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馬鹿息子に現実を1
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ヨルレアンは、古代語の解読を行っていたのである。
元々はヨルレアンの祖父、ダリーツの父、レオドラ・オズラール公爵が古代語の学者であった。レオドラに懐いていたヨルレアンは、幼い頃からの英才教育と天賦の才で、素晴らしい能力を開花した。
そこへ元々解読が出来なかった文献や、3年前に地下から見付かった文献もヨルレアンの元へやって来ることになった。
しかも、師とも言えるレオドラ・オズラール公爵は、5年前に急死しており、学者もいるのだが、手伝ってくれると言っても皆が多くの辞書を片手に、ヨルレアンのようには進まない上に、間違いも多い。
ダリーツが出来ない、やりたくないというのも、無理のない解読であった。記憶力と柔軟性のある考えが必要な作業である。
「ですが、私には関係ありません」
「関係ない?ヨルレアン嬢は、顔色が悪くなかったか?」
「え?そんなことはなかったと思いますけど」
正直、エルドールはヨルレアンの顔色など覚えてもいなかった。
「男爵令嬢の瞳には気付くのに、そんなことにも気付かないのか?」
「顔色なんて悪くありませんでした」
言われてみれば、疲れている様子だったようには思うが、あまり顔を合わせていなかったので、些細な変化に気付けるはずがなかった。
「ヨルレアン嬢は寝る間もなく、解読をしてくれていたんだ!それなのに、お前の馬鹿な話に付き合わされて、迷惑だっただろうな!何が婚約者に相応しくない?お前の方がそんなことにも気付けない、配慮が出来ない者じゃないか!」
本当なら第一王子であるサクスデールの婚約者にしたかったが、王太子妃になっては、抱えている者が多すぎると思い、エルドールの婚約者にしたのだが、それが間違いだったか。このクソ馬鹿阿呆愚か者めが!
ダズベルトは見ての通り、穏やかな性格でも口調でもない。それでも馬鹿息子をクソということは、心の中で留めた。
「そんなこと、言われてもいないのに、分かるわけないではありませんか」
「ヨルレアン嬢も、そうだったのではないか?」
「え?」
父は何を言っているのか、エルドールには分からなかった。
「お前の勝手な持論に付き合わされて、自分の言ったことが、全て返って来ておるではないか?違うか?」
「私は良かれと思って」
ヨルレアンの今後のことを考えてのことで、私とヨルレアンでは違う。
「誰に良かれと思ってだ?疲れている彼女を休ませることもなく、お前の良かれとは何だ?」
「それは知らなくて」
「それならヨルレアン嬢だって、その男爵令嬢のことなぞ、知らなくてもおかしくないだろう」
「そ、それは…」
同じクラスで、生徒会の一員ならば、配慮すべきで、優秀なオマリー嬢を当然知っていると思っていた。
「理不尽なのはお前だ!婚約も解消したくもなるわ!」
「私は解消までは考えていません」
書きはしたが王家と公爵家の話であるために、通ることはないと思っていた。あんなものを出して、怒られるのはヨルレアンだと思っていた。
「ヨルレアン嬢が考えておるのだ!」
「は?」
「お前のせいで、ヨルレアン嬢は王子殿下に相応しくないと言われたからと、全ての解読を送り返して来たわ!お前の一筆と共にな!」
「そんな!私のせいだというのですか?」
まさかそんな汚い手を使って来るとは思っていなかった。
「確かに押し付けていた者も、それなりの処分をする。解読はお前がやれ」
「え…私が…?」
王子教育でも、学園でも、特殊過ぎて古代語など習うこともないために、エルドールは文献を見たことがある程度で、解読などどうやればいいのか分からない。
「どうして私が?悪いのはヨルレアンではないですか」
「ヨルレアン嬢は王子の婚約者だから、無理をして行ってくれていたのだぞ?それが相応しくないと言われて、お前ならこれまで通りやるか?」
「そ、それは…」
「だからお前がやればいいと言っているんだぁ!」
元々はヨルレアンの祖父、ダリーツの父、レオドラ・オズラール公爵が古代語の学者であった。レオドラに懐いていたヨルレアンは、幼い頃からの英才教育と天賦の才で、素晴らしい能力を開花した。
そこへ元々解読が出来なかった文献や、3年前に地下から見付かった文献もヨルレアンの元へやって来ることになった。
しかも、師とも言えるレオドラ・オズラール公爵は、5年前に急死しており、学者もいるのだが、手伝ってくれると言っても皆が多くの辞書を片手に、ヨルレアンのようには進まない上に、間違いも多い。
ダリーツが出来ない、やりたくないというのも、無理のない解読であった。記憶力と柔軟性のある考えが必要な作業である。
「ですが、私には関係ありません」
「関係ない?ヨルレアン嬢は、顔色が悪くなかったか?」
「え?そんなことはなかったと思いますけど」
正直、エルドールはヨルレアンの顔色など覚えてもいなかった。
「男爵令嬢の瞳には気付くのに、そんなことにも気付かないのか?」
「顔色なんて悪くありませんでした」
言われてみれば、疲れている様子だったようには思うが、あまり顔を合わせていなかったので、些細な変化に気付けるはずがなかった。
「ヨルレアン嬢は寝る間もなく、解読をしてくれていたんだ!それなのに、お前の馬鹿な話に付き合わされて、迷惑だっただろうな!何が婚約者に相応しくない?お前の方がそんなことにも気付けない、配慮が出来ない者じゃないか!」
本当なら第一王子であるサクスデールの婚約者にしたかったが、王太子妃になっては、抱えている者が多すぎると思い、エルドールの婚約者にしたのだが、それが間違いだったか。このクソ馬鹿阿呆愚か者めが!
ダズベルトは見ての通り、穏やかな性格でも口調でもない。それでも馬鹿息子をクソということは、心の中で留めた。
「そんなこと、言われてもいないのに、分かるわけないではありませんか」
「ヨルレアン嬢も、そうだったのではないか?」
「え?」
父は何を言っているのか、エルドールには分からなかった。
「お前の勝手な持論に付き合わされて、自分の言ったことが、全て返って来ておるではないか?違うか?」
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「誰に良かれと思ってだ?疲れている彼女を休ませることもなく、お前の良かれとは何だ?」
「それは知らなくて」
「それならヨルレアン嬢だって、その男爵令嬢のことなぞ、知らなくてもおかしくないだろう」
「そ、それは…」
同じクラスで、生徒会の一員ならば、配慮すべきで、優秀なオマリー嬢を当然知っていると思っていた。
「理不尽なのはお前だ!婚約も解消したくもなるわ!」
「私は解消までは考えていません」
書きはしたが王家と公爵家の話であるために、通ることはないと思っていた。あんなものを出して、怒られるのはヨルレアンだと思っていた。
「ヨルレアン嬢が考えておるのだ!」
「は?」
「お前のせいで、ヨルレアン嬢は王子殿下に相応しくないと言われたからと、全ての解読を送り返して来たわ!お前の一筆と共にな!」
「そんな!私のせいだというのですか?」
まさかそんな汚い手を使って来るとは思っていなかった。
「確かに押し付けていた者も、それなりの処分をする。解読はお前がやれ」
「え…私が…?」
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「どうして私が?悪いのはヨルレアンではないですか」
「ヨルレアン嬢は王子の婚約者だから、無理をして行ってくれていたのだぞ?それが相応しくないと言われて、お前ならこれまで通りやるか?」
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