【完結】試される愛の果て

意図

　リアンスに会った際の話題もやはり、リジーナ元側妃とルミアーノ元第一王女についてであった。

「驚いただろう？」
「はい、ご存知だったのですか」
「動きがあるのは、父から聞かされていた。それよりも、大きく動いてらしたのは君のお祖父様だよ？」
「え？そうだったのですか、だから隣国に」

　オブレオ・ランドマーク元侯爵。おそらく当主でない元侯爵ならば、動いても、目立たないということだったのだろう。

「パスライン王国では、親子鑑定をすることが出来るらしくてね」
「親子鑑定…」
「ああ、そんなに流通はしていないそうだが」
「それで調べたということですか」
「王子と王女は全員を調べたそうだ」
「陛下はショックだったのではないですか」

　スノーは詳しくないので、王妃とは政略結婚、側妃は恋仲になって結婚したと、聞いたくらいの情報しか持っていなかった。

「いや、怒ってはいらしたそうだが…今となっては王妃陛下との関係の方が良好なくらいだった」
「そうだったのですか…」
「側妃が寵愛を受けているというのは、事実ではない」
「だから疑われたのでしょうか」
「それは分からない」
「ルミアーノ元王女は、側妃に似てらしたのですよね？」
「よく似ていた。だが、親は感じることがあるのかもしれないな」

　子どもを産んだこともない、スノーには分からない感覚であった。

「親と言えば、メリーアン夫人は順調ですか」
「ああ、ダリアから順調だと聞いている」
「それは良かったです」

　リリー夫人の情報を得られないかと、メリーアンの名前を出したが、辿り着くには無理があるかと、スノーは悩んでいた。

「お二人はいつから知り合いだったのですか」
「確か…前オスレ伯爵が亡くなってからだと聞いている。ダリアは君が分からないと言っていた写真の男性、トイズ・オスレが父親なんだ。御母上も亡くなって、その後に御父上も亡くなってね、メリーアン夫人がダリアを支えていたらしい」

　思いがけず、トイズの名前が出て驚いたが、リリー夫人は結婚後もトイズを愛していたなら、自分の代わりに二人を結婚させたいと思ったのかもしれない。

　だが、まだ脅して何を手にしようとしていたのかが分からない。

「ユーフレット侯爵夫人と、リジーナ元側妃は仲が良かったのでしょうか？」
「え？」

　思わず口から出てしまったが、言ってしまった以上、聞くしかない。

「一緒にいるところを見たことがあったので」
「いや、聞いたことはないが…あ！でも、リジーナ元側妃の実家は、もう没落したが、商会をやっていてね。その繋がりがあったのかもしれないな。何でも他国の品が豊富だったとかで、客だったのかもしれない」
「商会…」

　スノーは社交を行っていないので、そういった情報に酷く疎い。もしかしたら、何か手に入れたい物があって、弱みを握っていたのかもしれないと思った。

「ああ、何か気になることがあるのかい？」
「いえ、例えば、人に知られたくない、手に入れたい物と言えば何でしょうか？」
「うーん、毒とか、武器とか」

　誰かを殺そうとしていたのか…それならば、利用するに値するかもしれない。

　まさか、トイズの妻は病死となっていたが、リリー夫人が何かしていたら？いや、元婚約者を妻に会わせるようなことはしないか。想像すれば、するほど、スノーは何もかもが疑わしく感じてしまっていた。

　全てを失ったリジーナ元側妃は暴露してもいいはずだが、そんな話は聞かない。

「惚れ薬とかかな？」
「惚れ薬？そんな物がこの世にあるのですか？」

　親子鑑定が出来るくらいだから、スノーが知らないだけで、惚れ薬もこの世に存在するのかもしれないと思った。