上 下
14 / 51

馬鹿息子に自覚を促す2

しおりを挟む
「それは…」
「無自覚だったとしても、あなたがしたことよ?男爵令嬢が不安になっていると思って?責めたのはジャスミン・シックスなのでしょう?」
「はい…」
「しかも、調査によると先ほども言ったように、男爵令嬢は腕を持ったりを、ジャスミンの婚約者であるカイロスにもしているそうです。責めていたのではなく、弁えるように言われていたのです。ジャスミンには言う権利があります」
「…」

 オーバンは本人に聞くのが一番だろうと、シックス侯爵夫人と共に、ジャスミンを呼んで、聞き取りを行った―――。

『エルドールが申し訳なかったわね』
『いえ、言い方は確かに嫌味も多く、厳し過ぎたかもしれません』

 そして、やはりトドック男爵令嬢はジャスミンの婚約者であるカイロスにも、何度もボディタッチを行っていた。

 カイロスも距離感が近いのだろうと、気にしていなかったことから、トドック男爵令嬢に弁えるように話したという。

『名前を呼んだり、砕けた話し方をするようなことはないのですが、やはり気分が悪いものですから』
『それはそうよね』
『オズラール公爵令嬢の側で話したのは、わざと?』
『それは…』

 ジャスミンは罰が悪そうに、口ごもった。

『責めているわけではないから、安心して頂戴』
『は、い…オズラール公爵令嬢も、同じ立場だと思いまして、聞こえればいい、味方してくれたらいいなという気持ちはありました。怒られてしまいましたが』
『それについては、理由を説明させて貰ってもいいかしら?』
『はい…』

 フォローしたいわけではなかったが、ジャスミンもヨルレアンを怒らせたと思っていたら、良くないだろうと思い、頭痛が酷く、体調が悪かったと説明を行った。

『そうでしたか…確かに顔色はあまり良くありませんでした。そんな時に…申し訳ございません』

 ジャスミンですら、顔色の悪いことに気付いていた。それなのに、エルドールは気付きもしなかった。

『いえ、ヨルレアン嬢は気にしていないはずよ』
『それなら良かったです。お休みになられているのも、それが理由ですか?』
『それだけではないのだけど、それも理由ね』
『そうですか、気に障ったのではないかと責任を感じておりました』
『それはないわ』

 ヨルレアンが休んでいることで、気にしていたのなら、話して置いて良かったと思った―――。

 そして、目の前の馬鹿息子。オーバンもすっかりダズベルトと同じで、言いはしないがエルドールではなく、馬鹿息子となっていた。

「自覚が出来たかしら?それとも、その男爵令嬢を泳がせた方がいい?」
「泳がせる…とは?」
「おそらく、調子に乗っているのか、驕っているのか、自分は特別だと思っているのでしょう」
「そのようなことはないと思いますが…」
「じゃあ、泳がせましょうか?決定的なことがあれば、その娘は些細なことで、シックス侯爵家だけでも終わりますよ?いくら成績が良くてもね」
「それは…」

 男爵家がシックス侯爵家を敵にすれば、終わりだろう。

「可哀想とでも思った?」
「い、いえ…」
「立場が強いから何をしてもいいわけではないように、立場が弱いから何をしてもいいわけではないのよ?」
「分かっています」

 分かっていないから話しているんだろうが!と、ダズベルトのように怒鳴りたい気持ちをグッと押さえて、淡々とは現実を話すことにした。

「万が一にも、ヨルレアン嬢を蔑んだ時点で、ヨルレアンがどうでもいいと思っても、家族はそう思いませんよ?本当に終わります。そのくらい、あなたにも分かるでしょう?」
「それは…はい」
「第三者の視点として、観察してごらんなさい。あなたは優しさを勘違いし、視野が狭すぎるわ」
「はい…」
「母は愚か者だと、息子を思いたくないの。分かるわよね?」
「はい」

 エルドールはある意味、素直な男である。ゆえにオーバンに言われた様にしてみようと思った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お飾りな妻は何を思う

湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。 彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。 次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。 そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。

彼女はいなかった。

豆狸
恋愛
「……興奮した辺境伯令嬢が勝手に落ちたのだ。あの場所に彼女はいなかった」

【完結】婚約破棄した王子と男爵令嬢のその後……は幸せ?……な訳ない!

たろ
恋愛
「エリザベス、君との婚約を破棄する」 「どうしてそんな事を言うのですか?わたしが何をしたと言うのでしょう」 「君は僕の愛するイライザに対して嫌がらせをしただろう、そんな意地の悪い君のことは愛せないし結婚など出来ない」 「……愛せない……わかりました。殿下……の言葉を……受け入れます」 なんで君がそんな悲しそうな顔をするんだ? この話は婚約破棄をして、父親である陛下に嘘で固めて公爵令嬢のエリザベスを貶めたと怒られて 「そんなにその男爵令嬢が好きなら王族をやめて男爵に婿に行け」と言われ、廃嫡される王子のその後のお話です。 頭脳明晰、眉目秀麗、みんなが振り向くかっこいい殿下……なのにエリザベスの前では残念な男。 ★軽い感じのお話です そして、殿下がひたすら残念です 広ーい気持ちで読んでいただけたらと思います

(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?

青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。 けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの? 中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。

いつまでも変わらない愛情を与えてもらえるのだと思っていた

奏千歌
恋愛
 [ディエム家の双子姉妹]  どうして、こんな事になってしまったのか。  妻から向けられる愛情を、どうして疎ましいと思ってしまっていたのか。

もう一度7歳からやりなおし!王太子妃にはなりません

片桐葵
恋愛
いわゆる悪役令嬢・セシルは19歳で死亡した。 皇太子のユリウス殿下の婚約者で高慢で尊大に振る舞い、義理の妹アリシアとユリウスの恋愛に嫉妬し最終的に殺害しようとした罪で断罪され、修道院送りとなった末の死亡だった。しかし死んだ後に女神が現れ7歳からやり直せるようにしてくれた。 もう一度7歳から人生をやり直せる事になったセシル。

貴方が側妃を望んだのです

cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。 「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。 誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。 ※2022年6月12日。一部書き足しました。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。  表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。 ※更新していくうえでタグは幾つか増えます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

処理中です...