48 / 51
ご所望の手伝い
しおりを挟む
エルドールはヨルレアンの僅かでも力になりたいと、無意味かもしれないが、画家の資料を集めていた。
ヨルレアンに運ばれた文献はその中にこの前の続き、もしくは画家の手掛かりがないかというものであった。運んで、ヨルレアンが精査している。
別の解読もあるようで、今までとは違い、ゆっくりでいいと言われているので、これまでのように無理をさせることはない。
いや、させてはならない。
王宮で行うことも出来るが、そうなればヨルレアンを都合よく利用しようとした不愉快な者たちと顔を合わせることにもなり兼ねない。
ならば、オズラール公爵邸に運べばいいと、ダズベルト陛下が判断したのである。
エルドールに運ばせようとしたのも、機会をあげようとした、オーバン王妃の案だったが、日程が合わなかった。
そして、現在オマリーの言葉に、エルドールもカイロスもさすがにないと思い、驚くほどであった。ローズマリーは丁度、不在であった。
ローズマリーに怒られたので、いない隙を狙っていたのかもしれない。
「私は今、手伝って貰いたいことは、特にない。そんなに手伝いを希望するなら、先生に聞くといい」
「いえ、私は殿下の手伝いをしたくて!」
オマリーは嬉々とした表情をしながら、エルドールを見ていた。
「なぜ私にこだわる?それとも、先生の手伝いはしたくないということか?」
「いえ、そういうわけではありませんが…」
「ならば、先生に聞くといい」
「はい…」
そう言ったまま、オマリーは先生に聞きに行くこともなく、席に戻った。
エルドールはヴァイオリンの資料の件から、机を離れる時は、机の上には目に入るような物は置かないようにした。
ローズマリーは不在であったために、後から話を聞くことになった。
「本当に、また言って来たんですか…」
「ああ…」
「しかも先生のところはは行かず、席に戻ったんです。行く様子もありませんでした」
「これはグイーズ先生の出番ですね」
すっかりオマリーを心の中で手伝い女と呼んでおり、相手が同じ書記のサージならば分かるが、わざわざエルドールに言いに行くのである。
確かに長(エルドール)に聞きに行くのは、間違いとは言えないのかもしれないが、許せない嘘を付いた後では、印象が全く違う。
エルドールはグイーズ先生に、手伝いたいと言い出したことを伝えた。
「分かりました。文芸部にも声を掛けて手伝って貰うことになりましたから、一緒にやらせましょう」
創立記念誌の資料は早くまとめて置いて問題はなく、オマリーだけにやらされるような形になっては不味いので、既に手配済みであった。
早速、生徒会のある日にグイーズ先生は、ジーディー先生と共に生徒会室に現れた。
「誰か創立記念誌の資料をまとめるのを、文芸部と一緒に手伝っては貰えないかと思いましてね」
「トドック男爵令嬢、求めていた手伝いではないか?」
エルドールではなく、カイロスが告げた。これもエルドールが言えば、殿下に頼まれたと言われ兼ねないところを、カイロスが言えばいいと判断したのである。
「…え」
先生のところに手伝いに行くつもりなどなかったオマリーは驚き、助けて欲しいというような顔をエルドールに向けた。
「そうだな、手伝いいいじゃないか」
「お!殿下、よろしいですか?」
「ええ、こちらは問題ありません。トドック男爵令嬢は、手伝いをしたいと熱心に希望をしておりましたから」
「おお、それは頼もしいです。早速、トドックさん、付いて来てください」
「え、でも、私は」
「オマリー嬢、書記の仕事は私がやって置きますから、行ってください」
サージも事情を知っているので、オマリーを後押しした。
「トドック男爵令嬢、頑張ってくれ」
「…はい」
エルドールに言われてしまえば、行くしかなく、オマリーは文系部の4人と創立記念誌の資料をまとめることになった。
ヨルレアンに運ばれた文献はその中にこの前の続き、もしくは画家の手掛かりがないかというものであった。運んで、ヨルレアンが精査している。
別の解読もあるようで、今までとは違い、ゆっくりでいいと言われているので、これまでのように無理をさせることはない。
いや、させてはならない。
王宮で行うことも出来るが、そうなればヨルレアンを都合よく利用しようとした不愉快な者たちと顔を合わせることにもなり兼ねない。
ならば、オズラール公爵邸に運べばいいと、ダズベルト陛下が判断したのである。
エルドールに運ばせようとしたのも、機会をあげようとした、オーバン王妃の案だったが、日程が合わなかった。
そして、現在オマリーの言葉に、エルドールもカイロスもさすがにないと思い、驚くほどであった。ローズマリーは丁度、不在であった。
ローズマリーに怒られたので、いない隙を狙っていたのかもしれない。
「私は今、手伝って貰いたいことは、特にない。そんなに手伝いを希望するなら、先生に聞くといい」
「いえ、私は殿下の手伝いをしたくて!」
オマリーは嬉々とした表情をしながら、エルドールを見ていた。
「なぜ私にこだわる?それとも、先生の手伝いはしたくないということか?」
「いえ、そういうわけではありませんが…」
「ならば、先生に聞くといい」
「はい…」
そう言ったまま、オマリーは先生に聞きに行くこともなく、席に戻った。
エルドールはヴァイオリンの資料の件から、机を離れる時は、机の上には目に入るような物は置かないようにした。
ローズマリーは不在であったために、後から話を聞くことになった。
「本当に、また言って来たんですか…」
「ああ…」
「しかも先生のところはは行かず、席に戻ったんです。行く様子もありませんでした」
「これはグイーズ先生の出番ですね」
すっかりオマリーを心の中で手伝い女と呼んでおり、相手が同じ書記のサージならば分かるが、わざわざエルドールに言いに行くのである。
確かに長(エルドール)に聞きに行くのは、間違いとは言えないのかもしれないが、許せない嘘を付いた後では、印象が全く違う。
エルドールはグイーズ先生に、手伝いたいと言い出したことを伝えた。
「分かりました。文芸部にも声を掛けて手伝って貰うことになりましたから、一緒にやらせましょう」
創立記念誌の資料は早くまとめて置いて問題はなく、オマリーだけにやらされるような形になっては不味いので、既に手配済みであった。
早速、生徒会のある日にグイーズ先生は、ジーディー先生と共に生徒会室に現れた。
「誰か創立記念誌の資料をまとめるのを、文芸部と一緒に手伝っては貰えないかと思いましてね」
「トドック男爵令嬢、求めていた手伝いではないか?」
エルドールではなく、カイロスが告げた。これもエルドールが言えば、殿下に頼まれたと言われ兼ねないところを、カイロスが言えばいいと判断したのである。
「…え」
先生のところに手伝いに行くつもりなどなかったオマリーは驚き、助けて欲しいというような顔をエルドールに向けた。
「そうだな、手伝いいいじゃないか」
「お!殿下、よろしいですか?」
「ええ、こちらは問題ありません。トドック男爵令嬢は、手伝いをしたいと熱心に希望をしておりましたから」
「おお、それは頼もしいです。早速、トドックさん、付いて来てください」
「え、でも、私は」
「オマリー嬢、書記の仕事は私がやって置きますから、行ってください」
サージも事情を知っているので、オマリーを後押しした。
「トドック男爵令嬢、頑張ってくれ」
「…はい」
エルドールに言われてしまえば、行くしかなく、オマリーは文系部の4人と創立記念誌の資料をまとめることになった。
3,464
お気に入りに追加
6,560
あなたにおすすめの小説
もう一度7歳からやりなおし!王太子妃にはなりません
片桐葵
恋愛
いわゆる悪役令嬢・セシルは19歳で死亡した。
皇太子のユリウス殿下の婚約者で高慢で尊大に振る舞い、義理の妹アリシアとユリウスの恋愛に嫉妬し最終的に殺害しようとした罪で断罪され、修道院送りとなった末の死亡だった。しかし死んだ後に女神が現れ7歳からやり直せるようにしてくれた。
もう一度7歳から人生をやり直せる事になったセシル。
(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?
青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。
けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの?
中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。
いつまでも変わらない愛情を与えてもらえるのだと思っていた
奏千歌
恋愛
[ディエム家の双子姉妹]
どうして、こんな事になってしまったのか。
妻から向けられる愛情を、どうして疎ましいと思ってしまっていたのか。
【完結】我儘で何でも欲しがる元病弱な妹の末路。私は王太子殿下と幸せに過ごしていますのでどうぞご勝手に。
白井ライス
恋愛
シャーリー・レインズ子爵令嬢には、1つ下の妹ラウラが居た。
ブラウンの髪と目をしている地味なシャーリーに比べてラウラは金髪に青い目という美しい見た目をしていた。
ラウラは幼少期身体が弱く両親はいつもラウラを優先していた。
それは大人になった今でも変わらなかった。
そのせいかラウラはとんでもなく我儘な女に成長してしまう。
そして、ラウラはとうとうシャーリーの婚約者ジェイク・カールソン子爵令息にまで手を出してしまう。
彼の子を宿してーー
【完結】婚約破棄した王子と男爵令嬢のその後……は幸せ?……な訳ない!
たろ
恋愛
「エリザベス、君との婚約を破棄する」
「どうしてそんな事を言うのですか?わたしが何をしたと言うのでしょう」
「君は僕の愛するイライザに対して嫌がらせをしただろう、そんな意地の悪い君のことは愛せないし結婚など出来ない」
「……愛せない……わかりました。殿下……の言葉を……受け入れます」
なんで君がそんな悲しそうな顔をするんだ?
この話は婚約破棄をして、父親である陛下に嘘で固めて公爵令嬢のエリザベスを貶めたと怒られて
「そんなにその男爵令嬢が好きなら王族をやめて男爵に婿に行け」と言われ、廃嫡される王子のその後のお話です。
頭脳明晰、眉目秀麗、みんなが振り向くかっこいい殿下……なのにエリザベスの前では残念な男。
★軽い感じのお話です
そして、殿下がひたすら残念です
広ーい気持ちで読んでいただけたらと思います
お飾りな妻は何を思う
湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。
彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。
次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。
そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる