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養子1
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「折角、収めて貰ったのだから無駄にするなよ」
「はい、承知しました」
オブレオの威圧感に、オールは怯えてしまっていた。
「スノーは、リアンス・ローザに嫁ぐために、私の養子にする。いいか?」
「え?ですが、スノーは、断って欲しいとお断りしたはずです」
「ああ、スノーもそのつもりだったが、リアンス殿が諦めなかったんだ。それで、ようやくスノーも了承した」
オールにとっては残念ながら切れた縁だと思っていたが、まさか続いていたとは思わなかった。言ってくれれば良かったのにと思ったが、断った手前、言い難いかったのかと考えていた。
「ランドマーク侯爵家から嫁ぐ方がいいだろう?息子も同意している」
「持参金は…」
「娘の話ではなく、持参金の話か?」
「いっ、いえ」
スノーの話ではなく、レピアのこともあって、思わず持参金のことを言ってしまい、オブレオにもアンリにもじっと見られてしまっている。
「出すか出さないかは、任せる」
「父上、スノーの持参金はスノーの物のはずです。レピアに使おうなど思ってませんよね?私は反対ですよ」
「そうじゃない、分かっている」
そんな話をしたかったわけではないのに、何てことを言ってしまったのだと自己嫌悪に陥った。
「私はスノーが望むなら、賛成です。スノーは大丈夫でしょうか?」
「覚悟を決めたと言っているから、大丈夫だろう」
それならば良かったと、グリーは満足そうに頷いた。
「私も賛成します。公爵家に見染められるなんて素晴らしいことじゃない」
「そうか」
ファイラは妹が格上に嫁いで辛い目に遭ったのにも関わらず、呑気に答えた。その様子に、オブレオは溜息を付きそうになった。
「分かりました、よろしくお願いします」
「ならば、手続きをして、婚約を結ぶようにする」
手こずるとは思っていなかったが、あっさりと養子の話は纏まった。
「スノーは私たちをまだ恨んでいるのでしょうか」
「恨まれる覚えがあるんだろう?」
「それは」
「スノーもいずれ分かってくれるわよ」
ファイラは相変わらずだったが、今さら何を言っても仕方ない。
「レピアはどうなりそうだ?」
「ああ…何とか頑張っていますが、勉強が苦手の様で」
「せめて卒業させないとな」
「はい…」
オブレオはおそらく敢えて黙っているアンリに問い掛けた。
「アンリから何かあるか?」
「では、一つだけ。スノーの婚約に、レピアが関わって来ないように。いくら姉でもランドマーク侯爵家の養子になった以上、問題となります」
「っはい」
「大丈夫ですわ」
養子の書類にサインを貰い、オブレオとアンリは邸を後にした。その足で、手続きを行い、スノーはスノー・レリリスから、スノー・ランドマークとなった。
そして、リアンスとスノーの婚約も無事に整い、注意も兼ねて、レピアにも伝えて置くことにした。
「レピア、スノーはランドマーク前侯爵の養子になった」
「は?追い出されたの?」
レピアは小馬鹿にしたような顔をして、くすっと笑った。
「そうじゃない、リアンス・ローザ様との婚約が決まったから、ランドマーク侯爵家から嫁ぐことになったんだ」
「は?お姉様が、リアンス様と?冗談でしょう?」
エンゲート侯爵令息を落とせると思い、失敗したが、それでも挫けなかったのは、姉には婚約者もおらず、ちまちま働いている存在があったからであった。
「勝手にリアンス様などと呼ぶんじゃない!」
「ええ?皆、呼んでいるわよ」
「それは勝手に呼んでいるだけだろう!」
「名前くらい良いじゃない。でも、お姉様とリアンス様なんて、あり得ないわよ?お姉様は婚約者なんて出来ないんだから!だから働いているのよ、恥ずかしい」
レピアは鼻の穴を膨らませて、ふんと鳴らし、さらに馬鹿にした。
「呼ぶのではないと言っているだろう!」
「はい、承知しました」
オブレオの威圧感に、オールは怯えてしまっていた。
「スノーは、リアンス・ローザに嫁ぐために、私の養子にする。いいか?」
「え?ですが、スノーは、断って欲しいとお断りしたはずです」
「ああ、スノーもそのつもりだったが、リアンス殿が諦めなかったんだ。それで、ようやくスノーも了承した」
オールにとっては残念ながら切れた縁だと思っていたが、まさか続いていたとは思わなかった。言ってくれれば良かったのにと思ったが、断った手前、言い難いかったのかと考えていた。
「ランドマーク侯爵家から嫁ぐ方がいいだろう?息子も同意している」
「持参金は…」
「娘の話ではなく、持参金の話か?」
「いっ、いえ」
スノーの話ではなく、レピアのこともあって、思わず持参金のことを言ってしまい、オブレオにもアンリにもじっと見られてしまっている。
「出すか出さないかは、任せる」
「父上、スノーの持参金はスノーの物のはずです。レピアに使おうなど思ってませんよね?私は反対ですよ」
「そうじゃない、分かっている」
そんな話をしたかったわけではないのに、何てことを言ってしまったのだと自己嫌悪に陥った。
「私はスノーが望むなら、賛成です。スノーは大丈夫でしょうか?」
「覚悟を決めたと言っているから、大丈夫だろう」
それならば良かったと、グリーは満足そうに頷いた。
「私も賛成します。公爵家に見染められるなんて素晴らしいことじゃない」
「そうか」
ファイラは妹が格上に嫁いで辛い目に遭ったのにも関わらず、呑気に答えた。その様子に、オブレオは溜息を付きそうになった。
「分かりました、よろしくお願いします」
「ならば、手続きをして、婚約を結ぶようにする」
手こずるとは思っていなかったが、あっさりと養子の話は纏まった。
「スノーは私たちをまだ恨んでいるのでしょうか」
「恨まれる覚えがあるんだろう?」
「それは」
「スノーもいずれ分かってくれるわよ」
ファイラは相変わらずだったが、今さら何を言っても仕方ない。
「レピアはどうなりそうだ?」
「ああ…何とか頑張っていますが、勉強が苦手の様で」
「せめて卒業させないとな」
「はい…」
オブレオはおそらく敢えて黙っているアンリに問い掛けた。
「アンリから何かあるか?」
「では、一つだけ。スノーの婚約に、レピアが関わって来ないように。いくら姉でもランドマーク侯爵家の養子になった以上、問題となります」
「っはい」
「大丈夫ですわ」
養子の書類にサインを貰い、オブレオとアンリは邸を後にした。その足で、手続きを行い、スノーはスノー・レリリスから、スノー・ランドマークとなった。
そして、リアンスとスノーの婚約も無事に整い、注意も兼ねて、レピアにも伝えて置くことにした。
「レピア、スノーはランドマーク前侯爵の養子になった」
「は?追い出されたの?」
レピアは小馬鹿にしたような顔をして、くすっと笑った。
「そうじゃない、リアンス・ローザ様との婚約が決まったから、ランドマーク侯爵家から嫁ぐことになったんだ」
「は?お姉様が、リアンス様と?冗談でしょう?」
エンゲート侯爵令息を落とせると思い、失敗したが、それでも挫けなかったのは、姉には婚約者もおらず、ちまちま働いている存在があったからであった。
「勝手にリアンス様などと呼ぶんじゃない!」
「ええ?皆、呼んでいるわよ」
「それは勝手に呼んでいるだけだろう!」
「名前くらい良いじゃない。でも、お姉様とリアンス様なんて、あり得ないわよ?お姉様は婚約者なんて出来ないんだから!だから働いているのよ、恥ずかしい」
レピアは鼻の穴を膨らませて、ふんと鳴らし、さらに馬鹿にした。
「呼ぶのではないと言っているだろう!」
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