96 / 131
聖女と呼ばれる理由
しおりを挟む
「外国語を?」
「授業で少し習っただけでのビリズ語を、あっという間に訳して見せたんです」
「まあ、凄いのね」
オマリーは何か特別なものを持っているのだろうとは思っていたが、外国語が得意だったのかと、素直に感心した。
「いえ、たまたまだと思います…」
アリナはそんなことはないと、謙遜しながら答えた。
「あれで、たまたまということはないわよ」
ルスデン王国では選択教科としてではなく、外国語に触れるということで、語学という授業がある。その月はビリズ語で、グループで訳してみることになった。
月の最後に訳した物を提出することになっていたが、訳を纏めていたクラストメイトが書いた紙をなくし、同じグループだったアリナがこうだったと思うと、あっという間に訳を書いた。
それも一言、訳しただけではなく、数行をアリナは訳して見せたのである。そこから同じグループの者に、天才ではないかと言われることになった。
教師からも、もっとビリズ語を学んでみてはどうかと言われて、アリナは勉強は好きではなかったが、褒められることで、嬉しい気持ちになり、期待に応えたいと思い、他の言語や古代語も学ぶことになった。
そこから留学の話になり、ハッソ男爵家は生活が苦しいほどではなかったが、裕福でもなかった。だが、費用も学園が負担してくれること、両親も行ってみたいなら行ったらいいと言ってくれて、行くことを決めた。
留学先の費用も、解読に期待をするコーランド王国のグルダイヤ侯爵が、負担してくれることになった。
先生に一人では心細いと話すと、誰か一緒に付き添わせようということになり、選ばれたのがクリスティーナとファミラであった。
アリナはファミラですら伯爵令嬢で、クリスティーナは侯爵令嬢ということで、気後れしたが、良くも悪くも二人ともアリナに興味はなかった。
「凄いじゃない。では、パレート語も既に覚えているの?」
「はい…少しずつ覚えています」
オマリーが会う時は、アリナはいつも教科書と、パレート語で書かれている本をいつも見ていた。
「でも他の教科は苦手な教科も多くて、ファミラ様の方が優秀です」
「それはないわ、私の点数見たでしょう?」
母国と比べて、コーランド王国の授業も試験も難しいことから、酷い点数を取ったことをオマリーもファミラから聞いていた。
「でも、聖女というのは?」
「母国で『才の聖女』という、天才的な頭脳を持つ女性の物語が流行っておりまして、生まれ持った才能で奇跡を成し遂げた女性を、才の聖女と、それでアリナ嬢も聖女と呼ばれるようになったんです」
『才の聖女』はルスデン王国で書かれたものではないが、老若男女とは言わないが、幅広い世代で人気となっており、そこからアリナは最初は才の聖女と呼ばれ、その後は聖女と呼ばれるようになった。
「それで…納得しました。てっきり私は、怪我でも治してくれるのかと思ってしまったわ」
「すみません…でも、よく言われます。クラスの方に聞かれたりもしたのですけど、こう長々と説明するのも、何だか申し訳なくて…」
「でも、素晴らしい才能だと私も思うわ」
「ありがとうございます」
オマリーも外国語に長けているのかもしれないが、聖女と呼ばれるまでのことなのだろうかとは思いながらも、褒めて持ち上げて置くことにした。
その後も、オマリーはどこかでエルドールと接点を持てるのではないかと期待していたが、王家と方とは必要な際にしか会うことはないと聞き、常に一緒にいるわけでも、いるわけにもいかないので、なかなか難しかった。
だが、オマリーもクラスでは遠巻きにされて、先輩と素直に慕ってくれる二人と過ごすのが楽しくなっていた。
三人の交流は、静かに密かに行われていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本日もお読みいただきありがとうございます。
本日も急遽1日2話、投稿させていただきます。
いつもの17時にも1話、投稿します。
どうぞよろしくお願いいたします。
「授業で少し習っただけでのビリズ語を、あっという間に訳して見せたんです」
「まあ、凄いのね」
オマリーは何か特別なものを持っているのだろうとは思っていたが、外国語が得意だったのかと、素直に感心した。
「いえ、たまたまだと思います…」
アリナはそんなことはないと、謙遜しながら答えた。
「あれで、たまたまということはないわよ」
ルスデン王国では選択教科としてではなく、外国語に触れるということで、語学という授業がある。その月はビリズ語で、グループで訳してみることになった。
月の最後に訳した物を提出することになっていたが、訳を纏めていたクラストメイトが書いた紙をなくし、同じグループだったアリナがこうだったと思うと、あっという間に訳を書いた。
それも一言、訳しただけではなく、数行をアリナは訳して見せたのである。そこから同じグループの者に、天才ではないかと言われることになった。
教師からも、もっとビリズ語を学んでみてはどうかと言われて、アリナは勉強は好きではなかったが、褒められることで、嬉しい気持ちになり、期待に応えたいと思い、他の言語や古代語も学ぶことになった。
そこから留学の話になり、ハッソ男爵家は生活が苦しいほどではなかったが、裕福でもなかった。だが、費用も学園が負担してくれること、両親も行ってみたいなら行ったらいいと言ってくれて、行くことを決めた。
留学先の費用も、解読に期待をするコーランド王国のグルダイヤ侯爵が、負担してくれることになった。
先生に一人では心細いと話すと、誰か一緒に付き添わせようということになり、選ばれたのがクリスティーナとファミラであった。
アリナはファミラですら伯爵令嬢で、クリスティーナは侯爵令嬢ということで、気後れしたが、良くも悪くも二人ともアリナに興味はなかった。
「凄いじゃない。では、パレート語も既に覚えているの?」
「はい…少しずつ覚えています」
オマリーが会う時は、アリナはいつも教科書と、パレート語で書かれている本をいつも見ていた。
「でも他の教科は苦手な教科も多くて、ファミラ様の方が優秀です」
「それはないわ、私の点数見たでしょう?」
母国と比べて、コーランド王国の授業も試験も難しいことから、酷い点数を取ったことをオマリーもファミラから聞いていた。
「でも、聖女というのは?」
「母国で『才の聖女』という、天才的な頭脳を持つ女性の物語が流行っておりまして、生まれ持った才能で奇跡を成し遂げた女性を、才の聖女と、それでアリナ嬢も聖女と呼ばれるようになったんです」
『才の聖女』はルスデン王国で書かれたものではないが、老若男女とは言わないが、幅広い世代で人気となっており、そこからアリナは最初は才の聖女と呼ばれ、その後は聖女と呼ばれるようになった。
「それで…納得しました。てっきり私は、怪我でも治してくれるのかと思ってしまったわ」
「すみません…でも、よく言われます。クラスの方に聞かれたりもしたのですけど、こう長々と説明するのも、何だか申し訳なくて…」
「でも、素晴らしい才能だと私も思うわ」
「ありがとうございます」
オマリーも外国語に長けているのかもしれないが、聖女と呼ばれるまでのことなのだろうかとは思いながらも、褒めて持ち上げて置くことにした。
その後も、オマリーはどこかでエルドールと接点を持てるのではないかと期待していたが、王家と方とは必要な際にしか会うことはないと聞き、常に一緒にいるわけでも、いるわけにもいかないので、なかなか難しかった。
だが、オマリーもクラスでは遠巻きにされて、先輩と素直に慕ってくれる二人と過ごすのが楽しくなっていた。
三人の交流は、静かに密かに行われていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本日もお読みいただきありがとうございます。
本日も急遽1日2話、投稿させていただきます。
いつもの17時にも1話、投稿します。
どうぞよろしくお願いいたします。
3,025
お気に入りに追加
6,569
あなたにおすすめの小説

初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。
豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」
「はあ?」
初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた?
脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ?
なろう様でも公開中です。


【完結済】自由に生きたいあなたの愛を期待するのはもうやめました
鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
伯爵令嬢クラウディア・マクラウドは長年の婚約者であるダミアン・ウィルコックス伯爵令息のことを大切に想っていた。結婚したら彼と二人で愛のある家庭を築きたいと夢見ていた。
ところが新婚初夜、ダミアンは言った。
「俺たちはまるっきり愛のない政略結婚をしたわけだ。まぁ仕方ない。あとは割り切って互いに自由に生きようじゃないか。」
そう言って愛人らとともに自由に過ごしはじめたダミアン。激しくショックを受けるクラウディアだったが、それでもひたむきにダミアンに尽くし、少しずつでも自分に振り向いて欲しいと願っていた。
しかしそんなクラウディアの思いをことごとく裏切り、鼻で笑うダミアン。
心が折れそうなクラウディアはそんな時、王国騎士団の騎士となった友人アーネスト・グレアム侯爵令息と再会する。
初恋の相手であるクラウディアの不幸せそうな様子を見て、どうにかダミアンから奪ってでも自分の手で幸せにしたいと考えるアーネスト。
そんなアーネストと次第に親密になり自分から心が離れていくクラウディアの様子を見て、急に焦り始めたダミアンは─────
(※※夫が酷い男なので序盤の数話は暗い話ですが、アーネストが出てきてからはわりとラブコメ風です。)(※※この物語の世界は作者独自の設定です。)

【完】婚約者に、気になる子ができたと言い渡されましたがお好きにどうぞ
さこの
恋愛
私の婚約者ユリシーズ様は、お互いの事を知らないと愛は芽生えないと言った。
そもそもあなたは私のことを何にも知らないでしょうに……。
二十話ほどのお話です。
ゆる設定の完結保証(執筆済)です( .ˬ.)"
ホットランキング入りありがとうございます
2021/08/08

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)
さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】
私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。
もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。
※マークは残酷シーン有り
※(他サイトでも投稿中)

理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました
ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。
このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。
そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。
ーーーー
若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。
作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。
完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。
第一章 無計画な婚約破棄
第二章 無計画な白い結婚
第三章 無計画な告白
第四章 無計画なプロポーズ
第五章 無計画な真実の愛
エピローグ

ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる