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糸口
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「そうですか...てっきり、いえ、不躾なことを言って、申し訳ございませんでした」
「...染めています」
「本当ですか?失礼ですが、何色ですか?」
「…ブロンドです」
「スノー様ですか?」
その言葉にさらにスノーは大きく目を見開いた。
「…は、はい、なぜですか?」
「正確にはカーラさんの墓を訪ねる若いご令嬢で、ブロンド、薄いブルーの瞳のスノー様という名前だと伺っておりました。絶対に怯えさせるようなことをしないようにとも…お一人でなくて良かったです」
トーマは女性一人に中年男性が近付いて、怯えさせるなというのは無理だろうと思っていた。だが、ようやく現実となって、貴族令嬢なら一人で来ることはないのかと、ようやく思い至った。
「カーラさんから?」
「はい、言伝を預かっています」
「言伝、ですか?」
「アンダーソン弁護士事務所の、ダオラ弁護士を訪ねてくださいと」
「アンダーソン弁護士事務所?」
聞き返したのはアンリだった。アンダーソン弁護士事務所は、アンリの生家であるダマス公爵が代々経営をしている事務所だった。
瞬時にスノーに絶対に不利益にならない、事務所として、我がアンダーソン弁護士事務所にしたのだろうと思った。
「はい、出来れば信頼の出来る方と行っていただきたいと言われておりましたが、そこは大丈夫そうですね」
一人だったら、信頼の出来る方と向かう様に伝えて欲しいと言われていたが、これだけの人と一緒にいるのであれば、大丈夫だろうと見渡した。
「…はい」
「それだけお伝えするように、申し付かっております」
「あなたはカーラさんのお知り合い?」
「はい、トイズ・オスレ様とカーラ様に世話になった者です。今はそこの小さな家で、墓守をしながら暮らしております」
トーマが指差した先には家があり、窓から墓が良く見えるだろうと思った。
「そう、分かったわ」
アンリもアンダーソン弁護士事務所、トイズ・オスレの名前が出た以上、デタラメを言っているわけではないことは明らかであった。
「いえ、ようやくお会い出来て、私も肩の荷がおりました」
「他に誰か来たのかしら?」
「いいえ、お若いご令嬢は初めてです。ですから、慌てて飛び出して来まして、このような格好で申し訳ございません」
横にある小さな畑を耕していたのではないだろうかという風体であった。
「いえ、ありがとうございました」
「こちらこそ、お伝え出来て良かったです」
男性は頭を下げて、満足そうに去って行った。
「カーラさんは、あなたが来ると思っていたのね…」
「もっと早くに…」
「今さら言っても仕方ないわ、もしかしたら、来なかったらそれはそれでと思っていたのかもしれない。アンダーソン弁護士事務所も、私に繋がるようになっていたのでしょうね」
スノーはカーラの墓に、項垂れるしかなかった。
あの優しい表情をしたカーラは、きっとトイズの叶えられなかったことを、念のために私に託そうとしたのだと思った。
もっと早くにせめて、生きている間に訪ねていたら、彼女を知ることは容易だったはずなのに、何もしなかった。
二人は馬車に乗り、ランドマーク侯爵家に戻ることにした。アンリはただの思い付きではあったが、まさか手掛かりが見付かるとは思わず、興奮していた。
「髪色を戻します」
「アンダーソン弁護士事務所なら大丈夫よ」
「それは、分かっています」
アンリがいる以上、スノー・レリリスだと証明は出来るので、ブロンドでないからと門前払いされることはないが、髪色を戻そうと決めた。
そして、次の言葉を言うべきか悩んだが、もう逃げていても仕方ないと腹を括ったのだと、アンリに話すことにした。
「...染めています」
「本当ですか?失礼ですが、何色ですか?」
「…ブロンドです」
「スノー様ですか?」
その言葉にさらにスノーは大きく目を見開いた。
「…は、はい、なぜですか?」
「正確にはカーラさんの墓を訪ねる若いご令嬢で、ブロンド、薄いブルーの瞳のスノー様という名前だと伺っておりました。絶対に怯えさせるようなことをしないようにとも…お一人でなくて良かったです」
トーマは女性一人に中年男性が近付いて、怯えさせるなというのは無理だろうと思っていた。だが、ようやく現実となって、貴族令嬢なら一人で来ることはないのかと、ようやく思い至った。
「カーラさんから?」
「はい、言伝を預かっています」
「言伝、ですか?」
「アンダーソン弁護士事務所の、ダオラ弁護士を訪ねてくださいと」
「アンダーソン弁護士事務所?」
聞き返したのはアンリだった。アンダーソン弁護士事務所は、アンリの生家であるダマス公爵が代々経営をしている事務所だった。
瞬時にスノーに絶対に不利益にならない、事務所として、我がアンダーソン弁護士事務所にしたのだろうと思った。
「はい、出来れば信頼の出来る方と行っていただきたいと言われておりましたが、そこは大丈夫そうですね」
一人だったら、信頼の出来る方と向かう様に伝えて欲しいと言われていたが、これだけの人と一緒にいるのであれば、大丈夫だろうと見渡した。
「…はい」
「それだけお伝えするように、申し付かっております」
「あなたはカーラさんのお知り合い?」
「はい、トイズ・オスレ様とカーラ様に世話になった者です。今はそこの小さな家で、墓守をしながら暮らしております」
トーマが指差した先には家があり、窓から墓が良く見えるだろうと思った。
「そう、分かったわ」
アンリもアンダーソン弁護士事務所、トイズ・オスレの名前が出た以上、デタラメを言っているわけではないことは明らかであった。
「いえ、ようやくお会い出来て、私も肩の荷がおりました」
「他に誰か来たのかしら?」
「いいえ、お若いご令嬢は初めてです。ですから、慌てて飛び出して来まして、このような格好で申し訳ございません」
横にある小さな畑を耕していたのではないだろうかという風体であった。
「いえ、ありがとうございました」
「こちらこそ、お伝え出来て良かったです」
男性は頭を下げて、満足そうに去って行った。
「カーラさんは、あなたが来ると思っていたのね…」
「もっと早くに…」
「今さら言っても仕方ないわ、もしかしたら、来なかったらそれはそれでと思っていたのかもしれない。アンダーソン弁護士事務所も、私に繋がるようになっていたのでしょうね」
スノーはカーラの墓に、項垂れるしかなかった。
あの優しい表情をしたカーラは、きっとトイズの叶えられなかったことを、念のために私に託そうとしたのだと思った。
もっと早くにせめて、生きている間に訪ねていたら、彼女を知ることは容易だったはずなのに、何もしなかった。
二人は馬車に乗り、ランドマーク侯爵家に戻ることにした。アンリはただの思い付きではあったが、まさか手掛かりが見付かるとは思わず、興奮していた。
「髪色を戻します」
「アンダーソン弁護士事務所なら大丈夫よ」
「それは、分かっています」
アンリがいる以上、スノー・レリリスだと証明は出来るので、ブロンドでないからと門前払いされることはないが、髪色を戻そうと決めた。
そして、次の言葉を言うべきか悩んだが、もう逃げていても仕方ないと腹を括ったのだと、アンリに話すことにした。
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