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一緒

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「エルドールに本当に気がないのか?」
「そんな風に感じたことはありませんし、ボディタッチも多くの令息にしているそうですから」
「そうなのよね、お兄様目当てなら他の令息にはしないわよね」

 婚約者のいるエルドールに好意を持つことは、好ましいことではないが、オマリーがもしも好意を持っているのならば、他の令息にもボディタッチをしたりしていることは、説明が出来ない。

 その様子に母・オーバンが口を挟んだ。

「全部かもしれないわよ?手柄も欲しい、優秀さも認めて欲しい、エルドールに気に入られれば幸運、頼られる存在だと思われたい」
「ですが、男爵令嬢ですよ?」

 ローレルはいくら生徒会の一員だとしても、男爵令嬢が烏滸がましいことをするとは思えなかった。

「だから、様子がおかしいと言っているのですよ」
「でも、決定的な問題とまではなっていないのですよね?」
「ええ、ボディタッチも腕に触れたり、持ったり程度で、胸を押し付けたりするわけではありませんからね」
「確かにそこまでしていたら、風紀を乱す存在と認定されたでしょうね」

 メイランは、冷静に言い捨てた。

「ええ、まあボディタッチは今でも行っては、謝っているようだから」

 オーバンもエルドールのためではないが、学園側に様子を聞いていた。

「何ですか?それは」
「癖だと言っているそうよ。教師がそのような癖は直さないと、困るのはあなただと伝えてはいるようだけど」
「謝られたら、注意もしにくいわよね」
「そんなところね」

 オーバンは泳がせてみるかとも思ったが、オマリーは注意されることはあっても、決定的に罰される様なことはしていない。男爵家に苦情が入るほどではない状況なのだろうと思っている。

「何がしたいのか、何が目的なのか、理解が出来なかったのです」

 エルドールに頼れる存在になれれば、将来は明るいと思っているのは、オマリーだけではないので、悪いこととは言えないが、さすがに頼んでいないことであったために気分の良いものではなかった。

 黙って聞いていたダズベルトはじろりとエルドールを睨み、咄嗟に分かっていないことを非難されると思った。

「私もお前の話を聞いていて、同じ気持ちだったさ」
「…あ」
「ようやく、私の気持ちが分かったか」
「申し訳ございませんでした」

 エルドールはまさか自分に飛び火するとは思わず、小さくなって謝罪した。

「それで頼まれた方はどうなんだ?」
「それは…全く」
「まあヨルレアンがお前に頼むくらいだから、難航しているのだろう。何かあれば言いなさい、ヨルレアンの力になるなら手を貸す」
「ありがとうございます」

 案にお前のために力を貸す気はないと言っている。

 前のエルドールであれば、どうしてですかと噛みついていたところだが、答えの載っていない問題を解いているようなものだと実感することが出来たエルドールは、素直に受け入れるようになっていた。

「何かあれば、よろしくお願いいたします」
「ああ」

 だが、その何かすらまだ見つかっていない。似たような名前がないわけではないが、近年のことばかりで、さすがにエルドールも関係ないだろうと感じている。

「トドック男爵令嬢には、今後も距離を取ります」
「それがいいわね」

 カイロスともやはり働くのか結婚する気なのかは知らないが、今後のためにもエルドールに重用されていると思われたのだろうかとは話をした。

 だが、頼んでいないことであり、尚且つ見当違いの資料を渡して来て、何がしたいのだろうかという結論になっていた。本来は確認をするべきだが、盗み見たので、出来なかったのだろうということにはなった。

 謎のヴァイオリンの資料は、パラパラと見ただけであったが、確かに上手くまとめられていたが、生徒会室の机の中にそっとしまわれた。

 カイロスとオマリーとは、距離は取り続けることにしようということだけは、意見が一致していた。
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