【完結】言いたくてしかたない

野村にれ

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 何だそれって思ったでしょう?ええ、分かりますわよ。私もどうしてこんなことになってしまったのか、分からないのですから。

 どうしようもなく、堪らない衝動に襲われるんですの。困ったものですわ。

 冒頭の「こ~んにちは」は〇さのりさんだろう?って、ええ、そうですよ。当たり前じゃないですか。

 全力で、手のひらを広げてやりたいところを、頭の中で我慢しているのですから。

 言えばいいじゃないかって?この国の人には分からない日本語を、いつどこで大きな声で言えば、頭がおかしいと思われないか、ここが問題なのですよ。

 いくら部屋で一人きりでも邸で大きな声を出せば、絶対にメイドや家族が飛んで来るでしょう?

 私はこれでも由緒正しい、侯爵令嬢なのですよ?

 学園に通っているのですけどね、そちらも同様です。教室で叫びでもしたら、怪訝な目で見るクラスメイトに、教師を呼びに行くでしょう?

 空き教室?隣のクラスに響きますでしょう?離れた教室?そんな、教室ちょっと危ないではありませんか。

 日本人が叫ぶ名所と言えば山でしょうけども、山がないわけではないですが、そんな側にはありませんし、こちとら侯爵令嬢なのですよ?

 山なんて、簡単に行きたいと行けるものではありませんし、山に行きたい理由を、そこに山があるからなんて言えないのですよ?そして、侯爵令嬢が、絶対に一人で行かせてくれるはずもありませんの。

 ほーら!言う場所がないでしょう?

 どこかあるだろう?って、一体どこですか、教えて欲しいのは私の方です。

 だったら、小さな声で言えばいいじゃないか?そこは論外です。大きな声で言いたいのであって、小さな声で言うつもりはないのです。

 全力でやらなければ、私のモヤモヤは解消されません!

 そもそも、気持ち良くないのです!

 前世でやったこともないですが、振りがある場合は、うろ覚えでもやりたいくらいなのです。とにかく、やりたくてたまらないのです。あっ、〇にかく明るい〇村もいましたわね。でも、ちょっと女性にはハードルが高いですわね。

 絶妙な色の下着を探すところから始めなくてはいけないし、音楽も必要ですからね。動きだけなら部屋でこっそりやればいいですが、問題は大きな声が出そうになることなのです。

 そして、誰かに見られた時点で、病院行きは待ったなしです。

 しかし、自分でもなぜこんな風になったのか、分からないのです。

 思い出したきっかけだったのではないか?ええ、ご明察です。おちゃらけ令息が、たまたま『ぴ~や』と言ったのです。そうです、〇島〇しおさんですわね。

 そこからは、ジャラランジャラランと、湧き上がるように前世の記憶が蘇りました。『〇泉がえり』も、いい映画でしたわね。

 じゃあ、ただお笑い芸人が好きだったのだろうって?それが、お笑い芸人はテレビでは観ていたのですが、特別に誰かが好きというわけでもなく、たまたまバラエティー番組で見る程度だったのです。

 テレビならドラマの方が好きでした。なのに前世を思い出してから、言いたくて、しかたないのです。最近ではムズムズしてしまうくらいなのですわ。

 テレビドラマならば、〇畑〇三郎のモノマネの方が、こっそり小声で出来そうにも関わらず、欲しているのは張り上げるギャグなのです。

 一体、どうしたらいいのでしょうか。

「すまなかった」

 ようやくレオナルドへの長い耳打ちが終わったようだ。

「それで、何でしょうか?」
「それなのだが」

 再び、ドアを叩く音がしている。

「失礼します」

 ああ、またやって来た。こいつは何人従者がいるんだ?最近では、こいつ呼ばわりになっている。

「また、すまない。少し待ってくれ」
「はい」

 実はこの状況で私の頭には〇イザーラモン〇Gが、〇る〇る言いたい~〇る〇る早く言いたい~とずっと奏でられているのです。

 皮肉にもピッタリでしょう?
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