【完結】ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ

文字の大きさ
上 下
60 / 131

呼び出し3

しおりを挟む
「私は幼少期から厳しい教育を受けておりますの、ですから、学園がどの程度か分かりませんでしたので、学園長に最初の試験の際に1位だったら、以降は外して欲しいとお願いしましたの」
「…な」

 その後もずっと1位だったことには、さすがにヨルレアンも驚いたが、厳しい教育の賜物である。

「成績優秀者の枠は1つでも多い方がいいでしょう?ですから、20位だったあなたは、わたしのおかげで20位の成績優秀者ですの、分かりますか?」
「そんな、嘘よ…」

 偉そうな態度を取っていい理由にしていたオマリーは、どうしても認めることが出来なかった。

「どうして、両陛下も宰相様もいる場で、バレるような嘘を付く必要がありますの?ねえ、陛下?」
「ああ、その通りだな」
「トドック男爵令嬢は、私をお勉強が出来ないと思って、馬鹿にしていたのかしら?不遜な態度だったのもそのせいかしら?」
「申し訳ございません!」

 ずっと許可を得ていないので、黙っていたベクターが席を立って、膝を付いて謝罪した。ジュディーも同じように床に頭を擦り付けている。

「え?お父様、お母様…」
「オマリー・トドックのせいで、ご両親は謝罪をしているのですよ」

 宰相は理解の出来ていない様子のオマリーに、事実を告げた。

「そんな、私は知らなかったからで」
「だからと言って、勝手に馬鹿にして、許されると思っているのですか?」

 男爵令嬢が公爵令嬢にとも続けたかったが、私が言う台詞ではないと控えることにした。

「ですが、私は殿下のためを思って」
「全て殿下のためと言えば、免罪符になるとでも思っているのですか?殿下はあなたの都合のいい道具ではないのですよ?」
「私はそんなつもりじゃ…」

 オマリーはぷるぷると震え始めたが、誰も心配などする気はない。

「私がヨルレアン・オズラールがエルドールを手伝うようなことはないと、宣言する。これで満足か?」
「…っ」

 ダズベルトに言われては、オマリーは言い返す言葉が見付からなかった。

「トドック男爵、夫人、座ってください」
「ですが」
「これからについて話さなければなりません」

 ベクターとジュディーは、項垂れたまま席に着いた。

「これまでの王族に対しての失礼な態度、本日の態度も見る限り、学園には令嬢教育を受けていると答えていたようですが、認められません」
「はい、その通りでございます。申し訳ございません」
「学園でも異性にのみボディタッチを行い、教師から注意を受けております」
「っな、申し訳ございません」

 ボディタッチの件は、距離を取られたことで、何か大きな問題になったわけではなかったので、両親には伝えておらず、子どもではないのだからという理由で、本人にのみ伝えられていた。

「今回の件もありますので、オマリー・トドックは学園を休学となり、令嬢教育を受け直しなさい。そして、留年は決定とします」
「はい、承知いたしました」

 退学でも良かったが、成績優秀者、生徒会、殿下の手伝いに執着していた様子から、休学の方が罰になるのではないかと判断した。

 自ずと生徒会も外されることになる。

 ヨルレアンを怒らせた手伝いについては、オマリーに公にすることは必要性を感じないために、休学になることで納得した。

 既に噂にはなっておらず、訂正を行っていることから、休学の上、頭は良いことから、すぐに復学することを避けるために、留年は決定した。

「そんな!」
「オマリー、黙りなさい」
「だって、留年なんて…お父様だって、私がずっと努力していたことを知っているでしょう!」
「それほどのことをしただろう!ボディタッチなんて…恥ずかしい」
「それは、つい触ってしまっただけで、今はしていないわ」
「いいえ、最近でも令息から訴えがあります。見ていた者もいる場合もありましたので、令嬢は嘘を付いております」
「申し訳ございません」

 ベクターはオマリーを、キッと強く睨み付けた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。

豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」 「はあ?」 初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた? 脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ? なろう様でも公開中です。

【完結】さよなら私の初恋

山葵
恋愛
私の婚約者が妹に見せる笑顔は私に向けられる事はない。 初恋の貴方が妹を望むなら、私は貴方の幸せを願って身を引きましょう。 さようなら私の初恋。

【完結済】自由に生きたいあなたの愛を期待するのはもうやめました

鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
 伯爵令嬢クラウディア・マクラウドは長年の婚約者であるダミアン・ウィルコックス伯爵令息のことを大切に想っていた。結婚したら彼と二人で愛のある家庭を築きたいと夢見ていた。  ところが新婚初夜、ダミアンは言った。 「俺たちはまるっきり愛のない政略結婚をしたわけだ。まぁ仕方ない。あとは割り切って互いに自由に生きようじゃないか。」  そう言って愛人らとともに自由に過ごしはじめたダミアン。激しくショックを受けるクラウディアだったが、それでもひたむきにダミアンに尽くし、少しずつでも自分に振り向いて欲しいと願っていた。  しかしそんなクラウディアの思いをことごとく裏切り、鼻で笑うダミアン。  心が折れそうなクラウディアはそんな時、王国騎士団の騎士となった友人アーネスト・グレアム侯爵令息と再会する。  初恋の相手であるクラウディアの不幸せそうな様子を見て、どうにかダミアンから奪ってでも自分の手で幸せにしたいと考えるアーネスト。  そんなアーネストと次第に親密になり自分から心が離れていくクラウディアの様子を見て、急に焦り始めたダミアンは───── (※※夫が酷い男なので序盤の数話は暗い話ですが、アーネストが出てきてからはわりとラブコメ風です。)(※※この物語の世界は作者独自の設定です。)

【完】婚約者に、気になる子ができたと言い渡されましたがお好きにどうぞ

さこの
恋愛
 私の婚約者ユリシーズ様は、お互いの事を知らないと愛は芽生えないと言った。  そもそもあなたは私のことを何にも知らないでしょうに……。  二十話ほどのお話です。  ゆる設定の完結保証(執筆済)です( .ˬ.)" ホットランキング入りありがとうございます 2021/08/08

【完結】自業自得の因果応報

仲村 嘉高
恋愛
愛し愛されて結婚したはずの夫は、モラハラDVな最低男だった。 ある日、殴られて壁に体を叩きつけられ、反動で床に倒れて頭を打ったマリアンヌは、その衝撃で前世を思い出した。 日本人で、ちょっとヤンチャをしていた過去を持った女性だった記憶だ。 男尊女卑の世界に転生したにしても、この夫は酷すぎる。 マリアンヌは、今までの事も含め、復讐する事に決めた。 物理で。 ※前世の世代は、夜露死苦な昭和です(笑)

さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】 私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。 もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。 ※マークは残酷シーン有り ※(他サイトでも投稿中)

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。

ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。 ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。 対面した婚約者は、 「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」 ……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。 「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」 今の私はあなたを愛していません。 気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。 ☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。 ☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

ある王国の王室の物語

朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。 顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。 それから 「承知しました」とだけ言った。 ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。 それからバウンドケーキに手を伸ばした。 カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

処理中です...