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第25話
破滅を抱いて眠れ4(セントリア王国)
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皆は顔見知りのようであったが、イェスペルが魔法省の魔術師だと紹介すると、エーランドは目を見張った。
セントリア王国では同じ認識としているために、セナリアンがあの時、声を掛けた人間と同じ魔術師だと気付くことは出来る。
「ご無沙汰しております、魔術師殿。以前は大変申し訳なかった」
エーランドは頭を下げるわけでもなく、顔を申し訳なかったと造るわけでもなく、口だけで謝罪した。
「お知り合いでしたか」
「いや、こちらが一方的にというところだ」
セナリアンは姿勢も表情も崩すことなく、エーランドとノデュエルを見据えた。
「ああ、あの時の。謝罪は不要です」
アンデションという姓に引っ掛かったのは、こいつ等だったかと、セナリアンはようやく合点がいった。
「はあ、随分嫌われたものだ」
エーランドはオーバーに嘆くようなそぶりを見せた。
「本当に悪いと思ってらっしゃいますか?注意されたから、悪いことだと思っているだけではないですか?」
「魔術師様っ!」
イェスペルはエーランドが人の良さそうな顔をして、容赦のないことをよく知っている。折角お誘いしたのに、何かあってはならないと、庇おうとしたのは魔術師の方であったが、それは間違いだったと後に気付くことになる。
「本当に思っている、弟と知り合いだったのか」
「今日、出会ったばかりです。ルディーの商品を買ってくれた縁でお誘いしました」
「そうだったのか、それなら今後は我々とも親しくしていただけるだろうか」
エーランドは当たり前であるかのように、セナリアンに問うた。
「魔法省の魔術師の素性を調べるとは…この国はどうなっているのでしょうか?私は一度、忠告したはずですが?イェスペル殿、この方は記憶喪失ですか?」
「いえ、記憶喪失ではありません。ですが、兄は伯爵です」
だから何だと言いたかったが、イェスペルに告げることではない。
「そのようなことはしておらぬ、証拠でもあるのか」
「はあ…この国は身分がものをいうのも、考えものですね」
セントリアは特別多い者はいるが、大半は魔力差がほとんどないため、爵位による階級が厳しく、親しくなれば別だが、爵位が一つでも違えば、エメラルダ王国よりも、必要以上に敬意を払うというのが礼儀である。
「ねえ?掴んでいるから、そのような態度なのでしょう?非常にはしたないことであると、理解していますか?」
黙って控えていたジョンラは、セナリアンの『ねえ?』という言葉に、これは相当怒っている相手であると見守ることを決めた。
「男爵家ではないのでしょうか…」
「ほらみろ、急に態度を変えたな。まあいい、男爵家ではない、爵位だけで言えば、生まれがお前の伯爵より上だよ。あの当時、声を掛けた時点で、この国なら不敬だな。違うか?」
セナリアンの丁寧な話し方が一変した。
「さあ、これ以上に態度を変えられるか?地べたを這いつくばるか?」
その場は先ほどまで楽しそうに話していた魔術師殿の姿と、非常にまずい状況のエーランドに凍り付いていた。エーランドの伯爵家という立場ですら、本来なら気軽な相手ではない。
だが、完全に魔術師の威圧感にエーランドは脂汗をかいている。
爵位に加えて、魔法省の魔術師である。男爵家の令嬢であったなら、いくら魔法省でも多少は優位というところだっただろう。伯爵より上となれば、侯爵か公爵、下手すれば王族ということもあり得る。
「まさか…どちらの国なのでしょうか」
「答えるわけないだろう?」
「っあ…」
「お前は魔法省を何だと思っている?それでなくとも、反感を買うこともあれば、危険な目に遭うことも多いのだぞ?そんな考えにも及ばないのか?」
セナリアンを止めたくとも、伯爵家よりも爵位が高いと言われれば、この場で止められるものはいない。もし公爵家、侯爵家がいたとしても、セナリアンに陛下を呼べと言われたら、おしまいであり、黙っていたことが正解である。
セナリアンがエメラルダ王国だと、もし答えていたら、エーランドは場所も考えず、地べたを這いつくばっただろう。
セントリア王国では同じ認識としているために、セナリアンがあの時、声を掛けた人間と同じ魔術師だと気付くことは出来る。
「ご無沙汰しております、魔術師殿。以前は大変申し訳なかった」
エーランドは頭を下げるわけでもなく、顔を申し訳なかったと造るわけでもなく、口だけで謝罪した。
「お知り合いでしたか」
「いや、こちらが一方的にというところだ」
セナリアンは姿勢も表情も崩すことなく、エーランドとノデュエルを見据えた。
「ああ、あの時の。謝罪は不要です」
アンデションという姓に引っ掛かったのは、こいつ等だったかと、セナリアンはようやく合点がいった。
「はあ、随分嫌われたものだ」
エーランドはオーバーに嘆くようなそぶりを見せた。
「本当に悪いと思ってらっしゃいますか?注意されたから、悪いことだと思っているだけではないですか?」
「魔術師様っ!」
イェスペルはエーランドが人の良さそうな顔をして、容赦のないことをよく知っている。折角お誘いしたのに、何かあってはならないと、庇おうとしたのは魔術師の方であったが、それは間違いだったと後に気付くことになる。
「本当に思っている、弟と知り合いだったのか」
「今日、出会ったばかりです。ルディーの商品を買ってくれた縁でお誘いしました」
「そうだったのか、それなら今後は我々とも親しくしていただけるだろうか」
エーランドは当たり前であるかのように、セナリアンに問うた。
「魔法省の魔術師の素性を調べるとは…この国はどうなっているのでしょうか?私は一度、忠告したはずですが?イェスペル殿、この方は記憶喪失ですか?」
「いえ、記憶喪失ではありません。ですが、兄は伯爵です」
だから何だと言いたかったが、イェスペルに告げることではない。
「そのようなことはしておらぬ、証拠でもあるのか」
「はあ…この国は身分がものをいうのも、考えものですね」
セントリアは特別多い者はいるが、大半は魔力差がほとんどないため、爵位による階級が厳しく、親しくなれば別だが、爵位が一つでも違えば、エメラルダ王国よりも、必要以上に敬意を払うというのが礼儀である。
「ねえ?掴んでいるから、そのような態度なのでしょう?非常にはしたないことであると、理解していますか?」
黙って控えていたジョンラは、セナリアンの『ねえ?』という言葉に、これは相当怒っている相手であると見守ることを決めた。
「男爵家ではないのでしょうか…」
「ほらみろ、急に態度を変えたな。まあいい、男爵家ではない、爵位だけで言えば、生まれがお前の伯爵より上だよ。あの当時、声を掛けた時点で、この国なら不敬だな。違うか?」
セナリアンの丁寧な話し方が一変した。
「さあ、これ以上に態度を変えられるか?地べたを這いつくばるか?」
その場は先ほどまで楽しそうに話していた魔術師殿の姿と、非常にまずい状況のエーランドに凍り付いていた。エーランドの伯爵家という立場ですら、本来なら気軽な相手ではない。
だが、完全に魔術師の威圧感にエーランドは脂汗をかいている。
爵位に加えて、魔法省の魔術師である。男爵家の令嬢であったなら、いくら魔法省でも多少は優位というところだっただろう。伯爵より上となれば、侯爵か公爵、下手すれば王族ということもあり得る。
「まさか…どちらの国なのでしょうか」
「答えるわけないだろう?」
「っあ…」
「お前は魔法省を何だと思っている?それでなくとも、反感を買うこともあれば、危険な目に遭うことも多いのだぞ?そんな考えにも及ばないのか?」
セナリアンを止めたくとも、伯爵家よりも爵位が高いと言われれば、この場で止められるものはいない。もし公爵家、侯爵家がいたとしても、セナリアンに陛下を呼べと言われたら、おしまいであり、黙っていたことが正解である。
セナリアンがエメラルダ王国だと、もし答えていたら、エーランドは場所も考えず、地べたを這いつくばっただろう。
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