13 / 154
存在
しおりを挟む
「嫌いでもないが、好きになりたくはない存在ではありませんか」
「令息は聡いと聞いておりましたが、心も読めるのですか?」
アンリ夫人は警戒を解き、穏やか口調で言った。
「当たりでしたか?」
「概ねそうですわね…心の内を話してもいい気がしますわね。これでも8年、スノーを見て来たのですから。血の繋がりがないのは分かっておいでよね?」
「はい」
「私は公爵令嬢として育ちました。ですから伯爵家の令嬢だと下に見ていたこともあり、きちんと言って聞かせました」
ランドマーク侯爵家に預けられた際、まだ嫡男夫妻の子どもが幼かったこともあり、前侯爵夫妻が面倒を見ることになった。
「スノーはきちんと理解して、弁えてという言葉は悪く聞こえるかもしれませんが、まさに私が思った以上に、弁えて生活をしていました」
我儘を言ったり、帰りたいと言ったり、不満を言ったりすることも一切なかった。
「勿論、教育は受けさせようと思っていたので、教師を呼び、礼儀作法やマナーは私が教えましたが、確かに覚えのいい子でした」
もしかしたら侯爵家に嫁ぐこともあるかもしれないとは言ったが、学ぶ姿勢がきちんとあったから、アンリが学ばせてやりたかったから、そのように教育をした。
勉強が無駄になることはない、そう思ったからだ。
「私がスノー嬢を初めて見たのは、ランドマーク侯爵家だったんです。あなたに何か届け物をして、すぐに去って行きましたが」
「そうでしたか…敢えて参加させなかったと思っているのでしょう?」
「違うのですか?」
「その通りです。外部の者が来るような集まりには参加させませんでした」
「ランドマーク侯爵家の人間ではないから、彼女も望まなかったからですか?ですが、今後のためにも参加させても良かったのではありませんか」
弁えていることは分かっているのだから、参加させることも出来ただろう。
「そうかもしれませんが…」
「スノー嬢は社交が苦手だと言っています。デビュタントも緊張して、すぐに帰ったと言っていました」
「そうですね」
そう言って、アンリ夫人は悲しい顔をした。その姿にリアンスは後悔しているのだと思った。
「なぜ預けられたのは、ランドマーク侯爵家だったのでしょうか?答えては貰えませんか?」
「スノーからは?」
「ランドマーク侯爵家が最適だったと」
「そうですか、その理由も確かにあります。私も詳しい経緯は話すわけにはいきませんが、レリリス伯爵家に問題があったということは伝えておきましょう」
「やはり…」
「想定内ですわよね?」
生家から別の家に預けられるとなれば、スノーに問題があるか、他の家族に問題があるかしかない。
「皆が知っているわけではないようですが、兄と妹に手が掛かるからというのが理由だと聞いていたようです」
「間違いではありません。ただ兄は熱をよく出していたようですが、重い病気ではありませんでしたし、妹と言っても二つしか変わらないのに、手が掛かるも何もないでしょう?スノーだって手が掛かるはずです」
「まさか放置されていたのですか?」
アンリ夫人は表情を変えず、何も答えなかった。答える気はないということだろう。アンリ夫人は血の繋がりがなくても、前侯爵には繋がりがあるのだから。
「妹君の方が余程、問題ですよ?」
「それは、どういうことでしょうか?」
「成績も極めて悪く、天真爛漫と言えば聞こえはいいですが、思う通り振舞い過ぎだと言われているそうです」
名前を使わせて貰っているルーナからスノーの妹・レピアが酷い、何も知らないために、同じ家で育ったのにどうしてあんなに違うのかと言っていた。
「はあ…そうですか、スノーが戻る際に久し振りに会いましたが…予感はしておりましたわ、身に付いてはいないのだろうと」
侯爵家には劣るだろうが、伯爵家でもそれなりの教育は必要だったはずだ。
「令息は聡いと聞いておりましたが、心も読めるのですか?」
アンリ夫人は警戒を解き、穏やか口調で言った。
「当たりでしたか?」
「概ねそうですわね…心の内を話してもいい気がしますわね。これでも8年、スノーを見て来たのですから。血の繋がりがないのは分かっておいでよね?」
「はい」
「私は公爵令嬢として育ちました。ですから伯爵家の令嬢だと下に見ていたこともあり、きちんと言って聞かせました」
ランドマーク侯爵家に預けられた際、まだ嫡男夫妻の子どもが幼かったこともあり、前侯爵夫妻が面倒を見ることになった。
「スノーはきちんと理解して、弁えてという言葉は悪く聞こえるかもしれませんが、まさに私が思った以上に、弁えて生活をしていました」
我儘を言ったり、帰りたいと言ったり、不満を言ったりすることも一切なかった。
「勿論、教育は受けさせようと思っていたので、教師を呼び、礼儀作法やマナーは私が教えましたが、確かに覚えのいい子でした」
もしかしたら侯爵家に嫁ぐこともあるかもしれないとは言ったが、学ぶ姿勢がきちんとあったから、アンリが学ばせてやりたかったから、そのように教育をした。
勉強が無駄になることはない、そう思ったからだ。
「私がスノー嬢を初めて見たのは、ランドマーク侯爵家だったんです。あなたに何か届け物をして、すぐに去って行きましたが」
「そうでしたか…敢えて参加させなかったと思っているのでしょう?」
「違うのですか?」
「その通りです。外部の者が来るような集まりには参加させませんでした」
「ランドマーク侯爵家の人間ではないから、彼女も望まなかったからですか?ですが、今後のためにも参加させても良かったのではありませんか」
弁えていることは分かっているのだから、参加させることも出来ただろう。
「そうかもしれませんが…」
「スノー嬢は社交が苦手だと言っています。デビュタントも緊張して、すぐに帰ったと言っていました」
「そうですね」
そう言って、アンリ夫人は悲しい顔をした。その姿にリアンスは後悔しているのだと思った。
「なぜ預けられたのは、ランドマーク侯爵家だったのでしょうか?答えては貰えませんか?」
「スノーからは?」
「ランドマーク侯爵家が最適だったと」
「そうですか、その理由も確かにあります。私も詳しい経緯は話すわけにはいきませんが、レリリス伯爵家に問題があったということは伝えておきましょう」
「やはり…」
「想定内ですわよね?」
生家から別の家に預けられるとなれば、スノーに問題があるか、他の家族に問題があるかしかない。
「皆が知っているわけではないようですが、兄と妹に手が掛かるからというのが理由だと聞いていたようです」
「間違いではありません。ただ兄は熱をよく出していたようですが、重い病気ではありませんでしたし、妹と言っても二つしか変わらないのに、手が掛かるも何もないでしょう?スノーだって手が掛かるはずです」
「まさか放置されていたのですか?」
アンリ夫人は表情を変えず、何も答えなかった。答える気はないということだろう。アンリ夫人は血の繋がりがなくても、前侯爵には繋がりがあるのだから。
「妹君の方が余程、問題ですよ?」
「それは、どういうことでしょうか?」
「成績も極めて悪く、天真爛漫と言えば聞こえはいいですが、思う通り振舞い過ぎだと言われているそうです」
名前を使わせて貰っているルーナからスノーの妹・レピアが酷い、何も知らないために、同じ家で育ったのにどうしてあんなに違うのかと言っていた。
「はあ…そうですか、スノーが戻る際に久し振りに会いましたが…予感はしておりましたわ、身に付いてはいないのだろうと」
侯爵家には劣るだろうが、伯爵家でもそれなりの教育は必要だったはずだ。
2,328
お気に入りに追加
2,962
あなたにおすすめの小説

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します

忘れられた幼な妻は泣くことを止めました
帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。
そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。
もちろん返済する目処もない。
「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」
フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。
嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。
「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」
そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。
厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。
それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。
「お幸せですか?」
アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。
世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。
古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。
ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。

(完結)夫と姉(継母の連れ子)に罪を着せられた侯爵令嬢の二度目の人生ー『復讐』よりも『長生き』したい!
青空一夏
恋愛
私はカッシング侯爵家のアナスターシア。カッシング侯爵家の跡継ぎ娘であり、お母様の実家マッキンタイヤー公爵家の跡継ぎでもある立場なの。なんでって? 亡きお母様のお兄様(マッキンタイヤー公爵)が将軍職をまっとうするため、独身を貫いてきたからよ。ちなみにマッキンタイヤー公爵の初代はユーフェミア王女で聖女様でもあったのよ。私はその血も引いているわ。
お母様は私が5歳の頃に病で亡くなったわ。でも、まもなくお父様はサリナお母様と再婚したの。最初は嫌な気持ちがしたけれど、サリナお母様はとても優しかったからすぐに仲良くなれた。サリナお母様には娘がいて、私より年上だった。ローズリンお姉様のことよ。ローズリンお姉様も良い方で、私はとても幸せだった。
チェルシー王妃主催のお茶会で知り合ったハーランド第二王子殿下も優しくて、私を甘やかしてくれる味方なの。でも、お母様のお兄様であるマッキンタイヤー公爵は厳しくて、会うたびにお説教を言ってくるから嫌い。なるべく、伯父様(マッキンタイヤー公爵)に関わらないようにしていたいわ。そうすれば、私は幸せに気楽に生きることができる。ところが・・・・・・
この物語は夫となったハーランド第二王子の裏切りとローズリンの嘘で罪を着せられたアナスターシアが、毒杯を飲ませられるところで奇跡を起こし、二度目の人生をやり直すお話しです。アナスターシアが積極的に復讐していくお話ではなく、ハーランド第二王子やローズリンが自業自得で自滅していくお話しです。アナスターシアの恋もちりばめた恋愛小説になっています。
※この物語は現実ではない異世界のお話しですから、歴史的や時代背景的におかしな部分が多々あると思いますので、ご了承ください。誤字・脱字多いかもしれませんが、脳内で変換していただけるか、教えていただけると嬉しいです💦
聖女や聖獣などのファンタジー要素あり。
※完結保証。すでに執筆が終わっておりますので、途中で連載がとまることはありません。安心してお読みくださいませ。
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり(苦手な方はご注意下さい)。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
hotランキング1位入りしました。ありがとうございます

貴妃エレーナ
無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」
後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。
「急に、どうされたのですか?」
「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」
「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」
そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。
どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。
けれど、もう安心してほしい。
私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。
だから…
「陛下…!大変です、内乱が…」
え…?
ーーーーーーーーーーーーー
ここは、どこ?
さっきまで内乱が…
「エレーナ?」
陛下…?
でも若いわ。
バッと自分の顔を触る。
するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。
懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる