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馬鹿息子の謝罪4
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「保留のままならばという答えを貰いました」
「そうか」
王宮に戻ったエルドールは両親に、会いに行った。ダズベルトもオーバンも、このところずっとエルドールに向ける視線は情けないというものばかりであったが、今日はちゃんと見てくれている。
「保留でも良かったと思っています。父上も母上も、兄上にも、メイランにも謝罪に伺わせてしまい、申し訳ありませんでした」
メイランはエルドールの妹である、第一王女である。
「ヨルレアン嬢に聞いたのか」
「はい」
「お前は反省していない様子で、謝罪をしても仕方ないと思ったからだ」
「はい、その通りだったと思います」
「おかしなことを言っていた、理解が出来たんだな?」
しょぼくれた様子のエルドールに、ダズベルトはようやくと思わなくはないが、良かったというべきだろうと思った。
ヨルレアンも、婚約が解消となると騒動になることは避けられないために、とりあえずは保留としたのだろうと理解している。
「はい…」
「トドック男爵令嬢の方に、問題があることも分かったのね?」
オーバンは、再度確認して置こうと思った。
「はい、どういうつもりなのかまでは分かりませんが」
「教師の注意が効いていないのは問題ですが、言い寄ったりとかはないのですね?」
「はい、好意を感じたこともありません」
「そう…トドック男爵家も、問題がある家とも思えませんでしたからね」
何らかの理由でエルドールに近付いたのかと、念のために探らせたが、至って普通の男爵家であった。
「ヨルレアン嬢が学園にいないからと、誤解を招くようなことのないように」
「はい」
「そういえば、エルドールのした解読はどうなったの?」
「ヨルレアン嬢に見て貰ったのですが、何一つ合っていませんでした。当たり前ですよね」
「そうでしょうね」
「ヨルレアン嬢はその解読を覚えていたようで、素晴らしかったです」
そう話すエルドールの瞳は、オーバンには輝いているように見えた。
「そ、そう…」
「私も精進します」
「ええ、頑張りなさい」
エルドールは頭を下げて出て行き、ダズベルトとオーバンは顔を見合わせた。
「尊敬したようですね」
「ああ、尊敬させる方が良かったのか?」
「いえ、自分でやってみたからではありませんか?」
「そういうことか、腹が立ってやらせただけだが、良かったのか?」
「ええ、そのようですわね」
ダズベルトはヨルレアンの苦労を知れとは思ったが、あの様子では無理だろうと思っていた。
「この前までヨルレアン嬢を、成績優秀者に入っていないことで、馬鹿にしていた様子だったのに。何なんだ?あいつは…」
「良くも悪くも、素直ですからね…」
ダズベルトが子どもたちに厳しいので、オーバンはなるべく子ども側に寄り添うようにしていたが、さすがに今回のことは味方をする要素がなかった。
「ただの馬鹿じゃないのか?」
「そうとも言いますわね。賢過ぎるヨルレアン嬢には良いのか、悪いのかは…何とも言えませんわね」
「はあ…嘆かわしいことだ」
ダズベルトはいくらエルドールが理解して変わったと言っても、また別の意見を持って、素直に変わる可能性を捨てきれない。
「メイランが男児だったら、メイランを婚約者にするのだがな」
メイランは賢く、正しい意思をきちんと持つ王女に育っており、ヨルレアンのことも元から尊敬しており、今回のことで、エルドールを表立って非難はまだしていないが、バカドールと言っていたほどである。
「ひとまずは、こちらも様子を見ましょう。ヨルレアン嬢はきっと解読に夢中でしょうから」
「そうだな、男爵令嬢は大丈夫なのか?」
「人の心までは分かりませんからね、何か起こせば、ジャスミンに次は苦情を男爵家に入れる様に言って置きますわ」
「それがいいな」
「そうか」
王宮に戻ったエルドールは両親に、会いに行った。ダズベルトもオーバンも、このところずっとエルドールに向ける視線は情けないというものばかりであったが、今日はちゃんと見てくれている。
「保留でも良かったと思っています。父上も母上も、兄上にも、メイランにも謝罪に伺わせてしまい、申し訳ありませんでした」
メイランはエルドールの妹である、第一王女である。
「ヨルレアン嬢に聞いたのか」
「はい」
「お前は反省していない様子で、謝罪をしても仕方ないと思ったからだ」
「はい、その通りだったと思います」
「おかしなことを言っていた、理解が出来たんだな?」
しょぼくれた様子のエルドールに、ダズベルトはようやくと思わなくはないが、良かったというべきだろうと思った。
ヨルレアンも、婚約が解消となると騒動になることは避けられないために、とりあえずは保留としたのだろうと理解している。
「はい…」
「トドック男爵令嬢の方に、問題があることも分かったのね?」
オーバンは、再度確認して置こうと思った。
「はい、どういうつもりなのかまでは分かりませんが」
「教師の注意が効いていないのは問題ですが、言い寄ったりとかはないのですね?」
「はい、好意を感じたこともありません」
「そう…トドック男爵家も、問題がある家とも思えませんでしたからね」
何らかの理由でエルドールに近付いたのかと、念のために探らせたが、至って普通の男爵家であった。
「ヨルレアン嬢が学園にいないからと、誤解を招くようなことのないように」
「はい」
「そういえば、エルドールのした解読はどうなったの?」
「ヨルレアン嬢に見て貰ったのですが、何一つ合っていませんでした。当たり前ですよね」
「そうでしょうね」
「ヨルレアン嬢はその解読を覚えていたようで、素晴らしかったです」
そう話すエルドールの瞳は、オーバンには輝いているように見えた。
「そ、そう…」
「私も精進します」
「ええ、頑張りなさい」
エルドールは頭を下げて出て行き、ダズベルトとオーバンは顔を見合わせた。
「尊敬したようですね」
「ああ、尊敬させる方が良かったのか?」
「いえ、自分でやってみたからではありませんか?」
「そういうことか、腹が立ってやらせただけだが、良かったのか?」
「ええ、そのようですわね」
ダズベルトはヨルレアンの苦労を知れとは思ったが、あの様子では無理だろうと思っていた。
「この前までヨルレアン嬢を、成績優秀者に入っていないことで、馬鹿にしていた様子だったのに。何なんだ?あいつは…」
「良くも悪くも、素直ですからね…」
ダズベルトが子どもたちに厳しいので、オーバンはなるべく子ども側に寄り添うようにしていたが、さすがに今回のことは味方をする要素がなかった。
「ただの馬鹿じゃないのか?」
「そうとも言いますわね。賢過ぎるヨルレアン嬢には良いのか、悪いのかは…何とも言えませんわね」
「はあ…嘆かわしいことだ」
ダズベルトはいくらエルドールが理解して変わったと言っても、また別の意見を持って、素直に変わる可能性を捨てきれない。
「メイランが男児だったら、メイランを婚約者にするのだがな」
メイランは賢く、正しい意思をきちんと持つ王女に育っており、ヨルレアンのことも元から尊敬しており、今回のことで、エルドールを表立って非難はまだしていないが、バカドールと言っていたほどである。
「ひとまずは、こちらも様子を見ましょう。ヨルレアン嬢はきっと解読に夢中でしょうから」
「そうだな、男爵令嬢は大丈夫なのか?」
「人の心までは分かりませんからね、何か起こせば、ジャスミンに次は苦情を男爵家に入れる様に言って置きますわ」
「それがいいな」
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