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終わり
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話が終わり、四日後に呼び出すことが決まり、ヨルレアンが帰った頃、エルドールが髪の毛を振り乱して戻って来た。
「ヨルレアン嬢は?」
「もう帰った」
ダズベルトとオーバンだけが、渋い顔でお茶を飲んでいた。
「…な、何の話だったのですか?」
ダズベルトは念のために、従者にエルドールを戻らせるように指示を出していた。
「トドック男爵令嬢が、寄りにもよって、ヨルレアン嬢に『振り返る女』の解読の手伝いをしたと言ったそうだ」
「は?」
「対処すべきだったと、王妃と反省していたところだ」
エルドールがよく見ると、ダズベルトもオーバンも、非常に疲れた様子で暗い。
「どうして、ヨルレアン嬢とトドック男爵令嬢が?」
「学園長に本を返しに行ったそうだ、そこで絡まれたんだ」
「それでヨルレアン嬢が、怒っているということですか?」
やはり間違いだと、しっかりと公表すべきだったのだと、エルドールは感じた。
「ああ、だが我々は公表しないこともだが、どこかで評価など気にしていないから、噂が広まるようなことがなければ、煩わせることはないと思っていた」
「でも、違ったのよ」
「違った?」
「ヨルレアン嬢は、解読者に名前を載せなくていいと言っていたでしょう?」
「ええ」
エルドールは同席したわけではなかったが、二人の頑張りを僅かに見ただけだが、ザッハンデル前伯爵もヨルレアンの意見も理解は出来たが、二人にするべきだと思っていた。
「それをザッハンデル前伯爵が、そんなことは認めないと揉めて、ヨルレアン嬢が折れたのだけど」
「だから、ヨルレアン嬢は言ったんだよ。『手伝ったと言っていいのは、私だけでございます』と」
「…あ」
「儂らは間違えていた。手伝ったということは、ヨルレアン嬢の言葉であるとな」
「だからね、ヨルレアン嬢にとって正しいのは、解読者がザッハンデル前伯爵、手伝ったのがヨルレアン嬢だったのよ」
「それなのに、訳の分からない男爵令嬢が手伝ったなどと、怒って当然だろう?」
「はい!」
折れただけで、ヨルレアンにとっては手伝ったというのが正しかったのだと、エルドールも理解した。
「お前のことも言っていた、『殿下はいつも忙しくしているのに、あなたは何の手伝いもしていないでしょう!殿下が可哀想だわ』だったかな」
「な!」
「よくも公爵令嬢に男爵令嬢が、そんなことは言えるものだわ」
「そのようなことを言っていましたが、きちんと注意をしています」
「ああ、聞いた。もはや、お前がどうこうではなく、その娘の問題だ」
エルドールはきちんとオマリーのことを、両陛下に話してあった。
「頭がどうなっているのか」
「どちらにせよ、もうあの娘は終わりよ。生徒会も外すことになるでしょう」
「当然だと思います」
もはや穏便に済ませる範疇を超えている、生徒会の者も間違いなく良かったというだろう。
「四日後に、トドック男爵夫妻と娘を呼び出す。ヨルレアン嬢も同席する」
「私も、同席させてください」
「お前は…」
同席させるべきか、ダズベルトは首を捻り、オーバンを見ると、オーバンも同様に難しい顔をしていた。
「そうね、あなたは、いて貰いましょうか。でも、今回怒っていいのはヨルレアン嬢だけです。分かっていますね?」
「はい、勿論です」
「そして、陛下が認めた時だけ発言すること。いい?」
「はい」
そして、トドック男爵家に王家から確認したいことがあると呼出状が届き、男爵は慌ててオマリーの寮に向かい、タウンハウスに連れ帰って、どういうことかと問い詰めることになった。
トドック男爵家は領地の邸で祖父母が暮らし、王都に邸がないので、タウンハウスで暮らしており、部屋数も少なく弟と幼い妹が二人おり、騒がしいためにオマリーは寮で暮らしていた。
「ヨルレアン嬢は?」
「もう帰った」
ダズベルトとオーバンだけが、渋い顔でお茶を飲んでいた。
「…な、何の話だったのですか?」
ダズベルトは念のために、従者にエルドールを戻らせるように指示を出していた。
「トドック男爵令嬢が、寄りにもよって、ヨルレアン嬢に『振り返る女』の解読の手伝いをしたと言ったそうだ」
「は?」
「対処すべきだったと、王妃と反省していたところだ」
エルドールがよく見ると、ダズベルトもオーバンも、非常に疲れた様子で暗い。
「どうして、ヨルレアン嬢とトドック男爵令嬢が?」
「学園長に本を返しに行ったそうだ、そこで絡まれたんだ」
「それでヨルレアン嬢が、怒っているということですか?」
やはり間違いだと、しっかりと公表すべきだったのだと、エルドールは感じた。
「ああ、だが我々は公表しないこともだが、どこかで評価など気にしていないから、噂が広まるようなことがなければ、煩わせることはないと思っていた」
「でも、違ったのよ」
「違った?」
「ヨルレアン嬢は、解読者に名前を載せなくていいと言っていたでしょう?」
「ええ」
エルドールは同席したわけではなかったが、二人の頑張りを僅かに見ただけだが、ザッハンデル前伯爵もヨルレアンの意見も理解は出来たが、二人にするべきだと思っていた。
「それをザッハンデル前伯爵が、そんなことは認めないと揉めて、ヨルレアン嬢が折れたのだけど」
「だから、ヨルレアン嬢は言ったんだよ。『手伝ったと言っていいのは、私だけでございます』と」
「…あ」
「儂らは間違えていた。手伝ったということは、ヨルレアン嬢の言葉であるとな」
「だからね、ヨルレアン嬢にとって正しいのは、解読者がザッハンデル前伯爵、手伝ったのがヨルレアン嬢だったのよ」
「それなのに、訳の分からない男爵令嬢が手伝ったなどと、怒って当然だろう?」
「はい!」
折れただけで、ヨルレアンにとっては手伝ったというのが正しかったのだと、エルドールも理解した。
「お前のことも言っていた、『殿下はいつも忙しくしているのに、あなたは何の手伝いもしていないでしょう!殿下が可哀想だわ』だったかな」
「な!」
「よくも公爵令嬢に男爵令嬢が、そんなことは言えるものだわ」
「そのようなことを言っていましたが、きちんと注意をしています」
「ああ、聞いた。もはや、お前がどうこうではなく、その娘の問題だ」
エルドールはきちんとオマリーのことを、両陛下に話してあった。
「頭がどうなっているのか」
「どちらにせよ、もうあの娘は終わりよ。生徒会も外すことになるでしょう」
「当然だと思います」
もはや穏便に済ませる範疇を超えている、生徒会の者も間違いなく良かったというだろう。
「四日後に、トドック男爵夫妻と娘を呼び出す。ヨルレアン嬢も同席する」
「私も、同席させてください」
「お前は…」
同席させるべきか、ダズベルトは首を捻り、オーバンを見ると、オーバンも同様に難しい顔をしていた。
「そうね、あなたは、いて貰いましょうか。でも、今回怒っていいのはヨルレアン嬢だけです。分かっていますね?」
「はい、勿論です」
「そして、陛下が認めた時だけ発言すること。いい?」
「はい」
そして、トドック男爵家に王家から確認したいことがあると呼出状が届き、男爵は慌ててオマリーの寮に向かい、タウンハウスに連れ帰って、どういうことかと問い詰めることになった。
トドック男爵家は領地の邸で祖父母が暮らし、王都に邸がないので、タウンハウスで暮らしており、部屋数も少なく弟と幼い妹が二人おり、騒がしいためにオマリーは寮で暮らしていた。
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