【完結】ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ

文字の大きさ
上 下
40 / 131

シレラーダ伯爵令嬢1

しおりを挟む
 ジーオのおかげか、事実ではないということも、噂になっていたほどでもなかったが、広がっていった。

 耳にした高位貴族もジーオの他にもいたのだが、そんなはずはないと思う者、だから何だ?と思う者、わざわざ噂することはなかっただけであった。

 そもそも、解読がヨルレアンの管轄だと知っている者は、学園を休んでいることで、このために休まれているのではないのかと繋ぎ合わせていた。

 元々、あまり令嬢たちに馴染んでいなかったオマリーは、さらに遠巻きにされるようになった。だが、オマリーにとっては元々、令嬢たちとは必要な際に話をするだけで、気になることではなかった。

 生徒会室では、耳にしている者もいるかもしれないが、一切話題には上がることはなかった。

 ローズマリーはオマリーについて、男爵令嬢が生徒会に選ばれて、調子に乗るのは多少は仕方ないと思っていた。

 エルドール殿下やディンジャー公爵令息に優しくされたことで、さらに調子に乗っているのは、手に取るように分かった。

 詳しくは知らないが、何か特別だと思うようなことがあったのだろうと、だが成績優秀者に入っている令嬢なのだから、そこまで愚かではないだろうと、この時はまだそう考えていた。

 異性にだけボディタッチすることで、令嬢たちから良く思われてないことはローズマリーも目にしたこともあり、知っていたが、だったらボディタッチを止めればいいのに、オマリーは止めなかった。

 密かにジュニパー様と話をして、庇うに値しないと判断したのである。

 だが、今回の珍妙な勘違いとも言えない、恐ろしい所業。

 ヨルレアン様は学園にいらっしゃらなくなってしまったが、可能なら横に付いて、お茶でも入れるくらいしか出来なかっただろうが、させていただけるのであればしたかったくらいである。

 同じ年でありながらも、格の違いを感じたのはヨルレアンだけであった。

 いつも美しくされているが、自分の世界があり、身なりをあまり気にしていない様子も、何だかとても憧れる要素であった。

 声を掛ける立場にはないが、学園に来なくなる前に、顔色が悪かったことが気になっていた。

 エルドールが悪いことは察しているが、ヨルレアンをエルドールが叱り付け、婚約を解消するとまで言ったことを知らない。

 そして、ローズマリーも生きている間に『振り返る女』のモデルが判明するとは思っていなかった。すぐさま、ヨルレアン様が関わっているのではないかと思った。

 だが、公表されなかったことで、友人に簡単に口に出すことは出来ない。ならば、内密に話せる相手に話せばいい。

 オマリーと違って、これが貴族令嬢として、弁えている行動である。

『お兄様、モデルの解読には、オズラール公爵令嬢が関わってらっしゃるのではないでしょうか』
『公表されていないのだから、口にしてはならない』
『分かっております、ですからお兄様に話しているのではありませんか』

 ローズマリーはどうしても、この湧き上がる喜びを、口に出して、誰かと分かち合いたかったのだ。

『そういうことか。おそらく、そう考えていいだろうな。学園を休まれているから、一気に進んだのではないだろうか』
『学園なんていらっしゃらなくていいのです』

 無意味だと言わんばかりに、ローズマリーは強く言い放った。

『重要度を考えれば、そうだろうな』
『なんて素晴らしい方なのでしょうか…お姿は見られなくなりましたが、このような形で感じることが出来るなんて…想像もしていませんでした』

 恍惚とするローズマリーに、兄・グリズバトンは相変わらずだなと口角を上げた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

本日もお読みいただきありがとうございます。

エルドールの兄の名前が間違っており、訂正をしています。
ローレル王太子が正しいです。
申し訳ございませんでした。

どうぞよろしくお願いいたします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。

豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」 「はあ?」 初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた? 脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ? なろう様でも公開中です。

【完結】さよなら私の初恋

山葵
恋愛
私の婚約者が妹に見せる笑顔は私に向けられる事はない。 初恋の貴方が妹を望むなら、私は貴方の幸せを願って身を引きましょう。 さようなら私の初恋。

【完結済】自由に生きたいあなたの愛を期待するのはもうやめました

鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
 伯爵令嬢クラウディア・マクラウドは長年の婚約者であるダミアン・ウィルコックス伯爵令息のことを大切に想っていた。結婚したら彼と二人で愛のある家庭を築きたいと夢見ていた。  ところが新婚初夜、ダミアンは言った。 「俺たちはまるっきり愛のない政略結婚をしたわけだ。まぁ仕方ない。あとは割り切って互いに自由に生きようじゃないか。」  そう言って愛人らとともに自由に過ごしはじめたダミアン。激しくショックを受けるクラウディアだったが、それでもひたむきにダミアンに尽くし、少しずつでも自分に振り向いて欲しいと願っていた。  しかしそんなクラウディアの思いをことごとく裏切り、鼻で笑うダミアン。  心が折れそうなクラウディアはそんな時、王国騎士団の騎士となった友人アーネスト・グレアム侯爵令息と再会する。  初恋の相手であるクラウディアの不幸せそうな様子を見て、どうにかダミアンから奪ってでも自分の手で幸せにしたいと考えるアーネスト。  そんなアーネストと次第に親密になり自分から心が離れていくクラウディアの様子を見て、急に焦り始めたダミアンは───── (※※夫が酷い男なので序盤の数話は暗い話ですが、アーネストが出てきてからはわりとラブコメ風です。)(※※この物語の世界は作者独自の設定です。)

【完】婚約者に、気になる子ができたと言い渡されましたがお好きにどうぞ

さこの
恋愛
 私の婚約者ユリシーズ様は、お互いの事を知らないと愛は芽生えないと言った。  そもそもあなたは私のことを何にも知らないでしょうに……。  二十話ほどのお話です。  ゆる設定の完結保証(執筆済)です( .ˬ.)" ホットランキング入りありがとうございます 2021/08/08

【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します

hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。 キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。 その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。 ※ざまあの回には★がついています。

さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】 私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。 もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。 ※マークは残酷シーン有り ※(他サイトでも投稿中)

婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います

ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」 公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。 本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか? 義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。 不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます! この作品は小説家になろうでも掲載しています

なにひとつ、まちがっていない。

いぬい たすく
恋愛
若くして王となるレジナルドは従妹でもある公爵令嬢エレノーラとの婚約を解消した。 それにかわる恋人との結婚に胸を躍らせる彼には見えなかった。 ――なにもかもを間違えた。 そう後悔する自分の将来の姿が。 Q この世界の、この国の技術レベルってどのくらい?政治体制はどんな感じなの? A 作者もそこまで考えていません。  どうぞ頭のネジを二三本緩めてからお読みください。

処理中です...