76 / 131
王子と王女の訪問2
しおりを挟む
「そうだとしても、おかしいですわ」
「それはそうね。きっと周りに認めてくれる人がいたのでしょうね。だからあのような自信に繋がった」
ローレルとメイランもその場にはいなかったが、呼び出した際に、食って掛かるほど威勢が良かったことを聞いた。
成績優秀者だったことから、褒める者は周りにいたのではないかということは、想像に容易い。
「そして、あの方は正しく男爵令嬢という立場を理解していない」
「そうだとしたら、学園に戻ったのは、大丈夫だろうか」
エルドールからオマリーがクラスにやって来たが、カイロスが追い返し、まだ懲りていないのかとは思っていたが、その後はクラスに来ることはないと聞いていた。
「どうでしょうね。ご両親が正しく理解させたか、どうかでしょうね」
「ご両親はまともだと聞いたが?」
「ご両親がまともであれば、あるほど、あの方のことは正しく理解が出来ていないということです」
「それは…」
「っ」
ローレルも両親が気付かなかったのかと思ったが、寮生活で気付かなかったのだと分かった。だが、それ以前の問題なら、答えとして一番納得が出来るものであった。
メイランも同様に、さすがヨルレアンお義姉様だと感じていた。
「ただし、理解が出来る親だとしても、それはそれで問題ですけどね」
「そうですね」
「ええ、理解が出来ないことが、まともであることならば、難しいですわね」
「はい、出来て当たり前の世界にいる私たちとは、きっと見えるものも、考えも違うのです」
「はい…」
「ええ、とても納得がいきましたわ」
トドック男爵令嬢のことを理解しようと思ったわけではなかったが、気味の悪さは残ったままであった。だが、両親ですら理解が出来ないことを、ローレルとメイランが理解が出来るはずがないと思えた。
自業自得な部分もあるが、一番被害を被ったエルドールに、聞かせたやりたいとローレルは思った。
「ごめんなさい、喋り過ぎましたわ」
「いや、我々が望んだのだ。それで…聖女の件だが、我々は信用は出来ないと思っている。父上はまず、解読に当たっている者に許可を得てからだと言っていたのだが、ヨルレアン嬢はどう思う?」
「私は賛同いたします」
ローレルもヨルレアンが始めから否定するとは思ってはいなかったが、あっさりと賛同するとも思っていなかった。
「だが、御母上は留学も許さなかったそうだが?」
「そうでしたか、ルエルフ王国にも?」
「ああ、留学を打診したそうだ」
「母は嫌うでしょうね、気持ち悪いと言いそうですわ」
ヨルレアンは、母であるルアサーラのしかめっ面を思い浮かべていた。
「ヨルレアン嬢はそうは思わないのかい?」
「おとぎ話は物語の領域を出ませんが、人であれば天才も、幽霊もこの世に、いると思っております」
「幽霊もか?」
「ええ、幽霊は元は人でしょう?ですから、その方で解読が進むのならば、良きことでしょう」
「だが、信用が出来ると思うか?」
メイランも険しい顔で、強く横で頷いている。
「そうですわね、おそらく世に出ていない未解読の文献をその方に解読させ、事実かどうか確認をする。私にその未解読の文献を用意して欲しい。それで、お二人がいらしたのですね?」
「その通りだよ。解読中に申し訳ないのだが…父上も渋い顔をしていたよ」
「目に浮かびますわ」
ヨルレアンも嫌でも、自分の立場は理解していた。解読者の身分として、この国で一番高いのは自分であり、後ろ盾も恐ろしいほど強い。
「そうですわね、それでしたら…ええ、良い物がありますが、しばらくお時間を頂けますか?」
「それは勿論だ、すぐに用意して欲しいなどと思っていないし、くれぐれも無理をするようなことはないようにして欲しい」
「ありがとうございます。では、またご連絡するということでよろしいかしら?」
「ああ、受け入れてくれて感謝する」
「ありがとうございます」
「それはそうね。きっと周りに認めてくれる人がいたのでしょうね。だからあのような自信に繋がった」
ローレルとメイランもその場にはいなかったが、呼び出した際に、食って掛かるほど威勢が良かったことを聞いた。
成績優秀者だったことから、褒める者は周りにいたのではないかということは、想像に容易い。
「そして、あの方は正しく男爵令嬢という立場を理解していない」
「そうだとしたら、学園に戻ったのは、大丈夫だろうか」
エルドールからオマリーがクラスにやって来たが、カイロスが追い返し、まだ懲りていないのかとは思っていたが、その後はクラスに来ることはないと聞いていた。
「どうでしょうね。ご両親が正しく理解させたか、どうかでしょうね」
「ご両親はまともだと聞いたが?」
「ご両親がまともであれば、あるほど、あの方のことは正しく理解が出来ていないということです」
「それは…」
「っ」
ローレルも両親が気付かなかったのかと思ったが、寮生活で気付かなかったのだと分かった。だが、それ以前の問題なら、答えとして一番納得が出来るものであった。
メイランも同様に、さすがヨルレアンお義姉様だと感じていた。
「ただし、理解が出来る親だとしても、それはそれで問題ですけどね」
「そうですね」
「ええ、理解が出来ないことが、まともであることならば、難しいですわね」
「はい、出来て当たり前の世界にいる私たちとは、きっと見えるものも、考えも違うのです」
「はい…」
「ええ、とても納得がいきましたわ」
トドック男爵令嬢のことを理解しようと思ったわけではなかったが、気味の悪さは残ったままであった。だが、両親ですら理解が出来ないことを、ローレルとメイランが理解が出来るはずがないと思えた。
自業自得な部分もあるが、一番被害を被ったエルドールに、聞かせたやりたいとローレルは思った。
「ごめんなさい、喋り過ぎましたわ」
「いや、我々が望んだのだ。それで…聖女の件だが、我々は信用は出来ないと思っている。父上はまず、解読に当たっている者に許可を得てからだと言っていたのだが、ヨルレアン嬢はどう思う?」
「私は賛同いたします」
ローレルもヨルレアンが始めから否定するとは思ってはいなかったが、あっさりと賛同するとも思っていなかった。
「だが、御母上は留学も許さなかったそうだが?」
「そうでしたか、ルエルフ王国にも?」
「ああ、留学を打診したそうだ」
「母は嫌うでしょうね、気持ち悪いと言いそうですわ」
ヨルレアンは、母であるルアサーラのしかめっ面を思い浮かべていた。
「ヨルレアン嬢はそうは思わないのかい?」
「おとぎ話は物語の領域を出ませんが、人であれば天才も、幽霊もこの世に、いると思っております」
「幽霊もか?」
「ええ、幽霊は元は人でしょう?ですから、その方で解読が進むのならば、良きことでしょう」
「だが、信用が出来ると思うか?」
メイランも険しい顔で、強く横で頷いている。
「そうですわね、おそらく世に出ていない未解読の文献をその方に解読させ、事実かどうか確認をする。私にその未解読の文献を用意して欲しい。それで、お二人がいらしたのですね?」
「その通りだよ。解読中に申し訳ないのだが…父上も渋い顔をしていたよ」
「目に浮かびますわ」
ヨルレアンも嫌でも、自分の立場は理解していた。解読者の身分として、この国で一番高いのは自分であり、後ろ盾も恐ろしいほど強い。
「そうですわね、それでしたら…ええ、良い物がありますが、しばらくお時間を頂けますか?」
「それは勿論だ、すぐに用意して欲しいなどと思っていないし、くれぐれも無理をするようなことはないようにして欲しい」
「ありがとうございます。では、またご連絡するということでよろしいかしら?」
「ああ、受け入れてくれて感謝する」
「ありがとうございます」
3,576
お気に入りに追加
6,569
あなたにおすすめの小説

初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。
豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」
「はあ?」
初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた?
脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ?
なろう様でも公開中です。


【完結済】自由に生きたいあなたの愛を期待するのはもうやめました
鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
伯爵令嬢クラウディア・マクラウドは長年の婚約者であるダミアン・ウィルコックス伯爵令息のことを大切に想っていた。結婚したら彼と二人で愛のある家庭を築きたいと夢見ていた。
ところが新婚初夜、ダミアンは言った。
「俺たちはまるっきり愛のない政略結婚をしたわけだ。まぁ仕方ない。あとは割り切って互いに自由に生きようじゃないか。」
そう言って愛人らとともに自由に過ごしはじめたダミアン。激しくショックを受けるクラウディアだったが、それでもひたむきにダミアンに尽くし、少しずつでも自分に振り向いて欲しいと願っていた。
しかしそんなクラウディアの思いをことごとく裏切り、鼻で笑うダミアン。
心が折れそうなクラウディアはそんな時、王国騎士団の騎士となった友人アーネスト・グレアム侯爵令息と再会する。
初恋の相手であるクラウディアの不幸せそうな様子を見て、どうにかダミアンから奪ってでも自分の手で幸せにしたいと考えるアーネスト。
そんなアーネストと次第に親密になり自分から心が離れていくクラウディアの様子を見て、急に焦り始めたダミアンは─────
(※※夫が酷い男なので序盤の数話は暗い話ですが、アーネストが出てきてからはわりとラブコメ風です。)(※※この物語の世界は作者独自の設定です。)

【完】婚約者に、気になる子ができたと言い渡されましたがお好きにどうぞ
さこの
恋愛
私の婚約者ユリシーズ様は、お互いの事を知らないと愛は芽生えないと言った。
そもそもあなたは私のことを何にも知らないでしょうに……。
二十話ほどのお話です。
ゆる設定の完結保証(執筆済)です( .ˬ.)"
ホットランキング入りありがとうございます
2021/08/08

【完結】「君を手に入れるためなら、何でもするよ?」――冷徹公爵の執着愛から逃げられません」
21時完結
恋愛
「君との婚約はなかったことにしよう」
そう言い放ったのは、幼い頃から婚約者だった第一王子アレクシス。
理由は簡単――新たな愛を見つけたから。
(まあ、よくある話よね)
私は王子の愛を信じていたわけでもないし、泣き喚くつもりもない。
むしろ、自由になれてラッキー! これで平穏な人生を――
そう思っていたのに。
「お前が王子との婚約を解消したと聞いた時、心が震えたよ」
「これで、ようやく君を手に入れられる」
王都一の冷徹貴族と恐れられる公爵・レオンハルトが、なぜか私に異常な執着を見せ始めた。
それどころか、王子が私に未練がましく接しようとすると――
「君を奪う者は、例外なく排除する」
と、不穏な笑みを浮かべながら告げてきて――!?
(ちょっと待って、これって普通の求愛じゃない!)
冷酷無慈悲と噂される公爵様は、どうやら私のためなら何でもするらしい。
……って、私の周りから次々と邪魔者が消えていくのは気のせいですか!?
自由を手に入れるはずが、今度は公爵様の異常な愛から逃げられなくなってしまいました――。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)
さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】
私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。
もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。
※マークは残酷シーン有り
※(他サイトでも投稿中)
【完結】365日後の花言葉
Ringo
恋愛
許せなかった。
幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。
あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。
“ごめんなさい”
言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの?
※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる