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醜態

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「あ、静!今日も来てくれたの?」

 部屋に入ってきた静に真緒は抱きついた。
 慣れた手つきで静が真緒の首輪を外す。

 真緒は静と気が合うようで、もうすっかり打ち解けていた。

 不安な状況で自分を助けてくれた静に依存してるところもあるのかもしれない。


 そんな二人の関係を颯凛も知っていて、

「最近静と仲良くしてるらしいじゃん」

 と、聞いてきたりもした。

「だって、静は優しいもん」
「はぁ?じゃあ何。俺は優しく無いってこと?」
「静と比べたらねー、そもそも優しい人は見知らぬ男の子監禁しないし」
「一般人の基準でマフィアを測るな」

 正論すぎて何も言えなかったが、それにしたって颯凛より静のほうが優しいのは紛れもない事実だ。

「ていうか、俺より静の方が変態だと思うけど…」
「え、なに?」
「いや、なんでも」

 それより、今日もちゃんとお尻の準備した?
 にやにやと颯凛がきいてきたので、真緒は真顔で

「下品な言い方しないで」

 と言って颯凛の鼻を摘んだ。

「お前、ほんとに生意気……」

 そういいつつも、颯凛は真緒の生意気さを楽しんでるらしく、その日のセックスは酷いことをされることなく終わったのだった。


(いや待って…セックスそのものが酷いこととしてカウントされてない僕やばくない…?)

 慣れとは怖いものだった。

 ともかく、静と真緒は順調に打ち解けていた。

 もとから真緒は甘えん坊な性格だった。
 お金持ちの一人息子だったので両親は真緒を猫可愛がりしていたし、真緒は美しい容姿をしていたので誰からも褒められて優しくされた。

 そのせいで真緒は警戒心もあまりないし、甘え上手でもあった。

「静、昨日は何してたの?」
「昨日…?」
「昨日は颯凛も静も来なかったから」
「あぁ、昨日は…」

 二人はそんな取り止めのないことを話したり、時には音楽のことを話すこともあった。

 少し前、颯凛におねだりした結果、インターネットに接続できない音楽プレイヤーを買ってくれた。

 音楽は静が頼めば入れてくれるので、自然と音楽の話になって二人とも似たような音楽が好きだとわかった。

 でも、そうして話していると、ときどき目があって変に沈黙が走る時があった。

 なんで気まずくなるのか二人ともうすうす気づいていたけど、口には出さなかった。



 二人の関係に名前をつけてしまうのにはまだ早かった。
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