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第24話

婚約者と貴重な公女12(ヨバス王国)

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「「ありがとうございました」」

 オークレイリアが慌てて帰って行き、セナリアンとマージナルは、両陛下の元へ向かった。エイベルとフランシスには、また夕食の際にと言って別れた。

「いえ、まだ向こうの対応を見てからですわよ?」
「ですが、もう我が国に来るようなことはないでしょう」
「それはそうですわね。我が国も、すぐに抗議を送ることでしょう」
「すぐですか?」
「ええ、先ほどの映像を送りましたので」
「さようでしたか…」

 説明は不要、見たら分かるでしょう?という意味である。

「陛下たちとお父様とお母様の血圧が心配なくらいよね?」
「そうだな、父上と母上の血管が浮き上がって、罵詈雑言が飛び交っているはずだよ。王家もそうじゃないかな?勿論、セナのためにね」
「まあ、そうでしょうね」

 まさにグロー公爵家では『何だと!』『どうしてやろうかしら』と怒り狂っており、王家でも両陛下とクーリットが、静かに怒りの炎は燃え、王妃陛下の扇子は真っ二つに折れていた。

「両陛下にも同じ物を、あと昨日のフランシス嬢の怪我の際の映像もございます。握手と診断書で証拠になるでしょう。抗議の際に一緒に送ってくださいませ」

 記録の水晶を2つずつ、両陛下の前に置いた。

 セナリアンは今回は何もしていないように見えて、実はしっかりと術式を展開して、記録を行っていた。

「さすが抜かりないことで、ありがとうございます」
「ヨバス王国からの方がいいと思いますので」
「講義の際に、一緒に送らせていただきます」

 両陛下はセナリアンに頭を下げた。

 二人は、簡単にセナリアンに頭を下げるので、何度か止めて欲しいと言ったのだが、感謝を伝えたいからだと受け入れることになっている。

「マージナル様もご迷惑をお掛けしました、ありがとうございました」
「いいえ、私はセナリアンに言われた通りにしたまででございます」

 両陛下とマージナルは顔を合わせたことがある程度ではあるが、お互いセナリアンを通して話を聞いているので、すっかり前から知り合いの気分である。

「エイベル殿下は立派でしたわ、何だか嬉しく思いました」
「ありがとうございます」
「フランシス嬢も話すことが出来て、セナリアン様のおかげです」

 両陛下はエイベルがしっかりと対応している姿に安堵し、フランシス嬢はやはり昨日のことを、エイベルに話していなかったようで、話すきっかけも作ってくださったことに、ただ感謝していた。

「いいえ、お二人は良き夫婦になることでしょう」

 その後、夕食をご馳走になり、セナリアンとマージナル、ジョンラとヒアルはエメラルダ王国に戻った。

 イシュバン公国には、エメラルダ王国の王家とグロー公爵家、そしてヨバス王国からも抗議文が届き、オークレイリアが戻る前には届いていた。

 オークレイリアは、怒るではなく、諦めた様子の両陛下と兄に迎えられた。

「何をしたか分かっているな」

 大公である父の重低音が、響き渡った。

「何と聞いているか分からないけど、誤解なの」
「何が誤解だ!」
「何て聞いているの?」
「自分で言ったらどうだ?分かっているんだろう?」
「それは…エイベル殿下とマージナル様に…」

 どう言えば、怒られないか考えていたが、いい言葉が思いつかなかった。

「失礼な発言をしました」
「分かっていて言ったんだな?」
「でも、結婚するなら、私の方がいいはずでしょう?だから、目を覚まさせようと思って…キツイ言い方になってしまったとは思っているわ」

 言い訳を聞くつもりのない大公は、事実を突きつけることにした。

「エメラルダ王国、エメラルダ王国のグロー公爵家、ヨバス王国から苦情が入った。庇う気もないが、お前はもう公女としては終わりだ」
「…」

 どうしてヨバス王国からもとは思ったが、エイベルのことと、ホールで騒ぎを起こしたことだろうと思った。
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