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第25話
破滅を抱いて眠れ6(セントリア王国)
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「そうだったとしても、事実は一つだろう?勝手に年齢を決め、下心を持って十一歳の私に対峙した。非常に不愉快であった」
セナリアンはあの声を掛けた時も、そういったはずだ。それで引かない愚か者には容赦する気はなかった。
「お前が十一歳で、知らぬ者に声を掛けられたらどうだ?」
「それは…」
見えなかったからという答えは通用しないことは分かっているために、何も答えられなかった。
「お前の主は当時は違うとしても、現在は娘がいるだろう?」
その言葉に喉がひゅっと鳴った。そのようなことは伝えていない、イェスペル様が伝えたのだろうか。いや、そうではない気がする。
「同じことをされたらどうだ?想像力もないのか?」
「っ、ですが、本当に話をしたかっただけなのです。信じてください」
「阿呆らしい。騙されると思っているのか?」
「騙す?騙すとはどういう意味でしょうか?」
ノディエルは泣いていいと言われたら、泣いてしまいそうなほどであった。
後ろに控えている、お付きの方の目も先ほどとは変わって、非常に鋭くなっており、殺れと言われたら躊躇なく殺る顔をしている。
魔力差があり過ぎるので、ノディエルには二人がどの程度の力があるのかすら分かっていない。そもそも、セナリアンとジョンラも魔力を隠している状態で、鑑定などしようとしたら、跳ね返されて深手を負うだけである。
「お前たちは私を所詮、女だと見ていただろう?手籠めにすればいいと思っていただろう?手に入れれば、役に立つと考えていただろう?」
「そのようなことはありません」
その言葉にお付きの方が、殺気立ち始めていた。
「ちょっと~殺生をする気はないわ」
魔術師はお付きの方に気付き、振り返って話し掛けている。
「ですが」
「こいつ等は毎日、破滅を抱いて勝手に眠ればいいのよ」
「さようでございますね」
「あと、簡単に死ぬから、抑えなさい」
「失礼しました」
ノディエルは不穏な会話に、カラカラになった口であったが、微かな唾液を飲み込んだ。さすがに魔法省の魔術師に勝てるとは思っていない。だからこそ、膝をついて、謝罪をしているのだ。
そして、魔術師は何もなかったように再び、ノディエルに向き直った。
「自分に誘われて喜ばない女性はいない、甘い言葉で誑かし、関係を持てば魔法省でも文句はないだろうと主と考えた。色男は奢った考えを持つのだな、愚かしい!そして、気持ちが悪い!」
「そのようなことは、考えておりません!」
否定するしかないと、すぐさま強く否定したが、魔術師は鼻で笑った。
「証拠を出してもいいぞ?そうなれば、お前たちは十一歳の子を手籠めにしようとしたことが公になる、いいのか?娘は父親を嫌悪するだろうな?離縁となるかもしれないな?変態野郎が父親ではお先真っ暗だ」
「…」
本当に証拠があるというのだろうか、確かにエーランドとそのような話はしたが、二人きりであった。何か仕掛けていたのだろうか。それとも、脅しなのだろうか。
だが、どちらにせよ、もし出されたら終わることは分かる。
魔術師の声は先ほどの邸と変わらないのに、呼吸が勝手に浅くなり、拷問を受けているような気持ちになっていた。
「多夫多妻がこのような貞操観念になるのか?やはり理解できん。このまま去って、関わるな、分かるな?でなければ私は忙しい身の上だが、全力で動くぞ?以後、陞爵は完全になくなるであろうな?それとも、潰した方がいいか?」
「も、申し訳ございませんでした!」
「去れ!愚か者が!」
何処の国か分からないが、爵位の高い方に睨まれることも問題だが、それ以上に魔法省が関わって来たら、アンデション家だけの問題ではなくなる。
ノディエルは痺れた足で、慌てて立ち上がって、逃げ帰るしかなかった。
セナリアンはあの声を掛けた時も、そういったはずだ。それで引かない愚か者には容赦する気はなかった。
「お前が十一歳で、知らぬ者に声を掛けられたらどうだ?」
「それは…」
見えなかったからという答えは通用しないことは分かっているために、何も答えられなかった。
「お前の主は当時は違うとしても、現在は娘がいるだろう?」
その言葉に喉がひゅっと鳴った。そのようなことは伝えていない、イェスペル様が伝えたのだろうか。いや、そうではない気がする。
「同じことをされたらどうだ?想像力もないのか?」
「っ、ですが、本当に話をしたかっただけなのです。信じてください」
「阿呆らしい。騙されると思っているのか?」
「騙す?騙すとはどういう意味でしょうか?」
ノディエルは泣いていいと言われたら、泣いてしまいそうなほどであった。
後ろに控えている、お付きの方の目も先ほどとは変わって、非常に鋭くなっており、殺れと言われたら躊躇なく殺る顔をしている。
魔力差があり過ぎるので、ノディエルには二人がどの程度の力があるのかすら分かっていない。そもそも、セナリアンとジョンラも魔力を隠している状態で、鑑定などしようとしたら、跳ね返されて深手を負うだけである。
「お前たちは私を所詮、女だと見ていただろう?手籠めにすればいいと思っていただろう?手に入れれば、役に立つと考えていただろう?」
「そのようなことはありません」
その言葉にお付きの方が、殺気立ち始めていた。
「ちょっと~殺生をする気はないわ」
魔術師はお付きの方に気付き、振り返って話し掛けている。
「ですが」
「こいつ等は毎日、破滅を抱いて勝手に眠ればいいのよ」
「さようでございますね」
「あと、簡単に死ぬから、抑えなさい」
「失礼しました」
ノディエルは不穏な会話に、カラカラになった口であったが、微かな唾液を飲み込んだ。さすがに魔法省の魔術師に勝てるとは思っていない。だからこそ、膝をついて、謝罪をしているのだ。
そして、魔術師は何もなかったように再び、ノディエルに向き直った。
「自分に誘われて喜ばない女性はいない、甘い言葉で誑かし、関係を持てば魔法省でも文句はないだろうと主と考えた。色男は奢った考えを持つのだな、愚かしい!そして、気持ちが悪い!」
「そのようなことは、考えておりません!」
否定するしかないと、すぐさま強く否定したが、魔術師は鼻で笑った。
「証拠を出してもいいぞ?そうなれば、お前たちは十一歳の子を手籠めにしようとしたことが公になる、いいのか?娘は父親を嫌悪するだろうな?離縁となるかもしれないな?変態野郎が父親ではお先真っ暗だ」
「…」
本当に証拠があるというのだろうか、確かにエーランドとそのような話はしたが、二人きりであった。何か仕掛けていたのだろうか。それとも、脅しなのだろうか。
だが、どちらにせよ、もし出されたら終わることは分かる。
魔術師の声は先ほどの邸と変わらないのに、呼吸が勝手に浅くなり、拷問を受けているような気持ちになっていた。
「多夫多妻がこのような貞操観念になるのか?やはり理解できん。このまま去って、関わるな、分かるな?でなければ私は忙しい身の上だが、全力で動くぞ?以後、陞爵は完全になくなるであろうな?それとも、潰した方がいいか?」
「も、申し訳ございませんでした!」
「去れ!愚か者が!」
何処の国か分からないが、爵位の高い方に睨まれることも問題だが、それ以上に魔法省が関わって来たら、アンデション家だけの問題ではなくなる。
ノディエルは痺れた足で、慌てて立ち上がって、逃げ帰るしかなかった。
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