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第24話
婚約者と貴重な公女5(ヨバス王国)
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エイベルの困った様子に気付いた、セナリアンは次期公爵夫人らしく、国の話をすることにした。
「イシュバン公国は、確かお魚やエビの養殖に力を入れていると聞いたことがあります。食べたことはないのですが、美味しいのですか?」
「ええ、とても美味しいわね」
オークレイリアも、太りにくい魚やエビは好んで食べている。
「エサにこだわってらっしゃるのでしょうか?」
「っえ、ええ、そうね」
オークレイリアはそんな話をしたいのではないという顔をしているが、セナリアンはお構いなしに続けることにした。
「やはりエサが違うのですね、温度も魚によって決まっているのですか?」
「そうね」
「何が一番、育てやすいのですか?」
「そこまで知らないわ」
「そうですか…」
セナリアンは答えられないだろうことは分かってはいたが、エビには興味があったので、心底残念ですわという表情を浮かべた。
「それよりも、あなた、どういうつもりでこの席でいらっしゃるの?」
「楽しくお話しているだけですが、公女様は違うのですか?」
「いえね、てっきりエイベルの婚約者でも、狙っているのではないかと思ったのですよ。だって、わざわざ他国の王族に会いに来るんだもの、そう思われても仕方ない行動ですわよ?」
私は心配しているのよと言った口振りで、どの口が言っているのかという話ではあるが、私は違うけど、私くらいでなければ駄目なのだという意味である。
「私は結婚しておりますので、そのような心配は無用です」
「っえ」
「そうなの、てっきりフランシス嬢と牽制し合っているのかと思ったものだから」
「まさか?そんな失礼なことをするはずないではありませんか」
その様子にフランシスは、ふふっと笑みを零し、エイベルはどうしたのかとフランシスに目を向けた。
「だって殿下の初恋のお姉様でしょう?」
「フランシス!それは…」
エイベルはあわあわとして、フランシスに詰め寄っている。
「まあ、そうなの?知らなかったわ。何だか恥ずかしいわね」
あからさまではないが、口元を緩めて自慢げな顔をしているのは、セナリアンではなく、オークレイリア。だが、エイベルが見つめているのはセナリアンである。
あなたではないという強い姿勢を感じる。
「セナリアン様、ご不快にさせたらすみません。フランシスにも前に話したことがあって、初恋というか、憧れというか…照れますね」
「まあ、そうなの?光栄ですわ」
「そ、そうだったの、あなたの方が年上だったのね」
間違いに気付いたオークレイリアだが、自分だと断言はしていないと、勘違いしていたなどと思われたくないために、どうにか誤魔化さなくてはと焦った。
だが、エイベルもフランシスもセナリアンも、自分のことだと思ったのかと見透かしていた。
「ええ、一つ年上です」
「年上に憧れることはあるものよね」
オークレイリアは先ほどのことを取り返すために、私に憧れたという言葉を引きだそうとしていた。
「年上の女性で憧れたのは、セナリアン様だけです。ですので、久し振りにお会い出来て本当に嬉しいのです。今日も、フランシスに話しておりまして」
「あら、では来て良かったわ」
すっかりふわふわとした雰囲気に、フランシスも一緒に微笑んでいる。ギスギスして、面白くないのはオークレイリアだけである。
「私にあれだけお世話してあげたのに、ちょっと薄情ではなくて?」
「…ああ」
「公女様、そのような言い方をされたら、感謝して欲しいと言っているように聞こえてしまいますわよ?」
「何ですって!」
「公女様とあろう方が、世話をしたことを感謝して欲しいとは言いませんでしょう?当然のことなのですから」
「っ、それはそうだけど」
セナリアンはオークレイリアに向けて、淑女のように微笑み、ジョンラとヒアルは逆に背筋に冷たいものを感じた。
「そういえば、グロー様はどちらに?」
エイベルが空気を変えようと、マージナルのことを訪ねた。エイベルはマージナルには会ったことがない。
「ええ、何やら用事があるようでして、後で迎えに行く予定です」
「是非、お会いしたいです。夕食をご一緒にいかがでしょうか」
「まあ、きっと喜びますわ」
「イシュバン公国は、確かお魚やエビの養殖に力を入れていると聞いたことがあります。食べたことはないのですが、美味しいのですか?」
「ええ、とても美味しいわね」
オークレイリアも、太りにくい魚やエビは好んで食べている。
「エサにこだわってらっしゃるのでしょうか?」
「っえ、ええ、そうね」
オークレイリアはそんな話をしたいのではないという顔をしているが、セナリアンはお構いなしに続けることにした。
「やはりエサが違うのですね、温度も魚によって決まっているのですか?」
「そうね」
「何が一番、育てやすいのですか?」
「そこまで知らないわ」
「そうですか…」
セナリアンは答えられないだろうことは分かってはいたが、エビには興味があったので、心底残念ですわという表情を浮かべた。
「それよりも、あなた、どういうつもりでこの席でいらっしゃるの?」
「楽しくお話しているだけですが、公女様は違うのですか?」
「いえね、てっきりエイベルの婚約者でも、狙っているのではないかと思ったのですよ。だって、わざわざ他国の王族に会いに来るんだもの、そう思われても仕方ない行動ですわよ?」
私は心配しているのよと言った口振りで、どの口が言っているのかという話ではあるが、私は違うけど、私くらいでなければ駄目なのだという意味である。
「私は結婚しておりますので、そのような心配は無用です」
「っえ」
「そうなの、てっきりフランシス嬢と牽制し合っているのかと思ったものだから」
「まさか?そんな失礼なことをするはずないではありませんか」
その様子にフランシスは、ふふっと笑みを零し、エイベルはどうしたのかとフランシスに目を向けた。
「だって殿下の初恋のお姉様でしょう?」
「フランシス!それは…」
エイベルはあわあわとして、フランシスに詰め寄っている。
「まあ、そうなの?知らなかったわ。何だか恥ずかしいわね」
あからさまではないが、口元を緩めて自慢げな顔をしているのは、セナリアンではなく、オークレイリア。だが、エイベルが見つめているのはセナリアンである。
あなたではないという強い姿勢を感じる。
「セナリアン様、ご不快にさせたらすみません。フランシスにも前に話したことがあって、初恋というか、憧れというか…照れますね」
「まあ、そうなの?光栄ですわ」
「そ、そうだったの、あなたの方が年上だったのね」
間違いに気付いたオークレイリアだが、自分だと断言はしていないと、勘違いしていたなどと思われたくないために、どうにか誤魔化さなくてはと焦った。
だが、エイベルもフランシスもセナリアンも、自分のことだと思ったのかと見透かしていた。
「ええ、一つ年上です」
「年上に憧れることはあるものよね」
オークレイリアは先ほどのことを取り返すために、私に憧れたという言葉を引きだそうとしていた。
「年上の女性で憧れたのは、セナリアン様だけです。ですので、久し振りにお会い出来て本当に嬉しいのです。今日も、フランシスに話しておりまして」
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「…ああ」
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「何ですって!」
「公女様とあろう方が、世話をしたことを感謝して欲しいとは言いませんでしょう?当然のことなのですから」
「っ、それはそうだけど」
セナリアンはオークレイリアに向けて、淑女のように微笑み、ジョンラとヒアルは逆に背筋に冷たいものを感じた。
「そういえば、グロー様はどちらに?」
エイベルが空気を変えようと、マージナルのことを訪ねた。エイベルはマージナルには会ったことがない。
「ええ、何やら用事があるようでして、後で迎えに行く予定です」
「是非、お会いしたいです。夕食をご一緒にいかがでしょうか」
「まあ、きっと喜びますわ」
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