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推測1
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「何だ?」
「ええ、聞きましょう」
「まず事実は置き去りにされた私を助けてくれたのは、トイズ・オスレ様でした」
「は?」
「え?どういうことなの?」
二人には話そうかと思ったが、トイズ様の爵位も分からなかったので、迷惑を掛けたくないと思い、言わなかった。
「おそらく療養中だったトイズ様の邸で、保護して貰いました。ですが、私は置き去りではなく、捨てられたのではないか、そう思っていました。それを話したら、ここにいたらいいと、その間にトイズ様は動いてくれたのではないかと思います」
「それで、私に連絡があったのか…」
オブレオはレリリス伯爵家より先に、自分に連絡があったことに、騎士団は機転が利くと思っていたが、そうではなかった。
「お互いに名乗り合わず、名前も知りませんでした。そして、ご自分と私を重ねたからこそ、心配、いえ、両親は心配などされていなかったのですが、置いてくださいました。そこで話し相手となり、リリー夫人だとは知らずに話を聞きました」
オブレオとアンリは頷きながら、聞いてくれている。
「リリー夫人はトイズ様のことを想ったまま結婚させられ、当初は貴族令嬢らしく、次期侯爵夫人になろうとした。でも上手くはいかなかった。そうなると、思い出すのはトイズ様です」
「奪ったわけではないと思うのだけど?」
「はい、トイズ様からも解消してから、お兄様が亡くなったと聞きました。ですが、リリー夫人は復縁を迫っていたそうです」
「まあ…だからスノーは二人を気にしていたのね」
ようやくスノーの質問の真意に気付いたアンリ夫人だった。
「はい…すみません。私は顔は分かっても、内情を知らないので」
「社交に出ないからでしょう」
「はい、あの二人の不穏な会話に、置き去りにされたことも重なって、子ども心に二度と関わりたくないと思ってしまったのです」
「そうだったのね」
スノーは聡い子でもあったが、8歳ともなれば恐ろしさは理解が出来てしまったのだろう。関わらさせようとしたわけではないが、私はいいですと言う子だった。
「トーラス・ユーフレット様は侯爵に似てらっしゃるそうですね」
トーラスはメリーアンの兄であり、次期ユーフレット侯爵で、リリー夫人が産んだ第一子である。
「ああ」
「ですが、メリーアン夫人は似ていない」
「まさか、そんなことは、元側妃のことがあったとはいえ、あり得ないだろう」
オブレオはスノーが何を言いたいのかが分かって、口を挟んだ。
「私も安易だと思いましたが、お祖父様の話を聞いて、トイズ様が親子鑑定をしようとしていた…ダリア様でもなく、トーラス様ではないとすれば…」
「メリーアン夫人だと言うの?待って、結婚相手はオスレ前伯爵の息子なのよ」
万が一、二人が兄妹だったらなんて考えたくはない。
トイズ様が存命の頃は会っていなかったから、二人が結ばれるからなどと考えて、親子鑑定をしたいと思ったわけではない。
単に自分の子どもなのかと考えただけだろう。
「そうです…子どもだって生まれるところです。でもユーフレット侯爵も、身に覚えのない妊娠ではなかったということでしょう?」
「分からないということか…まるで元側妃だな」
リジーナは陛下の子どもだと信じていた、托卵しようと思ったわけではない、だが陛下の子ではないとしたら、アディス・キーサンの子どもだとあっさり白状した。
アディスが既に亡くなっていることも知っていたそうだ。
「はい、トイズ様も不貞を行うような方には見えませんでした。もしかしたら、元側妃の商会から興奮剤を脅して受け取り、トイズ様に使っていたとしたら…」
「まさか…」
「記憶がなくなってしまう物があると聞きました」
「ああ…」
「関係を持たされたと言うの?」
アンリは同じ女性として、そんなことをする人間がいるのかと驚くしかなかった。
「ええ、聞きましょう」
「まず事実は置き去りにされた私を助けてくれたのは、トイズ・オスレ様でした」
「は?」
「え?どういうことなの?」
二人には話そうかと思ったが、トイズ様の爵位も分からなかったので、迷惑を掛けたくないと思い、言わなかった。
「おそらく療養中だったトイズ様の邸で、保護して貰いました。ですが、私は置き去りではなく、捨てられたのではないか、そう思っていました。それを話したら、ここにいたらいいと、その間にトイズ様は動いてくれたのではないかと思います」
「それで、私に連絡があったのか…」
オブレオはレリリス伯爵家より先に、自分に連絡があったことに、騎士団は機転が利くと思っていたが、そうではなかった。
「お互いに名乗り合わず、名前も知りませんでした。そして、ご自分と私を重ねたからこそ、心配、いえ、両親は心配などされていなかったのですが、置いてくださいました。そこで話し相手となり、リリー夫人だとは知らずに話を聞きました」
オブレオとアンリは頷きながら、聞いてくれている。
「リリー夫人はトイズ様のことを想ったまま結婚させられ、当初は貴族令嬢らしく、次期侯爵夫人になろうとした。でも上手くはいかなかった。そうなると、思い出すのはトイズ様です」
「奪ったわけではないと思うのだけど?」
「はい、トイズ様からも解消してから、お兄様が亡くなったと聞きました。ですが、リリー夫人は復縁を迫っていたそうです」
「まあ…だからスノーは二人を気にしていたのね」
ようやくスノーの質問の真意に気付いたアンリ夫人だった。
「はい…すみません。私は顔は分かっても、内情を知らないので」
「社交に出ないからでしょう」
「はい、あの二人の不穏な会話に、置き去りにされたことも重なって、子ども心に二度と関わりたくないと思ってしまったのです」
「そうだったのね」
スノーは聡い子でもあったが、8歳ともなれば恐ろしさは理解が出来てしまったのだろう。関わらさせようとしたわけではないが、私はいいですと言う子だった。
「トーラス・ユーフレット様は侯爵に似てらっしゃるそうですね」
トーラスはメリーアンの兄であり、次期ユーフレット侯爵で、リリー夫人が産んだ第一子である。
「ああ」
「ですが、メリーアン夫人は似ていない」
「まさか、そんなことは、元側妃のことがあったとはいえ、あり得ないだろう」
オブレオはスノーが何を言いたいのかが分かって、口を挟んだ。
「私も安易だと思いましたが、お祖父様の話を聞いて、トイズ様が親子鑑定をしようとしていた…ダリア様でもなく、トーラス様ではないとすれば…」
「メリーアン夫人だと言うの?待って、結婚相手はオスレ前伯爵の息子なのよ」
万が一、二人が兄妹だったらなんて考えたくはない。
トイズ様が存命の頃は会っていなかったから、二人が結ばれるからなどと考えて、親子鑑定をしたいと思ったわけではない。
単に自分の子どもなのかと考えただけだろう。
「そうです…子どもだって生まれるところです。でもユーフレット侯爵も、身に覚えのない妊娠ではなかったということでしょう?」
「分からないということか…まるで元側妃だな」
リジーナは陛下の子どもだと信じていた、托卵しようと思ったわけではない、だが陛下の子ではないとしたら、アディス・キーサンの子どもだとあっさり白状した。
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「はい、トイズ様も不貞を行うような方には見えませんでした。もしかしたら、元側妃の商会から興奮剤を脅して受け取り、トイズ様に使っていたとしたら…」
「まさか…」
「記憶がなくなってしまう物があると聞きました」
「ああ…」
「関係を持たされたと言うの?」
アンリは同じ女性として、そんなことをする人間がいるのかと驚くしかなかった。
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