【完結】ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ

文字の大きさ
上 下
15 / 131

馬鹿息子の観察

しおりを挟む
 翌日からエルドールは、周りを冷静に見てみることにした。

 教室でも、生徒会室でも、皆に平等のつもりでいたが、そうではなかったのではないかと考えるようにした。

 王子ということから、自身のクラスでは用がなければ、自分が話し掛けない限り、クラスメイトも話し掛けて来ることはない。

 生徒会室ではやることも多いので、誰かしらが話している。

 生徒会には副会長にカイロス・ディンジャー公爵令息、書記にサージ・ロックス子爵令息とオマリー・トドック男爵令嬢、会計にトイラン・デーゼア伯爵令息とローズマリー・シレラーダ伯爵令嬢、広報にジュニパー・ヒーロア侯爵令嬢。

 さらに各専門委員長がおり、生徒会を監査する議会もあるが、そちらは外部が担当しており、必要な際に動くことになっている。

 『オマリー嬢』と呼ぶようになったのも、会計であるローズマリー嬢の兄が、エルドールの兄・ローレルと友人で、元々ローズマリー嬢と名前で呼んでいたことで、呼ぶ機会も多いと思うので、トドック男爵令嬢よりオマリー嬢と呼んで欲しいということで、皆で呼ぶことになっただけである。

 ローズマリーこそが、証言を行った令嬢である。

 ジュニパーは広報ということで、生徒会室にいないことも多いので、そんな風に感じたことはないとは証言をしていた。

「殿下、こちらをお願いします」
「ああ」

 いつも通りにオマリー嬢から書類を受け取り、確かに腕に触れることがよくあったかもしれない。呼んでいるだけだと、受け取っていた。

「お疲れですか」
「いや、そんなことはない」
「無理はしないでくださいね」
「ありがとう」

 私もこのようにヨルレアンを労わるべきだったのだろうと、感じていた。会いに行くべきだろうが、許可が出ないような気もしている。

 会ったところで、何を話せばいいのか。

 そして、一週間。生徒会室で気になったのは、オマリー嬢であった。異性にだけ呼びかける際に、腕を持つ行動を毎回ではないが、取っていることが分かった。ローズマリー嬢にはしない。

 ローズマリー嬢は背が高く、身長差から腕を持っても差し支えはない高さだろう。だが、腕に触れることはない。その線引きは、やはり異性だからなのだろう。

 皆が帰り、カイロス・ディンジャーと二人になった。

「カイロス、婚約者から何か言われたか?」
「えっ?」
「オマリー嬢のことで、シックス侯爵令嬢を注意しただろう?何か言われたんじゃないか?」

 勿論、カイロスもジャスミンがオマリーに、キツく当たったことは聞いている。私が話しますと言ったが、エルドールが私が話すと言って、注意をしたのである。

「はい、確かにジャスミンも言い方は厳しかったのかもしれないが、そもそも私のせいだろうと母に叱られました。ですが、腕を持たれるのを止めてくれと、振り払ってもいいものでしょうか?」

 カイロスも母に言われて、腕を持たれることに、違和感を感じ始めていたが、振り払うのはさすがに可哀想だと感じていた。

 カイロスはなるべく、オマリーとは距離を取るようにしていた。

「口頭で伝えた方がいいな。彼女は異性しか腕を持ったりしないことが分かった」
「観察していたのですか?」
「ああ、私も母上に叱られたからな」

 ダズベルトにも散々叱られているが、いつものことなので、特別感がない。

 さらに婚約解消の話までなっているのだが、エルドールは危機感がなかった。

「そうでしたか」
「揉めたのか?いえ、今後は注意すると言いました」
「クラスではどうなんだろうか?」
「クラスでのことは分かりませんが、距離感が近いのではないでしょうか」

 カイロスもエルドールと同じクラスなので、クラスでのことは分からない。

「生徒会のことも考えて、教師に注意して貰うのが一番いいだろう」
「そうですね」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。

豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」 「はあ?」 初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた? 脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ? なろう様でも公開中です。

【完結】さよなら私の初恋

山葵
恋愛
私の婚約者が妹に見せる笑顔は私に向けられる事はない。 初恋の貴方が妹を望むなら、私は貴方の幸せを願って身を引きましょう。 さようなら私の初恋。

【完】婚約者に、気になる子ができたと言い渡されましたがお好きにどうぞ

さこの
恋愛
 私の婚約者ユリシーズ様は、お互いの事を知らないと愛は芽生えないと言った。  そもそもあなたは私のことを何にも知らないでしょうに……。  二十話ほどのお話です。  ゆる設定の完結保証(執筆済)です( .ˬ.)" ホットランキング入りありがとうございます 2021/08/08

【完結済】自由に生きたいあなたの愛を期待するのはもうやめました

鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
 伯爵令嬢クラウディア・マクラウドは長年の婚約者であるダミアン・ウィルコックス伯爵令息のことを大切に想っていた。結婚したら彼と二人で愛のある家庭を築きたいと夢見ていた。  ところが新婚初夜、ダミアンは言った。 「俺たちはまるっきり愛のない政略結婚をしたわけだ。まぁ仕方ない。あとは割り切って互いに自由に生きようじゃないか。」  そう言って愛人らとともに自由に過ごしはじめたダミアン。激しくショックを受けるクラウディアだったが、それでもひたむきにダミアンに尽くし、少しずつでも自分に振り向いて欲しいと願っていた。  しかしそんなクラウディアの思いをことごとく裏切り、鼻で笑うダミアン。  心が折れそうなクラウディアはそんな時、王国騎士団の騎士となった友人アーネスト・グレアム侯爵令息と再会する。  初恋の相手であるクラウディアの不幸せそうな様子を見て、どうにかダミアンから奪ってでも自分の手で幸せにしたいと考えるアーネスト。  そんなアーネストと次第に親密になり自分から心が離れていくクラウディアの様子を見て、急に焦り始めたダミアンは───── (※※夫が酷い男なので序盤の数話は暗い話ですが、アーネストが出てきてからはわりとラブコメ風です。)(※※この物語の世界は作者独自の設定です。)

【完結】自業自得の因果応報

仲村 嘉高
恋愛
愛し愛されて結婚したはずの夫は、モラハラDVな最低男だった。 ある日、殴られて壁に体を叩きつけられ、反動で床に倒れて頭を打ったマリアンヌは、その衝撃で前世を思い出した。 日本人で、ちょっとヤンチャをしていた過去を持った女性だった記憶だ。 男尊女卑の世界に転生したにしても、この夫は酷すぎる。 マリアンヌは、今までの事も含め、復讐する事に決めた。 物理で。 ※前世の世代は、夜露死苦な昭和です(笑)

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。

ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。 ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。 対面した婚約者は、 「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」 ……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。 「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」 今の私はあなたを愛していません。 気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。 ☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。 ☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】 私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。 もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。 ※マークは残酷シーン有り ※(他サイトでも投稿中)

ある王国の王室の物語

朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。 顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。 それから 「承知しました」とだけ言った。 ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。 それからバウンドケーキに手を伸ばした。 カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

処理中です...