52 / 131
理由を知りたい
しおりを挟む
「それで、どうして私の手伝いにそんなにこだわるのだ?」
「それは、殿下のお役に立ちたくて」
追い込まれたオマリーは、エルドールの目は見れないまま答えたが、それは前にも聞いた答えであった。
「前にも聞いた」
「ですが、それが本当の気持ちで」
十分、殿下に擦り寄っているようにしか見えない状況であるが、オマリーは与えられるのではなく、何も望んでいない、役に立ちたい善意だと、訴えることにした。
「前にも言ったが、私の個人的な手伝いを、君以外にもだが、生徒会の者に頼むことはない」
「でも…」
「理由をハッキリ言ってくれ。何か目的があるんだろう?」
「そんなことはありません」
「何か優遇して欲しいのであれば、王子でしかない私に言われても困る。そのくらい、分かるだろう?」
「そんなことは考えていません」
「手伝って貰いたいことはないと断った、だが君は何度も言いに来る、おかしいとは思わないか?」
結局、違います、そんなつもりではありませんと言い、理由という理由を何も答えないオマリーに、エルドールはあることを思い出した。
「そういえば、オズラール公爵令嬢がやるべきことではないかと言っていたな?私でよければお手伝いしたいと」
その言葉にジュニパーは、いつもの穏やかさは崩れ、眉間に皺を寄せた。
「まさか君が婚約者の代わりだとでも思っていたわけではないよな?」
「そ、そのようなことは思っていません」
オマリーは真っ赤になって、首を振った。
「ならば、なぜオズラール公爵令嬢が、やるべきことではなどと言ったんだ?」
「それは、学園にいらっしゃらないので…殿下がお困りになっているのではないかと…それで」
「困っても、君に頼むことはないし、オズラール公爵令嬢は自分のやるべきことを、きちんと行っている。君に口を出す権利はないと思うが?」
「…っ」
「それとも、権利があるとでも思っているのではないよな?」
「…お、おりません」
初めて見るエルドールの鋭い目つきに、オマリーもいいわけを言うことが出来ず、認めるしかなかった。
「ならば、君が望んでいた手伝いに行くといい。頑張ってくれ」
「…あ、はい」
オマリーはとぼとぼと出て行き、創立記念誌の資料をまとめに向かったが、グイーズ先生に今日は気分が悪いので休ませて欲しいと言って、帰って行った。
オマリーが出て行くと、ジュニパーが声を上げた。
「オズラール公爵令嬢のことをおっしゃっられておりましたの?」
「ああ、前に先ほど言ったようなことを言っていたのだ」
「信じられませんわ、あり得ませんでしょう!私でもそのようなことは口が裂けても言えませんわ、令嬢として教育を受けていないのかしら?」
「ああ…そういった可能性もあるのか」
エルドールは、初めて令嬢としての教育を受けていない可能性に気付いた。
「私もSクラスなのだから、理解していないとは思っておりませんでしたが、今一度、受けて貰った方がよろしいのではありませんか」
「そうだな…グイーズ先生に聞いてみよう」
「それがよろしいですわ」
不愉快だわと言わんばかりに、ジュニパーは怒っていた。
「結局、理由も分かりませんでしたわね。ですが、彼女にとって殿下の手伝いをすることが大事なのでしょう」
「優遇して貰えることがあると思っているのだろうか」
「何をかは分かりませんが、そう思っていらっしゃるのではないでしょうか」
「だが、言わない」
「はい…さすがに言い辛いと思っているのかもしれません」
「そうかもしれぬが、付き合い切れない」
ここまで付き合う必要がないとも思い始めてはいた。
だが、生徒会を何か特別な理由なく外されたとなれば、選ばれるよりも問題があるとされる。エルドールも生徒会長として、折角選ばれた仲間なのだから、穏便に済ませようと思ったからこそである。
「それは、殿下のお役に立ちたくて」
追い込まれたオマリーは、エルドールの目は見れないまま答えたが、それは前にも聞いた答えであった。
「前にも聞いた」
「ですが、それが本当の気持ちで」
十分、殿下に擦り寄っているようにしか見えない状況であるが、オマリーは与えられるのではなく、何も望んでいない、役に立ちたい善意だと、訴えることにした。
「前にも言ったが、私の個人的な手伝いを、君以外にもだが、生徒会の者に頼むことはない」
「でも…」
「理由をハッキリ言ってくれ。何か目的があるんだろう?」
「そんなことはありません」
「何か優遇して欲しいのであれば、王子でしかない私に言われても困る。そのくらい、分かるだろう?」
「そんなことは考えていません」
「手伝って貰いたいことはないと断った、だが君は何度も言いに来る、おかしいとは思わないか?」
結局、違います、そんなつもりではありませんと言い、理由という理由を何も答えないオマリーに、エルドールはあることを思い出した。
「そういえば、オズラール公爵令嬢がやるべきことではないかと言っていたな?私でよければお手伝いしたいと」
その言葉にジュニパーは、いつもの穏やかさは崩れ、眉間に皺を寄せた。
「まさか君が婚約者の代わりだとでも思っていたわけではないよな?」
「そ、そのようなことは思っていません」
オマリーは真っ赤になって、首を振った。
「ならば、なぜオズラール公爵令嬢が、やるべきことではなどと言ったんだ?」
「それは、学園にいらっしゃらないので…殿下がお困りになっているのではないかと…それで」
「困っても、君に頼むことはないし、オズラール公爵令嬢は自分のやるべきことを、きちんと行っている。君に口を出す権利はないと思うが?」
「…っ」
「それとも、権利があるとでも思っているのではないよな?」
「…お、おりません」
初めて見るエルドールの鋭い目つきに、オマリーもいいわけを言うことが出来ず、認めるしかなかった。
「ならば、君が望んでいた手伝いに行くといい。頑張ってくれ」
「…あ、はい」
オマリーはとぼとぼと出て行き、創立記念誌の資料をまとめに向かったが、グイーズ先生に今日は気分が悪いので休ませて欲しいと言って、帰って行った。
オマリーが出て行くと、ジュニパーが声を上げた。
「オズラール公爵令嬢のことをおっしゃっられておりましたの?」
「ああ、前に先ほど言ったようなことを言っていたのだ」
「信じられませんわ、あり得ませんでしょう!私でもそのようなことは口が裂けても言えませんわ、令嬢として教育を受けていないのかしら?」
「ああ…そういった可能性もあるのか」
エルドールは、初めて令嬢としての教育を受けていない可能性に気付いた。
「私もSクラスなのだから、理解していないとは思っておりませんでしたが、今一度、受けて貰った方がよろしいのではありませんか」
「そうだな…グイーズ先生に聞いてみよう」
「それがよろしいですわ」
不愉快だわと言わんばかりに、ジュニパーは怒っていた。
「結局、理由も分かりませんでしたわね。ですが、彼女にとって殿下の手伝いをすることが大事なのでしょう」
「優遇して貰えることがあると思っているのだろうか」
「何をかは分かりませんが、そう思っていらっしゃるのではないでしょうか」
「だが、言わない」
「はい…さすがに言い辛いと思っているのかもしれません」
「そうかもしれぬが、付き合い切れない」
ここまで付き合う必要がないとも思い始めてはいた。
だが、生徒会を何か特別な理由なく外されたとなれば、選ばれるよりも問題があるとされる。エルドールも生徒会長として、折角選ばれた仲間なのだから、穏便に済ませようと思ったからこそである。
4,072
お気に入りに追加
6,569
あなたにおすすめの小説

初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。
豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」
「はあ?」
初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた?
脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ?
なろう様でも公開中です。


【完結済】自由に生きたいあなたの愛を期待するのはもうやめました
鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
伯爵令嬢クラウディア・マクラウドは長年の婚約者であるダミアン・ウィルコックス伯爵令息のことを大切に想っていた。結婚したら彼と二人で愛のある家庭を築きたいと夢見ていた。
ところが新婚初夜、ダミアンは言った。
「俺たちはまるっきり愛のない政略結婚をしたわけだ。まぁ仕方ない。あとは割り切って互いに自由に生きようじゃないか。」
そう言って愛人らとともに自由に過ごしはじめたダミアン。激しくショックを受けるクラウディアだったが、それでもひたむきにダミアンに尽くし、少しずつでも自分に振り向いて欲しいと願っていた。
しかしそんなクラウディアの思いをことごとく裏切り、鼻で笑うダミアン。
心が折れそうなクラウディアはそんな時、王国騎士団の騎士となった友人アーネスト・グレアム侯爵令息と再会する。
初恋の相手であるクラウディアの不幸せそうな様子を見て、どうにかダミアンから奪ってでも自分の手で幸せにしたいと考えるアーネスト。
そんなアーネストと次第に親密になり自分から心が離れていくクラウディアの様子を見て、急に焦り始めたダミアンは─────
(※※夫が酷い男なので序盤の数話は暗い話ですが、アーネストが出てきてからはわりとラブコメ風です。)(※※この物語の世界は作者独自の設定です。)

【完】婚約者に、気になる子ができたと言い渡されましたがお好きにどうぞ
さこの
恋愛
私の婚約者ユリシーズ様は、お互いの事を知らないと愛は芽生えないと言った。
そもそもあなたは私のことを何にも知らないでしょうに……。
二十話ほどのお話です。
ゆる設定の完結保証(執筆済)です( .ˬ.)"
ホットランキング入りありがとうございます
2021/08/08

【完結】自業自得の因果応報
仲村 嘉高
恋愛
愛し愛されて結婚したはずの夫は、モラハラDVな最低男だった。
ある日、殴られて壁に体を叩きつけられ、反動で床に倒れて頭を打ったマリアンヌは、その衝撃で前世を思い出した。
日本人で、ちょっとヤンチャをしていた過去を持った女性だった記憶だ。
男尊女卑の世界に転生したにしても、この夫は酷すぎる。
マリアンヌは、今までの事も含め、復讐する事に決めた。
物理で。
※前世の世代は、夜露死苦な昭和です(笑)

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)
さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】
私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。
もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。
※マークは残酷シーン有り
※(他サイトでも投稿中)

ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる