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父は馬鹿息子が理解が出来ない

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 ヨルレアンから文献とエルドールが婚約解消したいと書かれた紙が、送り返されて来たが、どういうことかと問い合わせが入り、宰相であるザイル・ジルファンド侯爵が代表して、ダズベルト陛下に訊ねにやって来た。

「どういうことだ?」
「オズラール公爵令嬢から、文献とこちらの第二王子殿下が書かれた婚約解消を望むことが書かれた紙が、送り返されているのです」
「婚約解消って何だ?」
「陛下もご存知なかったのですか?」
「知らん」

 昨日もエルドールと夕食を共にしたが、何も言ってはいなかった。

「殿下から婚約者に相応しくないと言われましたので、ご期待に沿えず、誠に申し訳ございませんと書かれておりました」
「何だと!」
「馬鹿息子は何を言っておるのだ!」

 そうですねとはさすがに言えず、ジルファンド侯爵は沈黙するしかなかった。

「ダリーツから話をしたいことがあるからと、明日、会うことになっているが…そういうことなのか?」
「おそらく、そうでしょう」
「オズラール公爵令嬢は、学園を休んでいるそうです。実は皆が急かすように言っていたことが分かりまして、それが重なっていたことも判明しました…あれでは寝る時間も、学園にも行く時間もなかったはずです。ですが学園には通われていたそうなので、おそらく学園でも作業をされていたのでしょう」
「っな」
「頼り過ぎたと思います」

 そのような状況になっていたなんて、知らなかったなどと言っていたが、他にも頼まれていると言っていたのにも関わらず、押し付けていたことも分かっている。

「そうだな…休むのはいいが、エルドールは何をしておるのだ?馬鹿なのか?阿呆なのか?エルドールが学園から戻ったら、すぐ来るように言いなさい」
「は!」

 従者にすぐさま伝え、エルドールが帰って来るのを待つことになった。

 エルドールはいつも通り、生徒会室に行こうとしたが、従者の『陛下がお呼びです』という言葉で、王宮に帰ることになった。

「ただいま、戻りました」
「馬鹿息子、いや、阿呆息子か?何か言うことがあるだろう?なぜ言わなかった!愚か者めが!」

 一言目で馬鹿、阿呆、愚か者、既に他にあるのかというほどである。ジルファンド侯爵も、説明のために同席している。

「どういうことでしょうか?」
「ヨルレアン嬢のことだ」
「はい、婚約解消を考えなくてはならないとは伝えました」

 エルドールもヨルレアンのことだろうとは考えていた。

 オズラール公爵から、苦情が入ったのだろうと思ったが、エルドールは悪いのはヨルレアンだと思っているので、恥じることなく答えた。

「書いただろう?」
「はい、公爵に話をするというので」
「それが方々に送り付けられている」
「はい?」

 自分が悪いというのに、どうして送り付けているのか、訳が分からなかった。

「相応しくないなどと言ったそうだな?」
「はい、ですが」
「ですが?」

 この馬鹿息子は何をいいわけしようとしているのだと、眉間に皺を寄せた。

「はい、王子の婚約者として、至らないために注意したのです」
「注意?」
「はい、クラスメイトが目の前で言い掛かりを付けられているのに、うるさいと怒鳴ったのです」
「だから、何だ?」

 ダズベルトはヨルレアンが無暗に怒る質ではないことは知っており、余程うるさかったということだろうとしか思えなかった。

「私の婚約者で、クラスメイトが困っているのなら、公爵令嬢という立場でも、庇うべきではありませんか?彼女にはそういった気遣いが出来ないのです」

 馬鹿息子が何を言っているのか、さっぱり理解が出来なかった。

「ヨルレアン嬢は、その言い掛かりに関係があるのか?」
「ありませんが、休憩時間に目の前で言われているのですよ?」
「宰相、馬鹿息子が何を言っているのか、理解が出来るか?」
「い、いえ…」

 宰相も怒鳴ったことも、庇うことにも、首を傾けるしかなかった。
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