上 下
37 / 154

推測2

しおりを挟む
「力のなかった元側妃を脅して、何が目的だったのかが気になっていたのです。毒で奥様を殺したのかとも考えました…」
「夫人は毒などではなく、怪我が原因だと聞いている。万が一、そうだったら白状したのではないか?」

 さすがに殺人に加担したとすれば、道連れにするのではないか。

「ええ、使った相手までは知らないとしても、元婚約者の奥様が亡くなったというのは、疑われることになるでしょう。だから興奮剤ではないかと思ったのです」
「元側妃も毒ではない、誰に使ったまでは知らないから、何も言わなかった。言えなかった。もう諦めたようであったからでもあるが…」

 オブレオは罪に問えるかは分からないが、失うもののないリジーナに、リリー夫人から脅されていたか証言を取ることは可能だろうと考えていた。

「そして、私を置き去りにしたのは、トイズ様の指示だったのかもしれません…」
「なっ?」
「私も信じたくありませんが、親子鑑定をするために…」
「まさか」
「もしかしたら、あの日、メリーアン夫人も同じ水色のドレスを着ていたのかもしれません。そして、私の髪色はトイズ様と同じブロンドです」
「勘違いしたと言うのか…」
「リリー夫人がいたということは、メリーアン夫人もいた可能性も高いですよね?」

 『私と同じではない』と言った言葉に、スノーも非現実となったあの日のドレスはよく覚えている。

「出席者を調べることは可能よ。でも、兄妹だったら、どうしてリリー夫人が結婚を許したの?反対するべきでしょう?それとも侯爵が推し進めたの?」
「違うのです、始めから応援していたそうです」
「おかしいじゃない…兄妹かもしれないのよ」

 必死で結婚を避けるべきではないだろうか、いくら自身が望んだとしても、不貞も暴かれることになるかもしれないのに。

「だから思ったのです。壊れている、狂っているのではないか。特にトイズ様が亡くなってからは…歪な世界で生きていたのではないか」
「そんな…」
「ダリア様の方が早く産まれているということは、奥様の妊娠が分かって、妊娠をしたのではないか。評判が悪いとも聞きました」
「ええ、侯爵夫人としては、失格と言っていいでしょうね」
「そういったことから、現実から逃避していったのではないでしょうか」
「そうね…」

 爵位が絶対であるように、はみ出した者には酷く厳しい。心を壊す者も多い。

「でも兄妹かもしれないのに、どうしたいって言うの…」
「賭けだとでも思っているのかもしれませんし、他に思惑があるのかもしれません。御本人に聞くか、元側妃から答えが出るかもしれません」
「そうだな…」

 貴族でも托卵は大罪となるが、不貞行為は本人が処罰されれば済むが、産まれている子どもはどうなるのか。托卵ではなければいいが、そうでなかったら、ルミアーノがいい例である。

「私には答えは出ません…メリーアン夫人の親子鑑定をしたとして、もしトイズ様の子どもだったら…」
「そうだな」
「酷よね…」
「誰も知らない方がいい事実となります」

 メリーアンも、ダリアも、そして生まれて来る子どもは健康状態に問題はなくとも、この国では神に逆らった子とされる。

「だが、托卵を見過ごすことは…」
「でも既に嫁いでいます」
「そうだな…」

 メリーアンは既にオスレ伯爵家の人間となっている。

「スノーの参加した茶会は、フリュエル公爵家よ」
「ルーナ様の…」
「裏取りが出来たら、リアンス様に相談してみたらどう?スノーは考えなかった?」
「それは…」

 全てを打ち明けて、一緒に考えて貰うことを考えた瞬間もあった。

「まあいいわ、先にリジーナ元側妃に話をしてからにしましょう」
「ああ、会いに行って来よう」
「私も一緒に参ります」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!

高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。 7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。 だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。 成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。 そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る 【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】

勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる

千環
恋愛
 第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。  なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を庇おうとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す

おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」 鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。 え?悲しくないのかですって? そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー ◇よくある婚約破棄 ◇元サヤはないです ◇タグは増えたりします ◇薬物などの危険物が少し登場します

元使用人の公爵様は、不遇の伯爵令嬢を愛してやまない。

碧野葉菜
恋愛
フランチェスカ家の伯爵令嬢、アンジェリカは、両親と妹にいない者として扱われ、地下室の部屋で一人寂しく暮らしていた。 そんな彼女の孤独を癒してくれたのは、使用人のクラウスだけ。 彼がいなくなってからというもの、アンジェリカは生きる気力すら失っていた。 そんなある日、フランチェスカ家が破綻し、借金を返すため、アンジェリカは娼館に売られそうになる。 しかし、突然現れたブリオット公爵家からの使者に、縁談を持ちかけられる。 戸惑いながらブリオット家に連れられたアンジェリカ、そこで再会したのはなんと、幼い頃離れ離れになったクラウスだった――。 8年の時を経て、立派な紳士に成長した彼は、アンジェリカを妻にすると強引に迫ってきて――!? 執着系年下美形公爵×不遇の無自覚美人令嬢の、西洋貴族溺愛ストーリー!

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷 ※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

処理中です...