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第24話
婚約者と貴重な公女10(ヨバス王国)
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「しっかり伝えて置きますわ」
しかも、セナリアンの場合は姉ではなく、陛下にである。
そして、セナリアンは力の抜けてしまった様子のオークレイリアを、ちょっとこちらへと輪から連れ出した。
「公女様、エメラルダ王国を敵に回しただけでなく、これからヨバス王国の王太子妃になられる方を傷付けたのですから、これから大変ですわね。一生、どちらからも嫌われるでしょうね」
「っな、そんなこと」
あり得ないと言う言葉は、続かなかった。
「何が目的で居座っていたのですか?エイベル殿下の側妃?愛人かしら?」
「っな、私は公女なのよ!」
「そればっかりおっしゃってますけど、それしか誇れるものがないのですか?御身が可愛いのならば、一刻も早く帰って、謝罪と反省の態度を見せた方がいいですわよ」
おそらく、ヨバス王国からも抗議が行くことだろう。
オークレイリアは、現状、お先真っ暗である。イシュバン公国がどう対応するか分からないが、容赦することはないだろう。
報告によると、王家はオークレイリアを持て余している状態であるそうだ。言うことを聞かない態度と、我儘に辟易しており、どうにかしたいと思っているようで、他国に迷惑を掛けたとなれば、もう終わりだろう。
だからこそ、早く帰って、反省を見せるくらいしか出来ることはない。
「あなたが身を引けばいいじゃない!私の方がマージナル様に相応しいわ」
セナリアンにとって、また同じ台詞を言うことに、またなぜなのだろうとくらいにしか思わなかった。
「子どもたちもまだ幼いのに、いくら公女様でも言っていいことと悪いことがありますわよ?」
「たちって…」
「3人おりますの」
「え…あなた二十二歳ですわよね?」
「ええ、そうです」
オークレイリアは二十六歳で、婚約者もいなければ、結婚もしていない、勿論子どもは一人すらいない。自分が選んだ道とはいえ、こんなはずではなかったと思いながら、相応しい相手を探していた。
「早く帰らなくてよろしいのですか?抗議が先に着くかもしれませんよ?そうなったら、言い訳は通用しないかもしれませんよ?」
「っな」
オークレイリアは慌てて部屋に戻って、慌てて帰って行った。迎えは戻るのではなく、近くで待機している状態であった。
こうして、オークレイリアは去って行き、四人はようやく部屋に移動した。ずっとホールの人目がある場所で、オークレイリアは大騒ぎしていたのである。
「ようやく消えましたわね」
「成功かな?私は合格かな?」
「ええ、良い働きでした」
「あとで沢山褒めてね」
「図々しいわね」
セナリアンはマージナルを睨み付けたが、オークレイリアはいなくなったせいか、デレデレしてしまっている。
「どういうことですか?まさか帰すために?」
「ええ、両陛下と相談の上ですよ?あのような者には、なぜか夫の容姿が良い働きをするのですよ?」
マージナルはそうかな?という顔をしていたが、褒められたと受け取っていた。
「そうだったのですか…お手数をお掛けしました」
「いいえ、ささやかな婚約祝いです。それより、フランシス嬢、昨日のこと、今ならエイベル殿下に話せるのではありませんか?」
「え?何かあったのか?」
フランシスは少し言いにくそうではあったが、オークレイリアと握手した際に怪我をしたことを、エイベルに話した。今まで友人関係であったこともあり、こんなことでと考えて、話せなかったそうだ。
「これからはすぐに言ってくれ」
「はい…」
「診断書を書いてもらいましょう」
「そうですね」
エイベルは医師を呼んで診断書を書かせ、医師は消毒とガーゼを付けてくれたが、医師が去るとセナリアンがフランシスに声を掛けた。
「では、掌をこちらへ」
フランシスが戸惑う様子のまま掌を出すと、一瞬にして治して見せた。
「え?治癒術が…ありがとうございます」
「いえ、フランシス嬢が自ら話して、診断書を書いて、公女が帰ってからと思っておりましたので、遅くなってごめんなさいね。これでヨバス王国からも、抗議が行くことでしょう」
セナリアンは昨日の記録を陛下に渡すつもりであった。握手しているので分かりにくいが、これだけの抗議があれば、信用に値するものになるだろう。
しかも、セナリアンの場合は姉ではなく、陛下にである。
そして、セナリアンは力の抜けてしまった様子のオークレイリアを、ちょっとこちらへと輪から連れ出した。
「公女様、エメラルダ王国を敵に回しただけでなく、これからヨバス王国の王太子妃になられる方を傷付けたのですから、これから大変ですわね。一生、どちらからも嫌われるでしょうね」
「っな、そんなこと」
あり得ないと言う言葉は、続かなかった。
「何が目的で居座っていたのですか?エイベル殿下の側妃?愛人かしら?」
「っな、私は公女なのよ!」
「そればっかりおっしゃってますけど、それしか誇れるものがないのですか?御身が可愛いのならば、一刻も早く帰って、謝罪と反省の態度を見せた方がいいですわよ」
おそらく、ヨバス王国からも抗議が行くことだろう。
オークレイリアは、現状、お先真っ暗である。イシュバン公国がどう対応するか分からないが、容赦することはないだろう。
報告によると、王家はオークレイリアを持て余している状態であるそうだ。言うことを聞かない態度と、我儘に辟易しており、どうにかしたいと思っているようで、他国に迷惑を掛けたとなれば、もう終わりだろう。
だからこそ、早く帰って、反省を見せるくらいしか出来ることはない。
「あなたが身を引けばいいじゃない!私の方がマージナル様に相応しいわ」
セナリアンにとって、また同じ台詞を言うことに、またなぜなのだろうとくらいにしか思わなかった。
「子どもたちもまだ幼いのに、いくら公女様でも言っていいことと悪いことがありますわよ?」
「たちって…」
「3人おりますの」
「え…あなた二十二歳ですわよね?」
「ええ、そうです」
オークレイリアは二十六歳で、婚約者もいなければ、結婚もしていない、勿論子どもは一人すらいない。自分が選んだ道とはいえ、こんなはずではなかったと思いながら、相応しい相手を探していた。
「早く帰らなくてよろしいのですか?抗議が先に着くかもしれませんよ?そうなったら、言い訳は通用しないかもしれませんよ?」
「っな」
オークレイリアは慌てて部屋に戻って、慌てて帰って行った。迎えは戻るのではなく、近くで待機している状態であった。
こうして、オークレイリアは去って行き、四人はようやく部屋に移動した。ずっとホールの人目がある場所で、オークレイリアは大騒ぎしていたのである。
「ようやく消えましたわね」
「成功かな?私は合格かな?」
「ええ、良い働きでした」
「あとで沢山褒めてね」
「図々しいわね」
セナリアンはマージナルを睨み付けたが、オークレイリアはいなくなったせいか、デレデレしてしまっている。
「どういうことですか?まさか帰すために?」
「ええ、両陛下と相談の上ですよ?あのような者には、なぜか夫の容姿が良い働きをするのですよ?」
マージナルはそうかな?という顔をしていたが、褒められたと受け取っていた。
「そうだったのですか…お手数をお掛けしました」
「いいえ、ささやかな婚約祝いです。それより、フランシス嬢、昨日のこと、今ならエイベル殿下に話せるのではありませんか?」
「え?何かあったのか?」
フランシスは少し言いにくそうではあったが、オークレイリアと握手した際に怪我をしたことを、エイベルに話した。今まで友人関係であったこともあり、こんなことでと考えて、話せなかったそうだ。
「これからはすぐに言ってくれ」
「はい…」
「診断書を書いてもらいましょう」
「そうですね」
エイベルは医師を呼んで診断書を書かせ、医師は消毒とガーゼを付けてくれたが、医師が去るとセナリアンがフランシスに声を掛けた。
「では、掌をこちらへ」
フランシスが戸惑う様子のまま掌を出すと、一瞬にして治して見せた。
「え?治癒術が…ありがとうございます」
「いえ、フランシス嬢が自ら話して、診断書を書いて、公女が帰ってからと思っておりましたので、遅くなってごめんなさいね。これでヨバス王国からも、抗議が行くことでしょう」
セナリアンは昨日の記録を陛下に渡すつもりであった。握手しているので分かりにくいが、これだけの抗議があれば、信用に値するものになるだろう。
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