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第24話
婚約者と貴重な公女4(ヨバス王国)
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セナリアンはエメラルダ王国の次期公爵夫人、セナリアン・グローとして、ヨバス王国に降り立った。
皆でピカピカに仕上げられているので、若干神々しいほどである。
「ご無沙汰しております」
「ご活躍をお聞きしております」
「お会いできて光栄でございます」
つい昨日、王宮で一緒にいたはずの両陛下に白々しく挨拶をしており、セナリアンとしてはエイベル殿下とも面識がある。
「久し振りでございますね、お会い出来て嬉しく思います」
「こちらこそ、ご活躍の様で、嬉しく思います」
エイベルは両親が親しくしている夫妻の令嬢だと思っており、まだセナリアンの正体を知らず、侯爵家の令嬢で、現在は結婚して次期公爵夫人だと聞いている。
ただ、コルロンドの魔術師であることは知っている。そして、いずれはエイベルは、セナリアンの正体を知る一人となる予定である。
「お茶の準備をしておりますので、どうぞ」
「まあ、嬉しいですわ」
帰った招待客もいるが、オークレイリアはまだ滞在しており、セナリアンと両陛下は餌を蒔いている。
「フランシス・ジリーヌと申します」
「ご丁寧に。セナリアン・グローでございます」
両親からセナリアンには、婚約者のことを話してあると聞いているので、フランシスも同席している。
「大きな声は控えますが、おめでとうございます」
「ありがとうございます」「ありがとうございます」
エイベルとフランシスは、はにかんだ笑顔を見せた。
三人は近況や美味しい食べ物などの世間話、セナリアンは子どものことを話したりと、楽しく過ごしていた。
そこへ呼ばれてもいないのに、やはり嗅ぎつけて来たのが、オークレイリア・ジェネヴィーヴ公女であった。
「あら?私もご一緒させていただけるかしら?そちらはどなた?」
「公女様、こちらはエメラルダ王国から客人です」
「エメラルダ…」
「私は構いませんよ」
それよりも、昨日怪我をさせた相手と同席するフランシスの心情を慮ったが、遥かに強い覚悟を持っているようで、朗らかに微笑んでいる。
イシュバン公国とエメラルダ王国は、国土は同じくらいではあるが、先進国であるエメラルダ王国とは生活水準は遥かに違う。
「オークレイリア・ジェネヴィーヴですわ」
「セナリアン・グローと申します」
「爵位は?」
「公爵家です」
「そう」
王家と知り合いという時点で、下位貴族だとは思っていなかったが、身に付けている物が、公女とレベルが違うのだが、気付いていない。
今日の、セナリアンは皆でひゃほーいと着飾られたドレス、宝石、帽子、靴、全てが最高級の物である。
「どうしてこちらに?」
「前から交流がございまして、こちらに来る用事がございましたので、是非にと仰っていただきましたの」
「はい」
エイベルも微笑みながら頷き、是非にと招かれてここにいるのだと印象付ける。
「エイベルとはいつからお知り合いなの?」
「初めてお会いしたのは、殿下が六歳の頃でしょうか」
「え?」
オークレイリアはフランシスには幼なじみなので出来ないが、自分の方がずっと前からエイベルと知り合いだと自慢したかったが、出鼻を挫かれた。
「そうですね、よく覚えております」
「確か、ゼリーがつるんと飛び跳ねて」
「はい、大人の時が止まりましたよね。セナリアン様が、活きのいいゼリーですわねと仰って、戻していただきました」
詳細はぷるりんと飛び跳ねた瞬間に、セナリアンが魔術で着地する前にエイベルの皿に戻したのである。
「ええ、活きのいいゼリーでしたわね」
「ふふふっ」
フランシスは口元を隠しながら、笑い声を上げた。
「私もそのお話、聞いたことがございます」
「ああ、フランシスにもしたな」
三人は和やかな空気を出していたが、面白くないのはオークレイリア。
「私は留学の際にお世話をしたのよ、そうよね?エイベル」
「はい、そうですね」
エイベルはなぜわざわざ言うのだろうとは思ったが、面倒なので肯定した。
「本当にまだ幼かったから、色んなことを教えてあげたのよ」
「まあそうだったのですね、歴史などはやはり母国の方に聞くのが一番ですものね」
「そうですわよ」
「えっ、ええ…」
エイベルは歴史をオークレイリアに教えてもらったことなどはないが、否定しても教えたなどと言って来るに違いないので、黙って置くことにした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本日もお読みいただき、ありがとうございます。
本日より、この第24話分は、清書が終わりましたので、
12時と17時の1日2回、投稿に変えさせていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
皆でピカピカに仕上げられているので、若干神々しいほどである。
「ご無沙汰しております」
「ご活躍をお聞きしております」
「お会いできて光栄でございます」
つい昨日、王宮で一緒にいたはずの両陛下に白々しく挨拶をしており、セナリアンとしてはエイベル殿下とも面識がある。
「久し振りでございますね、お会い出来て嬉しく思います」
「こちらこそ、ご活躍の様で、嬉しく思います」
エイベルは両親が親しくしている夫妻の令嬢だと思っており、まだセナリアンの正体を知らず、侯爵家の令嬢で、現在は結婚して次期公爵夫人だと聞いている。
ただ、コルロンドの魔術師であることは知っている。そして、いずれはエイベルは、セナリアンの正体を知る一人となる予定である。
「お茶の準備をしておりますので、どうぞ」
「まあ、嬉しいですわ」
帰った招待客もいるが、オークレイリアはまだ滞在しており、セナリアンと両陛下は餌を蒔いている。
「フランシス・ジリーヌと申します」
「ご丁寧に。セナリアン・グローでございます」
両親からセナリアンには、婚約者のことを話してあると聞いているので、フランシスも同席している。
「大きな声は控えますが、おめでとうございます」
「ありがとうございます」「ありがとうございます」
エイベルとフランシスは、はにかんだ笑顔を見せた。
三人は近況や美味しい食べ物などの世間話、セナリアンは子どものことを話したりと、楽しく過ごしていた。
そこへ呼ばれてもいないのに、やはり嗅ぎつけて来たのが、オークレイリア・ジェネヴィーヴ公女であった。
「あら?私もご一緒させていただけるかしら?そちらはどなた?」
「公女様、こちらはエメラルダ王国から客人です」
「エメラルダ…」
「私は構いませんよ」
それよりも、昨日怪我をさせた相手と同席するフランシスの心情を慮ったが、遥かに強い覚悟を持っているようで、朗らかに微笑んでいる。
イシュバン公国とエメラルダ王国は、国土は同じくらいではあるが、先進国であるエメラルダ王国とは生活水準は遥かに違う。
「オークレイリア・ジェネヴィーヴですわ」
「セナリアン・グローと申します」
「爵位は?」
「公爵家です」
「そう」
王家と知り合いという時点で、下位貴族だとは思っていなかったが、身に付けている物が、公女とレベルが違うのだが、気付いていない。
今日の、セナリアンは皆でひゃほーいと着飾られたドレス、宝石、帽子、靴、全てが最高級の物である。
「どうしてこちらに?」
「前から交流がございまして、こちらに来る用事がございましたので、是非にと仰っていただきましたの」
「はい」
エイベルも微笑みながら頷き、是非にと招かれてここにいるのだと印象付ける。
「エイベルとはいつからお知り合いなの?」
「初めてお会いしたのは、殿下が六歳の頃でしょうか」
「え?」
オークレイリアはフランシスには幼なじみなので出来ないが、自分の方がずっと前からエイベルと知り合いだと自慢したかったが、出鼻を挫かれた。
「そうですね、よく覚えております」
「確か、ゼリーがつるんと飛び跳ねて」
「はい、大人の時が止まりましたよね。セナリアン様が、活きのいいゼリーですわねと仰って、戻していただきました」
詳細はぷるりんと飛び跳ねた瞬間に、セナリアンが魔術で着地する前にエイベルの皿に戻したのである。
「ええ、活きのいいゼリーでしたわね」
「ふふふっ」
フランシスは口元を隠しながら、笑い声を上げた。
「私もそのお話、聞いたことがございます」
「ああ、フランシスにもしたな」
三人は和やかな空気を出していたが、面白くないのはオークレイリア。
「私は留学の際にお世話をしたのよ、そうよね?エイベル」
「はい、そうですね」
エイベルはなぜわざわざ言うのだろうとは思ったが、面倒なので肯定した。
「本当にまだ幼かったから、色んなことを教えてあげたのよ」
「まあそうだったのですね、歴史などはやはり母国の方に聞くのが一番ですものね」
「そうですわよ」
「えっ、ええ…」
エイベルは歴史をオークレイリアに教えてもらったことなどはないが、否定しても教えたなどと言って来るに違いないので、黙って置くことにした。
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本日もお読みいただき、ありがとうございます。
本日より、この第24話分は、清書が終わりましたので、
12時と17時の1日2回、投稿に変えさせていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
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