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馬鹿息子は持論を展開する

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「なぜですか?彼女は生徒会の一員で、大変優秀な令嬢です。その彼女が困っているというのに、うるさいなどと怒鳴るなど理解が出来ません」
「お前はその令嬢になぜそこまで肩を持つのだ?」

 ダズベルトは報告は受けていないが、まさかその令嬢と恋仲にでもなっているというのか?と、急に不安になった。

「ですから、生徒会の大切な仲間ですから」
「その令嬢と妙な仲になっているのではないだろうな?」
「ち、違います!」

 ダズベルトは疑うように、エルドールをじっと見据えた。

「本当に、生徒会の仲間です」
「お前にヨルレアン嬢に怒鳴られたと泣き付いたのか?」
「いえ、言い掛かりを付けられたと聞いて、泣いていたのです」
「泣いていた?」

 泣いていたことで、庇護欲でもそそられたのか?ハニートラップについては学ばせてあるはずだが、女性には優しくとでも言われて、勘違いでもしているのか?

「はい、目を赤くしていたので、どうしたのか聞いたのです」
「で、何の言い掛かりなんだ?」
「はい、彼女は男爵令嬢でありながら、Sクラスで、生徒会にも書記として入ったことで、調子に乗るなとジャスミン・シックス侯爵令嬢たちに言われたようで」
「ああ」

 ありがちな話ではあるだろうが、女性同士の洗礼くらいのものだろう。

 しかも男爵令嬢ならば、影で泣くなとまでは言わないが、弁えているはずである。弁えていないのであれば、貴族社会では生きて行けない。

 おかげでダズベルトも、ジルファンド侯爵もそのような言い合いに、どうしてヨルレアン嬢が関わらなくてはならないのかと、脱力しそうになった。

「シックス侯爵令嬢に言うのは分かるが、なぜヨルレアン嬢が庇わなくてはならない?それは理不尽だろう」
「シックス侯爵令嬢には、注意しました。ヨルレアン嬢は目の前で、クラスメイトが困っているのに、怒鳴ったのですよ?」

 なぜそこまで問題にするのか、ダズベルトは未だに理解出来ないままであった。

「余程、うるさかったのだろう?ヨルレアン嬢は無暗に怒るような質ではない」
「ですが、実際に怒鳴っています」
「はあ…それで、なぜ婚約解消などという話になったのだ?」

 馬鹿息子の話が進まない様に、核心を聞くことにした。

「私は前からそういった配慮の出来ないことを、不満に思っておりました。注意をして、これからは大切な仲間に、クラスメイトに気を配る程度のつもりで、婚約を考えなければならないと言ったら、彼女がしましょうと、一筆書くように言われて」
「あ、ああ…」

 ダズベルトがジルファンド侯爵を見ると、目をギュッと瞑ってしまっている。

 ヨルレアン嬢なら受け入れるだろう。

 しかも、押し付けられているような状況で、近くで騒いでいたら、怒鳴りたくもなる。そんなことを咎められて、不愉快だっただろう。

「ヨルレアン嬢はその男爵令嬢と知り合いなのか?紹介したのか?」
「いえ、紹介はしていませんが、私が生徒会長を務める生徒会の一員ですから」
「知っていて当たり前とでも思っているのか?男爵令嬢を?」
「そ、それは、彼女も分かってはいない様子でしたが…」
「知らなくて当然だ」
「クラスメイトですよ?」
「そんなもの、お前の勝手な考えだろう!はあ…愚かしい」

 ダズベルトが怒っているのは、エルドールにとって珍しいことではないために、慣れてしまっており、また怒っているくらいにしか思っていなかった。

「なぜ、私が書いた物が送り付けられているのです?」
「分からんのか!」
「自らの落ち度を晒すようなものではありませんか」
「落ち度を晒しているのは、お前だ!馬鹿息子が!」

 ダズベルトは、エルドールをもはや一度も名前で呼んでいない。

「私が悪いのですか?」
「お前はヨルレアン嬢が何を担っているのか、分かっていないのか?」
「古代語ですか?まだしていたのですか?」
「当たり前だ!馬鹿者がぁ!!」
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