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気味が悪い
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「殿下、少しよろしいですか?」
「どうした?」
廊下でエルドールに声を掛けて来たのは、眉間に皺を寄せたローズマリーだった。人気のない場所まで、カイロスと共に移動した。
「オマリー・トドックが、『振り返る女』のモデルの解読を手伝ったと言っているそうですが?」
「は?」
ローズマリーが発している言葉が、頭の中で全く理解が出来ないまま、エルドールは間抜けな顔を晒していた。
「私もまた聞きですが、本人がそのように言っているそうです」
「何を言っているのだ?そんなことがあるわけがないだろう!」
「分かっています、あり得ませんから」
友人からその話を聞いて、ローズマリーは公表されてはいないが、ヨルレアンが関わっているのではないかと思い、ふざけるなよと怒りで震えたくらいである。
「そうだ、あり得ない。手伝いなど」
「私は正しく分かっています。お前は何を言っているのか、分かっているのかと思いましたから」
ローズマリーに聞いて来た友人は、子爵令嬢で、ゆえにヨルレアンが解読していることも知らない。何も知らない生徒は信じるのかと、腹立たしく思った。
「あの資料ではないですか?」
カイロスは、ふとあの時の資料が思い出された。
「まさか、あのヴァイオリンのか?」
「ええ、それで手伝った気になっているとしたら」
「気味が悪いな」
「ヴァイオリンですか?」
ローズマリーは何の話か分からず、口を挟んだ。
「ああ、何を勘違いしたのか、何を見たのか知らないが、私のメモを勝手に見て、ヴァイオリンの資料を渡されたんだ」
「あの絵にヴァイオリンは関係ありませんよね?」
「全くない」
「歌い手だから、関係あると思い込んでいるということでしょうか?」
「は?」
再び、エルドールは間抜けな顔になった。
「いや、公表はされていないが、調べればデザール・ザッハンデル殿とヨルレアン嬢の解読であることは明らかだ」
「やはりオズラール公爵令嬢だったのですね」
「ああ、二人が向き合った結果だ。他の誰の成果でもない」
それでもヨルレアンは自分は手伝っただけだと言ったが、デザールがそれを許されなかった。
公表されていないだけで、ヨルレアンが解読をしたことは、秘密にしなければならないことではない。
「どのくらい広まっているんだ?」
「分かりませんが、殿下やディンジャー様が知らなかったように、高位貴族は知らないのではないでしょうか」
「意図的か?」
「分かりませんが、高位貴族は信じないでしょうから」
「そうなのか?」
エルドールは最近まで、ヨルレアンが解読をしていることすら知らなかった側の人間である。
「ええ、解読に関わっている方や、私のように兄から聞いているような関係性があれば、事実を知っていると思いますから」
「そ、そうか…」
エルドールは改めて、自分の不甲斐なさを実感した。
「だが、何が目的なんだ?」
「優秀だと思われたいということでしょうか?それにしても度が過ぎていると思います。殿下が解読をされたわけでもないのに」
エルドールもカイロスも、その通りだと思った。
ヨルレアンが解読したことが公になっていれば、婚約者であるエルドールを結び付けることもあるかもしれないが、発表されていないのである。
知り合いでもない男爵令嬢がヨルレアンが解読していることなど、知るはずもない。
「確かに殿下が解読したわけではないのに、殿下を手伝ったことが解読に繋がったということであれば、理解に苦しみますね」
「どういうことなんだ?」
エルドールもカイロスもローズマリーも、首を傾けるしかなかった。
「王家から発表されたので、殿下が解読したとでも思っているのでしょうか?」
「まさか…」
「本当に気味が悪いですね」
「だが、不愉快であることは変わりない。父上と母上に相談してみよう」
エルドールは王宮に戻って、すぐに両親に話がしたいと願い出て、オマリーの話を伝えた。
「どうした?」
廊下でエルドールに声を掛けて来たのは、眉間に皺を寄せたローズマリーだった。人気のない場所まで、カイロスと共に移動した。
「オマリー・トドックが、『振り返る女』のモデルの解読を手伝ったと言っているそうですが?」
「は?」
ローズマリーが発している言葉が、頭の中で全く理解が出来ないまま、エルドールは間抜けな顔を晒していた。
「私もまた聞きですが、本人がそのように言っているそうです」
「何を言っているのだ?そんなことがあるわけがないだろう!」
「分かっています、あり得ませんから」
友人からその話を聞いて、ローズマリーは公表されてはいないが、ヨルレアンが関わっているのではないかと思い、ふざけるなよと怒りで震えたくらいである。
「そうだ、あり得ない。手伝いなど」
「私は正しく分かっています。お前は何を言っているのか、分かっているのかと思いましたから」
ローズマリーに聞いて来た友人は、子爵令嬢で、ゆえにヨルレアンが解読していることも知らない。何も知らない生徒は信じるのかと、腹立たしく思った。
「あの資料ではないですか?」
カイロスは、ふとあの時の資料が思い出された。
「まさか、あのヴァイオリンのか?」
「ええ、それで手伝った気になっているとしたら」
「気味が悪いな」
「ヴァイオリンですか?」
ローズマリーは何の話か分からず、口を挟んだ。
「ああ、何を勘違いしたのか、何を見たのか知らないが、私のメモを勝手に見て、ヴァイオリンの資料を渡されたんだ」
「あの絵にヴァイオリンは関係ありませんよね?」
「全くない」
「歌い手だから、関係あると思い込んでいるということでしょうか?」
「は?」
再び、エルドールは間抜けな顔になった。
「いや、公表はされていないが、調べればデザール・ザッハンデル殿とヨルレアン嬢の解読であることは明らかだ」
「やはりオズラール公爵令嬢だったのですね」
「ああ、二人が向き合った結果だ。他の誰の成果でもない」
それでもヨルレアンは自分は手伝っただけだと言ったが、デザールがそれを許されなかった。
公表されていないだけで、ヨルレアンが解読をしたことは、秘密にしなければならないことではない。
「どのくらい広まっているんだ?」
「分かりませんが、殿下やディンジャー様が知らなかったように、高位貴族は知らないのではないでしょうか」
「意図的か?」
「分かりませんが、高位貴族は信じないでしょうから」
「そうなのか?」
エルドールは最近まで、ヨルレアンが解読をしていることすら知らなかった側の人間である。
「ええ、解読に関わっている方や、私のように兄から聞いているような関係性があれば、事実を知っていると思いますから」
「そ、そうか…」
エルドールは改めて、自分の不甲斐なさを実感した。
「だが、何が目的なんだ?」
「優秀だと思われたいということでしょうか?それにしても度が過ぎていると思います。殿下が解読をされたわけでもないのに」
エルドールもカイロスも、その通りだと思った。
ヨルレアンが解読したことが公になっていれば、婚約者であるエルドールを結び付けることもあるかもしれないが、発表されていないのである。
知り合いでもない男爵令嬢がヨルレアンが解読していることなど、知るはずもない。
「確かに殿下が解読したわけではないのに、殿下を手伝ったことが解読に繋がったということであれば、理解に苦しみますね」
「どういうことなんだ?」
エルドールもカイロスもローズマリーも、首を傾けるしかなかった。
「王家から発表されたので、殿下が解読したとでも思っているのでしょうか?」
「まさか…」
「本当に気味が悪いですね」
「だが、不愉快であることは変わりない。父上と母上に相談してみよう」
エルドールは王宮に戻って、すぐに両親に話がしたいと願い出て、オマリーの話を伝えた。
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