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父は理解が出来ない
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邸に帰ると本邸の執事に、お父様に話があるから、時間が出来たら呼びに来てもらうように頼んだ。そして、それまですることは一択であった。
寝る。
そう、人としての限界に達していたのは、寝ていないことであった。
ベットに飛び込み、目を瞑ると、そのまま落ちる様に眠りについた。
ここ1週間は、特に酷く、睡眠時間は2~3時間で、昨日と一昨日は少し横になっただけで寝ておらず、食欲もなくなり、すっかり体重も減っていた。
寝ないと人間は、些細なことで苛立つ。思考能力もかなり低くなる。頭痛、倦怠感、それでも、やらざる得なかった。だから、学園でも行っていたのだ。
だが、もうやる気はない。やる理由もない。
1時間すると執事が呼びに来て、ヨルレアンは飛び起きた。眠いが、起きなければいけないという癖がついており、ハッとした。
だが、たった1時間でも寝たことで、多少落ち着いたこともあるが、すっきりしていたのは、婚約が解消になるからに他ならない。
応接室で待っていた父であるダリーツ・オズラールは、何かあったのだろうと身構えていた。
「何があった?」
「エルドール第二王子殿下が、私との婚約を解消したいということでしたので、一筆書いていただきました」
エルドールに書いて貰った紙を出すと、ダリーツは目を丸くした。
「は?」
「私は相応しくないそうです」
「なぜ、そのような話になったのだ?」
「教室で休憩時間に、寝ていなくてイライラして、うるさかったので怒鳴ったら、そんな話になりました」
「は?」
ヨルレアンはネチネチ、ネチネチと文句を言うことはあっても、怒鳴るようなことはまずない。
「その中にいた令嬢は殿下と同じ生徒会の方だったそうで、何か揉めていたそうです。殿下曰く、大変優秀な令嬢だと、私と同じクラスなのですから、優秀なのは当然でしょう?」
Sクラス2クラスあるが、他のクラスよりも人数が少ない。
エルドールはもう1つのSクラスにおり、ヨルレアンとは別のクラスである。
「意味が分からないのだが?」
思考能力の落ちているヨルレアンの説明が、的確ではないこともあるが、ダリーツはなぜそのような話になったのか、聞いていても意味が分からない。
「その方を殿下からすれば、生徒会の方だからなのか知りませんけど、私が庇うべきだと思っているようでした。何の話をしていたかも知りませんのに」
「まあ、ヨルはそうだろうな…」
ヨルレアンがそんな揉め事に興味がないことは、父である公爵は理解している。
「なぜか私に謝れだの言われて、確かに怒鳴ったのは私的な理由で、理不尽だったでしょう。そこは謝りましたわ、でもまだ足りないようなことを言われて、お父様は分かります?」
「分からない。ヨルはその揉め事?には関わっていないのだな?」
「関わるわけないでしょう」
「そうだよな…」
聞いてもいないような、揉め事に突っ込んでいくような面倒なことを、するはずがない。怒鳴ったのは予想外ではあるが、うるさいと思って終わりだろう。
「殿下は何がしたいのだ?」
「殿下の気持ちなど分かりませんが、私を咎めることで、オマリー嬢に格好いいところでも、見せたかったのでは?」
「は?」
「横に並んで座って、潤んだ大きな瞳で見られて、腕を持たれておりましたわよ?心の中ではウヘヘとでも、思っていたのではありませんか?知りませんけど」
「な!そもそも、オマリー嬢って誰だ?」
オマリー嬢などどこの誰で、どうでもいいが、殿下と関係があるのであれば、問題しかない。殿下に親しい関係の令嬢がいるというのか?
「トドック男爵家の令嬢です」
「男爵家?殿下とその男爵家の娘が、親しくしているのか?」
「そんなこと知りませんわよ、オマリー嬢をしっかり見たのは今日が初めてですし」
「それもそうか」
いくら優秀で同じクラスだとしても、トドック男爵家と関わりもなければ、男爵令嬢が公爵令嬢に話し掛けられるはずもない。
寝る。
そう、人としての限界に達していたのは、寝ていないことであった。
ベットに飛び込み、目を瞑ると、そのまま落ちる様に眠りについた。
ここ1週間は、特に酷く、睡眠時間は2~3時間で、昨日と一昨日は少し横になっただけで寝ておらず、食欲もなくなり、すっかり体重も減っていた。
寝ないと人間は、些細なことで苛立つ。思考能力もかなり低くなる。頭痛、倦怠感、それでも、やらざる得なかった。だから、学園でも行っていたのだ。
だが、もうやる気はない。やる理由もない。
1時間すると執事が呼びに来て、ヨルレアンは飛び起きた。眠いが、起きなければいけないという癖がついており、ハッとした。
だが、たった1時間でも寝たことで、多少落ち着いたこともあるが、すっきりしていたのは、婚約が解消になるからに他ならない。
応接室で待っていた父であるダリーツ・オズラールは、何かあったのだろうと身構えていた。
「何があった?」
「エルドール第二王子殿下が、私との婚約を解消したいということでしたので、一筆書いていただきました」
エルドールに書いて貰った紙を出すと、ダリーツは目を丸くした。
「は?」
「私は相応しくないそうです」
「なぜ、そのような話になったのだ?」
「教室で休憩時間に、寝ていなくてイライラして、うるさかったので怒鳴ったら、そんな話になりました」
「は?」
ヨルレアンはネチネチ、ネチネチと文句を言うことはあっても、怒鳴るようなことはまずない。
「その中にいた令嬢は殿下と同じ生徒会の方だったそうで、何か揉めていたそうです。殿下曰く、大変優秀な令嬢だと、私と同じクラスなのですから、優秀なのは当然でしょう?」
Sクラス2クラスあるが、他のクラスよりも人数が少ない。
エルドールはもう1つのSクラスにおり、ヨルレアンとは別のクラスである。
「意味が分からないのだが?」
思考能力の落ちているヨルレアンの説明が、的確ではないこともあるが、ダリーツはなぜそのような話になったのか、聞いていても意味が分からない。
「その方を殿下からすれば、生徒会の方だからなのか知りませんけど、私が庇うべきだと思っているようでした。何の話をしていたかも知りませんのに」
「まあ、ヨルはそうだろうな…」
ヨルレアンがそんな揉め事に興味がないことは、父である公爵は理解している。
「なぜか私に謝れだの言われて、確かに怒鳴ったのは私的な理由で、理不尽だったでしょう。そこは謝りましたわ、でもまだ足りないようなことを言われて、お父様は分かります?」
「分からない。ヨルはその揉め事?には関わっていないのだな?」
「関わるわけないでしょう」
「そうだよな…」
聞いてもいないような、揉め事に突っ込んでいくような面倒なことを、するはずがない。怒鳴ったのは予想外ではあるが、うるさいと思って終わりだろう。
「殿下は何がしたいのだ?」
「殿下の気持ちなど分かりませんが、私を咎めることで、オマリー嬢に格好いいところでも、見せたかったのでは?」
「は?」
「横に並んで座って、潤んだ大きな瞳で見られて、腕を持たれておりましたわよ?心の中ではウヘヘとでも、思っていたのではありませんか?知りませんけど」
「な!そもそも、オマリー嬢って誰だ?」
オマリー嬢などどこの誰で、どうでもいいが、殿下と関係があるのであれば、問題しかない。殿下に親しい関係の令嬢がいるというのか?
「トドック男爵家の令嬢です」
「男爵家?殿下とその男爵家の娘が、親しくしているのか?」
「そんなこと知りませんわよ、オマリー嬢をしっかり見たのは今日が初めてですし」
「それもそうか」
いくら優秀で同じクラスだとしても、トドック男爵家と関わりもなければ、男爵令嬢が公爵令嬢に話し掛けられるはずもない。
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