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「好きだったのですか?」
「うーん、好きだったと言った方が正しいかな。君は聡明な子だね、こんな話を聞かせるなんて…私は駄目な大人だよ」
トイズは困った表情をしながら、笑った。
「でも、話し相手ではありませんでしたか?」
「そうだったね。解消になった時ね、酷く取り乱して、可哀想だった。でもね、その後に彼女はあっさりと他の人と結婚したんだ」
「え?」
「復縁を迫っておきながら、そんなものだったんだなとも思ったけど、これで良かったと思ったんだ。もし復縁していても、両親と上手くいくとは思えなかったからね」
「そうですね…」
両親に嫌われている状態で、嫁ぐのは相当辛いことになるだろう。
だったら他にいい相手が見付かって、あっさり結婚したのだろう。それよりも、トイズが責任を感じることはないのにと思っていた。
「格差があったのですか?」
「あったかな」
トイズの爵位も分かっていなかったが、この言葉で格下の令嬢だったのだろうと、だからこそ復縁を迫ったのだと筋が通ったのだ。
「格差がある場合は遠慮したいと思わないのですか?」
スノーは既に格差結婚に反対の考えを持っていた。
「君はそう思うかい?」
「そう思います。苦労しても、努力して、どうにかなることならいいと思いますが、生まれやそれこど親を変えることも出来ない」
「誰かに言われたのかい?」
トイズはあまりに大人のようなことを言うので、驚いてしまった。
「伯母です。見初められて、格上の方に嫁ぎましたが、心を壊しました」
母の妹である。侯爵家の嫡男と恋仲になり、結婚したが、二年後には心を壊して、離縁した。今も子爵家にいるが、感情がなくなり、外には出られないという。
子爵家では禁句になってて、何があったかまでは知らないが、明るい人だったのに、今は陰の部分で生きている。
「そういう場合もあるね、いや、よくあることだと思う。嫁ぎ先で上手くいかなくて、狂ってしまう人もいる」
「はい…」
「未来ある君に聞かせることではないね、きっと君は大きくなった頃には、もっと柔軟になっていると思いたいね」
「私は見合った相手が良いです」
否定され続けたスノーには、いつもなら否定などはしないが、トイズのような受け入れてくれる大人は初めてだったために、素直に話した。
「それはいつの時代もそうかもしれないね。一時の感情よりも、家を含めた相性の方が大事かもしれない。でもそうではない人もいるし…変わってしまう人もいる」
「変わる?」
「ああ、何を考えているのか分からない人も、この世にはいるんだ。運命など信じていなかったけどね、きちんとした運命であって欲しいと願っている…」
「え?」
「いいや、今のは忘れてくれ。人は怖いってことかな?これも君に聞かせることではないね、参ったな」
その後、歩き回ったことが災いして、スノーは話しながら、眠ってしまったのだ。そして、一度目が覚めるとトイズが話をしている声が聞こえた。
「これが運命だったんだろうな…あの子と話していると、そんな気がした」
「…」
「もういいんだ、きっと運命は正しい方へ導いてくれるはずだ」
「…」
「間違いは起こっていない、起こるはずがない」
そして、次の日もトイズと穏やかに話をしながら過ごした。その翌日、騎士団に行くことになった。
後で気付いたことだが、トイズはスノーが誰か分かっており、状況を把握しながら、私を家に帰すことにしたのだと思う。
「私のことは忘れて、君の思う人生を歩んで欲しい」
「でも」
「忘れるんだ、いいね?でないと、私は本当に誘拐犯になってしまう」
「分かりました」
2日間も匿っていたと分かったら、トイズが罰されるかもしれないと思い、承諾するしかなかった。
「うーん、好きだったと言った方が正しいかな。君は聡明な子だね、こんな話を聞かせるなんて…私は駄目な大人だよ」
トイズは困った表情をしながら、笑った。
「でも、話し相手ではありませんでしたか?」
「そうだったね。解消になった時ね、酷く取り乱して、可哀想だった。でもね、その後に彼女はあっさりと他の人と結婚したんだ」
「え?」
「復縁を迫っておきながら、そんなものだったんだなとも思ったけど、これで良かったと思ったんだ。もし復縁していても、両親と上手くいくとは思えなかったからね」
「そうですね…」
両親に嫌われている状態で、嫁ぐのは相当辛いことになるだろう。
だったら他にいい相手が見付かって、あっさり結婚したのだろう。それよりも、トイズが責任を感じることはないのにと思っていた。
「格差があったのですか?」
「あったかな」
トイズの爵位も分かっていなかったが、この言葉で格下の令嬢だったのだろうと、だからこそ復縁を迫ったのだと筋が通ったのだ。
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「君はそう思うかい?」
「そう思います。苦労しても、努力して、どうにかなることならいいと思いますが、生まれやそれこど親を変えることも出来ない」
「誰かに言われたのかい?」
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「伯母です。見初められて、格上の方に嫁ぎましたが、心を壊しました」
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「そういう場合もあるね、いや、よくあることだと思う。嫁ぎ先で上手くいかなくて、狂ってしまう人もいる」
「はい…」
「未来ある君に聞かせることではないね、きっと君は大きくなった頃には、もっと柔軟になっていると思いたいね」
「私は見合った相手が良いです」
否定され続けたスノーには、いつもなら否定などはしないが、トイズのような受け入れてくれる大人は初めてだったために、素直に話した。
「それはいつの時代もそうかもしれないね。一時の感情よりも、家を含めた相性の方が大事かもしれない。でもそうではない人もいるし…変わってしまう人もいる」
「変わる?」
「ああ、何を考えているのか分からない人も、この世にはいるんだ。運命など信じていなかったけどね、きちんとした運命であって欲しいと願っている…」
「え?」
「いいや、今のは忘れてくれ。人は怖いってことかな?これも君に聞かせることではないね、参ったな」
その後、歩き回ったことが災いして、スノーは話しながら、眠ってしまったのだ。そして、一度目が覚めるとトイズが話をしている声が聞こえた。
「これが運命だったんだろうな…あの子と話していると、そんな気がした」
「…」
「もういいんだ、きっと運命は正しい方へ導いてくれるはずだ」
「…」
「間違いは起こっていない、起こるはずがない」
そして、次の日もトイズと穏やかに話をしながら過ごした。その翌日、騎士団に行くことになった。
後で気付いたことだが、トイズはスノーが誰か分かっており、状況を把握しながら、私を家に帰すことにしたのだと思う。
「私のことは忘れて、君の思う人生を歩んで欲しい」
「でも」
「忘れるんだ、いいね?でないと、私は本当に誘拐犯になってしまう」
「分かりました」
2日間も匿っていたと分かったら、トイズが罰されるかもしれないと思い、承諾するしかなかった。
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