【完結】ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ

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王子と王女の訪問2

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「そうだとしても、おかしいですわ」
「それはそうね。きっと周りに認めてくれる人がいたのでしょうね。だからあのような自信に繋がった」

 ローレルとメイランもその場にはいなかったが、呼び出した際に、食って掛かるほど威勢が良かったことを聞いた。

 成績優秀者だったことから、褒める者は周りにいたのではないかということは、想像に容易い。

「そして、あの方は正しく男爵令嬢という立場を理解していない」
「そうだとしたら、学園に戻ったのは、大丈夫だろうか」

 エルドールからオマリーがクラスにやって来たが、カイロスが追い返し、まだ懲りていないのかとは思っていたが、その後はクラスに来ることはないと聞いていた。

「どうでしょうね。ご両親が正しく理解させたか、どうかでしょうね」
「ご両親はまともだと聞いたが?」
「ご両親がまともであれば、あるほど、あの方のことは正しく理解が出来ていないということです」
「それは…」
「っ」

 ローレルも両親が気付かなかったのかと思ったが、寮生活で気付かなかったのだと分かった。だが、それ以前の問題なら、答えとして一番納得が出来るものであった。

 メイランも同様に、さすがヨルレアンお義姉様だと感じていた。

「ただし、理解が出来る親だとしても、それはそれで問題ですけどね」
「そうですね」
「ええ、理解が出来ないことが、まともであることならば、難しいですわね」
「はい、出来て当たり前の世界にいる私たちとは、きっと見えるものも、考えも違うのです」
「はい…」
「ええ、とても納得がいきましたわ」

 トドック男爵令嬢のことを理解しようと思ったわけではなかったが、気味の悪さは残ったままであった。だが、両親ですら理解が出来ないことを、ローレルとメイランが理解が出来るはずがないと思えた。

 自業自得な部分もあるが、一番被害を被ったエルドールに、聞かせたやりたいとローレルは思った。

「ごめんなさい、喋り過ぎましたわ」
「いや、我々が望んだのだ。それで…聖女の件だが、我々は信用は出来ないと思っている。父上はまず、解読に当たっている者に許可を得てからだと言っていたのだが、ヨルレアン嬢はどう思う?」
「私は賛同いたします」

 ローレルもヨルレアンが始めから否定するとは思ってはいなかったが、あっさりと賛同するとも思っていなかった。

「だが、御母上は留学も許さなかったそうだが?」
「そうでしたか、ルエルフ王国にも?」
「ああ、留学を打診したそうだ」
「母は嫌うでしょうね、気持ち悪いと言いそうですわ」

 ヨルレアンは、母であるルアサーラのしかめっ面を思い浮かべていた。

「ヨルレアン嬢はそうは思わないのかい?」
「おとぎ話は物語の領域を出ませんが、人であれば天才も、幽霊もこの世に、いると思っております」
「幽霊もか?」
「ええ、幽霊は元は人でしょう?ですから、その方で解読が進むのならば、良きことでしょう」
「だが、信用が出来ると思うか?」

 メイランも険しい顔で、強く横で頷いている。

「そうですわね、おそらく世に出ていない未解読の文献をその方に解読させ、事実かどうか確認をする。私にその未解読の文献を用意して欲しい。それで、お二人がいらしたのですね?」
「その通りだよ。解読中に申し訳ないのだが…父上も渋い顔をしていたよ」
「目に浮かびますわ」

 ヨルレアンも嫌でも、自分の立場は理解していた。解読者の身分として、この国で一番高いのは自分であり、後ろ盾も恐ろしいほど強い。

「そうですわね、それでしたら…ええ、良い物がありますが、しばらくお時間を頂けますか?」
「それは勿論だ、すぐに用意して欲しいなどと思っていないし、くれぐれも無理をするようなことはないようにして欲しい」
「ありがとうございます。では、またご連絡するということでよろしいかしら?」
「ああ、受け入れてくれて感謝する」
「ありがとうございます」
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