【完結】試される愛の果て

疑問

「どういうことなのかしら…」
「媚薬のことで、リリー夫人に話を聞いてみるか」
「でも、夫に使うつもりだったが、使うことは出来なかったと言われたらお終いですわよ。リジーナのことは今は信用されないでしょうからね」

　脅していたことは証明が出来たとしても、使ったことはリリーが認めなければ、相手が証言をして貰わないと証拠はない。

「そうだな…侯爵に聞いてところで解決しないだろうな」
「メリーアンに…とは、今は言えませんわよね」
「妊娠しているんだろう…スノーの言った通りだな」

　妊婦を相手に問い掛けていい問題ではない。万が一兄と妹だったとしても、命を奪うようなことはしてはならないと二人も考えていた。

「あの子が一緒に受け止めて欲しいと言った理由がよく分かりますわ、これを一人で抱えていたら、おかしくなってしまうわ」
「ああ…一人で抱え込まなくて良かったと思っている」
「ええ、本当に」

　昔のスノーなら一人で抱え込んでいただろう、信用して貰ったことに二人は嬉しく感じていた。

「リリー夫人はどういうつもりなのかが、どうしても分からない」
「ええ…誰かに聞くにしても、親しい人も思いつかないわ」
「現オスレ伯爵は…聞いていたら、結婚を認めることはないだろうからな。トイズと一緒にいた、女性が見付かるといいのだが…」

　トイズと一緒にいたという女性を探してもらうように頼んで、修道院に向かっていた。彼女が見付かれば、トイズに何があったか分かるだろう。

　当時、既に年だったことを考えると難しいかもしれないとも思っていた。

　ランドマーク侯爵家に戻ると、女性は平民のカーラという名前だった。保護した際に名前が残されており、話せないという特徴からすぐに見付かったという。

　だが、５年前に亡くなっており、身寄りもなかったようで、墓の場所くらいしか分からなかった。

　アンリはスノーを連れてトイズとカーラの墓参りに行ってみようと思い立ち、オブレオは別の視点から何かないか、もう一度、調べてみると王宮の図書館へ向かった。

　スノーが休みの日に、アンリとトイズとカラーの墓にやって来た。二人の墓地は同じ場所にあり、先にトイズの墓の前に立った。

「何度も、運命と言っていました…」
「運命？」
「ええ、運命ならばと」
「私の子どもではない…と」
「もしくは、運命に逆らうようなことにはならないと」
「どちらとも言えるわね」

　スノーの推測と知る限りのトイズの性格を考えると、トイズが結婚したリリーと不貞を犯すとは思えないことから、リリーに媚薬を飲まされて関係を持った。

　リリーがもしかしたら、記憶がないにしても、仄めかしたのかもしれない。夫にバレたらどうなるかと言えば、従うしかなかった可能性もある。

　だが、自分の命が永くないことで、メリーアンとの親子鑑定をしようとした。でもスノーと間違えたことで、運命だったのだと諦めることにした。

「はい、話したことは全てを覚えてはいないと思うのです」
「無理もないわ」

　そして、次はカーラの墓の前に立った。

「生きている内に会っていれば…答えが貰えたのでしょうね」
「そうね…」

　スノーは関わりたくないと逃げていた自分に後悔をしていた。あの時、トイズのことを祖父母にだけでも話していれば、事実がどうであれ、リリー夫人のことは暴くことが出来たと思った。

「何か御用ですか」

　アンリの護衛が中年の男性と、何やら話をしていた。

「カーラさんのお知り合いですか？と申しております」
「あなたは？」
「私は墓の管理をしているトーマと言います。カーラさんの墓を訪ねる若い女性がいたら、声を掛けて欲しいと頼まれておりまして、声を掛けさせていただきました」
「え？」
「お嬢様の髪は染めたりしていますか？」

　スノーはその言葉に、大きく目を見開いた。

「…いっ、いいえ」