8 / 154
事情
しおりを挟む
「私には好きな人がいたの。でも父が許す相手ではなくて…納得して貰う時間が必要だと思った。でもその間に別の相手と婚約させられる可能性もあった。だから解消が可能な相手、それがローザ公爵令息だったの」
スノーは相槌を打ちながら、聞くしかなかった。
「彼も婚約者を決めるように言われていて、利害が一致した。彼も私も婚約があることで、婚約を押し付けられることもなくなった…まだ相手は言えないけど、いずれ発表が出来ると思うわ」
「納得して貰えたのですか?」
誰なのかは知らないが、反対されていたということは、相応しくないとされたのだろう。だが、認められたからこそ、婚約を解消したのか。
「ええ、そうなの。母は元々、応援してくれていたから、ようやくね。でも婚約を解消してすぐ別の相手と婚約ということは出来ないから、卒業後になると思うわ」
卒業後であれば、一年は経つ頃になり、学園の様に騒がれることもないだろう。
「おめでとうございます」
「ありがとう」
「だから、ローザ公爵令息と私のことで、煩わせるようなことはないと理解して貰いたかったの」
「承知しました」
二人はそうだったとしても、周りはそうは思わないことは気付かないのだろうかとは思ったが、理由が分かって、少し得した気持ちにはなった。
「だったら、リアンスと婚約を!」
「メリー!!それは違うだろう」
「でも、問題はないじゃない」
すっかりいつものような呼び名になってしまっており、慌てた二人は気付いてもいないのだろう。
「問題はあります」
「爵位のことでしょう?伯爵家から、公爵家に嫁ぐことだってあったのよ?あり得ないことだったそうだけど、もう古いの」
「そうかもしれませんね」
スノーはそう答えるしか選択肢はなかった。
「そうよ!確かに気持ちだけでは、どうにもならないことは分かっているわ。でも隣に立てる相手なら、叶ってもいいと思ってはいけない?」
「ユーフレット侯爵令嬢は、叶ってもいいと思います。ですが私は違います。私はローザ公爵家には相応しくない」
「そんなことはないわ」
「ありがとうございます」
ユーフレット侯爵令嬢はきっと自分だけが、婚約が決まったことに引け目があるのだろう。だからと言って、私がこの縁談を受けることは出来ない。
頑なだと言われても、私は会ってはならない人がいる。その人に会ったら、気付いてしまう。
「お二人はとてもお似合いだと、多くの学園の生徒も、私も思っておりました」
「それは…」
「否定する気はありません。ご事情は人それぞれだと思いますので」
私にも事情があるとは言うことは出来ない。そんなことを言えば、何なのだと探りたくなるのが人というものである。
「レリリス伯爵令嬢、ユーフレット侯爵令嬢の言うことは、気にしなくていい。自分が決まって、私が決まらないことで、責任を勝手に感じているだけなんだ」
「そんな、それだけじゃないわ」
「自分だけが幸せになるなんてと思っているんだろう?余計なお世話だよ」
「だって、そう思うに決まっているじゃない」
「私のことは気にしなくていい。君は運命の相手と幸せになればいい」
「運命の相手ですか?」
スノーは占いや予言、それとも何か特別な結びつきがあるのだろうかと、思わず口を挟んでしまった。
「出会った時に、体がピリピリしたそうだ。彼は私の特別だと、凄いだろう?」
「もう、やめてよ!」
「そのようなことがあるのですね」
「ピリっとした感じがしただけで、雷が落ちたとか、そんな大袈裟なものじゃないの。いずれあなたにも紹介するわ。でも押し付ける気はないから、安心して頂戴」
「ありがとうございます」
リアンスの言葉と、想う相手の話でメリーアンの感情は収まったようで、その後は少し話をしてから、スノーだけが帰った。
スノーは相槌を打ちながら、聞くしかなかった。
「彼も婚約者を決めるように言われていて、利害が一致した。彼も私も婚約があることで、婚約を押し付けられることもなくなった…まだ相手は言えないけど、いずれ発表が出来ると思うわ」
「納得して貰えたのですか?」
誰なのかは知らないが、反対されていたということは、相応しくないとされたのだろう。だが、認められたからこそ、婚約を解消したのか。
「ええ、そうなの。母は元々、応援してくれていたから、ようやくね。でも婚約を解消してすぐ別の相手と婚約ということは出来ないから、卒業後になると思うわ」
卒業後であれば、一年は経つ頃になり、学園の様に騒がれることもないだろう。
「おめでとうございます」
「ありがとう」
「だから、ローザ公爵令息と私のことで、煩わせるようなことはないと理解して貰いたかったの」
「承知しました」
二人はそうだったとしても、周りはそうは思わないことは気付かないのだろうかとは思ったが、理由が分かって、少し得した気持ちにはなった。
「だったら、リアンスと婚約を!」
「メリー!!それは違うだろう」
「でも、問題はないじゃない」
すっかりいつものような呼び名になってしまっており、慌てた二人は気付いてもいないのだろう。
「問題はあります」
「爵位のことでしょう?伯爵家から、公爵家に嫁ぐことだってあったのよ?あり得ないことだったそうだけど、もう古いの」
「そうかもしれませんね」
スノーはそう答えるしか選択肢はなかった。
「そうよ!確かに気持ちだけでは、どうにもならないことは分かっているわ。でも隣に立てる相手なら、叶ってもいいと思ってはいけない?」
「ユーフレット侯爵令嬢は、叶ってもいいと思います。ですが私は違います。私はローザ公爵家には相応しくない」
「そんなことはないわ」
「ありがとうございます」
ユーフレット侯爵令嬢はきっと自分だけが、婚約が決まったことに引け目があるのだろう。だからと言って、私がこの縁談を受けることは出来ない。
頑なだと言われても、私は会ってはならない人がいる。その人に会ったら、気付いてしまう。
「お二人はとてもお似合いだと、多くの学園の生徒も、私も思っておりました」
「それは…」
「否定する気はありません。ご事情は人それぞれだと思いますので」
私にも事情があるとは言うことは出来ない。そんなことを言えば、何なのだと探りたくなるのが人というものである。
「レリリス伯爵令嬢、ユーフレット侯爵令嬢の言うことは、気にしなくていい。自分が決まって、私が決まらないことで、責任を勝手に感じているだけなんだ」
「そんな、それだけじゃないわ」
「自分だけが幸せになるなんてと思っているんだろう?余計なお世話だよ」
「だって、そう思うに決まっているじゃない」
「私のことは気にしなくていい。君は運命の相手と幸せになればいい」
「運命の相手ですか?」
スノーは占いや予言、それとも何か特別な結びつきがあるのだろうかと、思わず口を挟んでしまった。
「出会った時に、体がピリピリしたそうだ。彼は私の特別だと、凄いだろう?」
「もう、やめてよ!」
「そのようなことがあるのですね」
「ピリっとした感じがしただけで、雷が落ちたとか、そんな大袈裟なものじゃないの。いずれあなたにも紹介するわ。でも押し付ける気はないから、安心して頂戴」
「ありがとうございます」
リアンスの言葉と、想う相手の話でメリーアンの感情は収まったようで、その後は少し話をしてから、スノーだけが帰った。
2,165
お気に入りに追加
2,858
あなたにおすすめの小説
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!
高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。
7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。
だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。
成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。
そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る
【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】
【完結】私を忘れてしまった貴方に、憎まれています
高瀬船
恋愛
夜会会場で突然意識を失うように倒れてしまった自分の旦那であるアーヴィング様を急いで邸へ連れて戻った。
そうして、医者の診察が終わり、体に異常は無い、と言われて安心したのも束の間。
最愛の旦那様は、目が覚めると綺麗さっぱりと私の事を忘れてしまっており、私と結婚した事も、お互い愛を育んだ事を忘れ。
何故か、私を憎しみの籠った瞳で見つめるのです。
優しかったアーヴィング様が、突然見知らぬ男性になってしまったかのようで、冷たくあしらわれ、憎まれ、私の心は日が経つにつれて疲弊して行く一方となってしまったのです。
勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる
千環
恋愛
第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。
なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を庇おうとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します
元使用人の公爵様は、不遇の伯爵令嬢を愛してやまない。
碧野葉菜
恋愛
フランチェスカ家の伯爵令嬢、アンジェリカは、両親と妹にいない者として扱われ、地下室の部屋で一人寂しく暮らしていた。
そんな彼女の孤独を癒してくれたのは、使用人のクラウスだけ。
彼がいなくなってからというもの、アンジェリカは生きる気力すら失っていた。
そんなある日、フランチェスカ家が破綻し、借金を返すため、アンジェリカは娼館に売られそうになる。
しかし、突然現れたブリオット公爵家からの使者に、縁談を持ちかけられる。
戸惑いながらブリオット家に連れられたアンジェリカ、そこで再会したのはなんと、幼い頃離れ離れになったクラウスだった――。
8年の時を経て、立派な紳士に成長した彼は、アンジェリカを妻にすると強引に迫ってきて――!?
執着系年下美形公爵×不遇の無自覚美人令嬢の、西洋貴族溺愛ストーリー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる