てしまっているだけかもしれませんが」
「それもある。私たちが言うことではないから、医師が判断するだろう」
「そうですね。マリー様のことは叔母に話が出来れば、良かったんですけど」
離縁と死去がどのような時間軸か詳しく分からないが、心を壊したオリラは、もしかしたらマリエルの葬儀にも、行っていないのかもしれない。
「難しいのか?」
「リアンス様はどこまでご存知ですか」
「おそらく全て知っている」
スノーを調べた際にリーター子爵家のことを含めて、報告書を呼んでいる。
「それなら話が早いです。時間のある時に会いには行っているのですが…前は本当に、快活で明るい人だったんです」
「仲が良かったんだな」
「叔母は私が蔑ろにされていることを、気付いていたんだと思います。だから、話したように会いに来て、遊びに行こうと連れ出してくれていたのです」
「妹君は?付いて行くと言い出しそうだが?」
「叔母は母の様に穏やかではないので、レピアは毛嫌いしていたんです」
だからこそ、オリラと過ごす時間がスノーは好きだった。
「叔母さまに会いに行って、マリー様の話をしてみます」
「反応はあるのか?」
「あっても謝るばかりですね、それでも顔を見たいので、通っているのです。申し訳ないのですが、婚約などの話はタブーなので、話すことは出来ません」
「話さなくていい」
心を壊しているのに、自分のことでなくても、連想するような話をして、フラッシュバックする可能性もある。
スノーは、次の休みにリーター子爵家を訪れていた。
「スノー様から見て、母はどんな人でしたか?」
「お優しい方でした、よく3人で喫茶店に行ったりしました」
スノーはもしかしたら、トイズはマリエルから、私の話を聞いていたことがあったのかもしれないと思った。
「私も母と行ったことがありました」
「ダリア、今度行ってみましょうよ。スノー様、お店を覚えているかしら?」
「はい、マキシムや、ロコン、後はパーデュラスにも行ったことがありました」
「まあまあ、全部行ってみましょうよ」
「そうだな」
二人は嬉しそうに、微笑んでおり、スノーも叔母のことで隠すようなことはないのだが、ホッとした。
「やはり、スノーは記憶力がいいな」
「そうですかね?でも人から思い出しているだけです」
「なるほど、そういった回路になっているのか」
リアンスは少々焦ったが、改めて感心したように、スノーを見ながら言った。
「いや、スノー様が言えば説得力がありますから、きっと友人だったのでしょう。是非、一緒にとお誘いしたいところですが、難しいですよね」
「はい、会話もなかなか難しい状態ですので、申し訳ございません」
「いいえ、無理を言いました」
そして、オスレ伯爵家への訪問は思わぬ形で、穏やかに終わった。
帰りの馬車でリアンスとスノーは解放された気持ちにもなったが、マリエル様とも会っていたことに驚いた。
「まさかまた見覚えのある人が現れるとはな、何かあるのではないかと焦ってしまったが」
「申し訳ありません、ただ驚いてしまって…」
「いや、知らなかったなら、驚いて当然だろう」
「マリー様がダリア様のお母様だったとは思いませんでして」
全く二人が繋がっていなかった。顔を見るまで、マリエルという名前を聞いてもスノーには分からなかっただろう。
「ダリアは、完全にトイズ様に似ているからな」
「マリー様は、色味は私と同じだったんです。叔母が二人が並ぶと親子みたいだと言っていて、さすがにあの場では言えませんでしたけど」
「ああ…今は口に出したくない話だな。娘は…スノーも気付いたよな?」
心構えとして、知識として、近親婚でどんな不調が現れるかということを、二人は調べているので、過敏になっている。
「耳ですよね、色眼鏡で見てしまっているだけかもしれませんが」
「それもある。私たちが言うことではないから、医師が判断するだろう」
「そうですね。マリー様のことは叔母に話が出来れば、良かったんですけど」
離縁と死去がどのような時間軸か詳しく分からないが、心を壊したオリラは、もしかしたらマリエルの葬儀にも、行っていないのかもしれない。
「難しいのか?」
「リアンス様はどこまでご存知ですか」
「おそらく全て知っている」
スノーを調べた際にリーター子爵家のことを含めて、報告書を呼んでいる。
「それなら話が早いです。時間のある時に会いには行っているのですが…前は本当に、快活で明るい人だったんです」
「仲が良かったんだな」
「叔母は私が蔑ろにされていることを、気付いていたんだと思います。だから、話したように会いに来て、遊びに行こうと連れ出してくれていたのです」
「妹君は?付いて行くと言い出しそうだが?」
「叔母は母の様に穏やかではないので、レピアは毛嫌いしていたんです」
だからこそ、オリラと過ごす時間がスノーは好きだった。
「叔母さまに会いに行って、マリー様の話をしてみます」
「反応はあるのか?」
「あっても謝るばかりですね、それでも顔を見たいので、通っているのです。申し訳ないのですが、婚約などの話はタブーなので、話すことは出来ません」
「話さなくていい」
心を壊しているのに、自分のことでなくても、連想するような話をして、フラッシュバックする可能性もある。
スノーは、次の休みにリーター子爵家を訪れていた。
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