192 / 228
第24話
婚約者と貴重な公女3(ヨバス王国)
しおりを挟む
「嬉しいことを言ってくれますね、セナ様に言われたら間違いないですもの」
「全てが分かるわけではありませんが、パーティーで強い憎しみを向ける者はおりませんでした」
実はセナリアンはパーティー会場全体に陣を張って、エイベルとフランシスへの感情を読み取っていた。少なからず、羨ましいと妬む者はいたが、強い憎悪や殺意を持つ者はいなかった。
「そ、そうですか!それは良かった…」
イリジム陛下は大きな息を吐き、スカイラ王妃もホッとした顔を見せた。
「問題は公女ですね、憎悪や殺意はありませんでした。意図を覗くのが手っ取り早いですが、ヨバス王国で過激な真似はしたくないのよね」
「誰が相手をするかも考えねばなりませんからね」
セナリアンにジョンラが答えた。
「そうなのよね」
自国やヨバス王国内であれば、魔法省を使えばいいが、他国の公女となると接触が難しい。
「大人しく帰ってくれるか、物理的に防ぐことは可能ですけど…私がエイベル殿下かフランシス嬢のどちらかに化けたら、恨みを買いそうだし、困ったわね。エイベル殿下が好みなのよね?」
「エイベルが好みというよりは、公女に相応しい相手がなかなかいないということのようで」
いくら自由だとはいえ、公女が男爵家の令息と、結婚することはあり得ないと思っているのか。
「王太子の妻の座が欲しいということね。でもいくら年齢は関係ないと言っても、五歳も年上の女性が?他にもいるでしょうに。嫌われているの?」
「嫌われるとまでは言いませんが、あのような態度を許容出来る方ではないと」
「怪我させるような公女だものね。そうそう、フランシス嬢だけど、手当はして貰ったのだけど、治癒術はまだ行ってないの、証拠になるかと思って」
「そうですね…」
可哀想だと思うが、治癒をしてしまえば、なかったことになってしまう。
「私ではないと言いそうだけど、フランシス嬢はおそらく、エイベル殿下に心配を掛けまいと言わないつもりだったのでしょうね。すぐに化粧室に行こうとしていたから、表情も変えずに」
「そんなことが…」
「尊敬するわ、私なら恥ずかしい目に遭わせてあげるところだけど」
「ちなみにどのような?」
イリジム陛下は穏やかではあるが、意外とおちゃめな方である。
「ご興味があるのですか?」
「私だって怒らないわけではありませんよ」
「そうですね、言い逃れが出来ないようなものがいいので、いえ、私の考えることは品がないですから、止めておきます」
「聞きたいです」
両陛下はグッと身を乗り出して、興味津々である。
「そうですか、では…鼻の下に大きな赤黒く目立つ出来物を作るとか」
両陛下は"んま"という同じ顔をして驚いており、停止してしまったが、笑いながら動き出した。
「それは、ふふふ、さすが考えることが違いますね」
「ええ、ふふふ、それは恥ずかしいです」
「品がなくて、すみません」
「いえ、最悪、そちらを採用しようではありませんか」
「よろしいのですか?」
「ええ、肌が合わないと、恥ずかしくて帰って行くかもしれません。しかし、セナ様は面白いことを考えられる」
酷い案が採用されそうにはなっているが、別の案も考えなくてはならない。
「大公様は放任なのですか?」
「いえ、もし問題を起こせば、きちんと対処されると思いますよ。いくら自由と言っても限度はありますからな。特に公女となれば、その責任も重い」
父親であるジェネヴィーヴ大公はまともなようだ、今まで問題があるようなことも聞いたことがなかったので、処罰するようなことになれば任せてしまおう。
「おそらく随分と自分に価値があると思っているのでしょうね」
「ないとは言いませんが、我が国には合いませんわね」
「その通りですわね。私の夫は好みではないかしら?あれは、傾国の美男子らしいですから、使えないかしら」
セナリアンが生贄に思い付いたのは、不確実な特性を持つ自身の夫だった。
「そ、そのようなことはなりません。公爵家の嫡男ございましょう?」
「でも義両親もしっかり役に立ちなさいと、送り出してくれると思うのだけど…」
「そのような感じなのですね」
セナリアンの家族での立ち位置を、即座に察知した両陛下であった。
だが、ヒアルの考えによって、ある作戦が実行されることになった。
「全てが分かるわけではありませんが、パーティーで強い憎しみを向ける者はおりませんでした」
実はセナリアンはパーティー会場全体に陣を張って、エイベルとフランシスへの感情を読み取っていた。少なからず、羨ましいと妬む者はいたが、強い憎悪や殺意を持つ者はいなかった。
「そ、そうですか!それは良かった…」
イリジム陛下は大きな息を吐き、スカイラ王妃もホッとした顔を見せた。
「問題は公女ですね、憎悪や殺意はありませんでした。意図を覗くのが手っ取り早いですが、ヨバス王国で過激な真似はしたくないのよね」
「誰が相手をするかも考えねばなりませんからね」
セナリアンにジョンラが答えた。
「そうなのよね」
自国やヨバス王国内であれば、魔法省を使えばいいが、他国の公女となると接触が難しい。
「大人しく帰ってくれるか、物理的に防ぐことは可能ですけど…私がエイベル殿下かフランシス嬢のどちらかに化けたら、恨みを買いそうだし、困ったわね。エイベル殿下が好みなのよね?」
「エイベルが好みというよりは、公女に相応しい相手がなかなかいないということのようで」
いくら自由だとはいえ、公女が男爵家の令息と、結婚することはあり得ないと思っているのか。
「王太子の妻の座が欲しいということね。でもいくら年齢は関係ないと言っても、五歳も年上の女性が?他にもいるでしょうに。嫌われているの?」
「嫌われるとまでは言いませんが、あのような態度を許容出来る方ではないと」
「怪我させるような公女だものね。そうそう、フランシス嬢だけど、手当はして貰ったのだけど、治癒術はまだ行ってないの、証拠になるかと思って」
「そうですね…」
可哀想だと思うが、治癒をしてしまえば、なかったことになってしまう。
「私ではないと言いそうだけど、フランシス嬢はおそらく、エイベル殿下に心配を掛けまいと言わないつもりだったのでしょうね。すぐに化粧室に行こうとしていたから、表情も変えずに」
「そんなことが…」
「尊敬するわ、私なら恥ずかしい目に遭わせてあげるところだけど」
「ちなみにどのような?」
イリジム陛下は穏やかではあるが、意外とおちゃめな方である。
「ご興味があるのですか?」
「私だって怒らないわけではありませんよ」
「そうですね、言い逃れが出来ないようなものがいいので、いえ、私の考えることは品がないですから、止めておきます」
「聞きたいです」
両陛下はグッと身を乗り出して、興味津々である。
「そうですか、では…鼻の下に大きな赤黒く目立つ出来物を作るとか」
両陛下は"んま"という同じ顔をして驚いており、停止してしまったが、笑いながら動き出した。
「それは、ふふふ、さすが考えることが違いますね」
「ええ、ふふふ、それは恥ずかしいです」
「品がなくて、すみません」
「いえ、最悪、そちらを採用しようではありませんか」
「よろしいのですか?」
「ええ、肌が合わないと、恥ずかしくて帰って行くかもしれません。しかし、セナ様は面白いことを考えられる」
酷い案が採用されそうにはなっているが、別の案も考えなくてはならない。
「大公様は放任なのですか?」
「いえ、もし問題を起こせば、きちんと対処されると思いますよ。いくら自由と言っても限度はありますからな。特に公女となれば、その責任も重い」
父親であるジェネヴィーヴ大公はまともなようだ、今まで問題があるようなことも聞いたことがなかったので、処罰するようなことになれば任せてしまおう。
「おそらく随分と自分に価値があると思っているのでしょうね」
「ないとは言いませんが、我が国には合いませんわね」
「その通りですわね。私の夫は好みではないかしら?あれは、傾国の美男子らしいですから、使えないかしら」
セナリアンが生贄に思い付いたのは、不確実な特性を持つ自身の夫だった。
「そ、そのようなことはなりません。公爵家の嫡男ございましょう?」
「でも義両親もしっかり役に立ちなさいと、送り出してくれると思うのだけど…」
「そのような感じなのですね」
セナリアンの家族での立ち位置を、即座に察知した両陛下であった。
だが、ヒアルの考えによって、ある作戦が実行されることになった。
420
お気に入りに追加
1,530
あなたにおすすめの小説
誰にも信じてもらえなかった公爵令嬢は、もう誰も信じません。
salt
恋愛
王都で罪を犯した悪役令嬢との婚姻を結んだ、東の辺境伯地ディオグーン領を治める、フェイドリンド辺境伯子息、アルバスの懺悔と後悔の記録。
6000文字くらいで摂取するお手軽絶望バッドエンドです。
*なろう・pixivにも掲載しています。
旦那様、離縁の申し出承りますわ
ブラウン
恋愛
「すまない、私はクララと生涯を共に生きていきたい。離縁してくれ」
大富豪 伯爵令嬢のケイトリン。
領地が災害に遭い、若くして侯爵当主なったロイドを幼少の頃より思いを寄せていたケイトリン。ロイド様を助けるため、性急な結婚を敢行。その為、旦那様は平民の女性に癒しを求めてしまった。この国はルメニエール信仰。一夫一妻。婚姻前の男女の行為禁止、婚姻中の不貞行為禁止の厳しい規律がある。旦那様は平民の女性と結婚したいがため、ケイトリンンに離縁を申し出てきた。
旦那様を愛しているがため、旦那様の領地のために、身を粉にして働いてきたケイトリン。
その後、階段から足を踏み外し、前世の記憶を思い出した私。
離縁に応じましょう!未練なし!どうぞ愛する方と結婚し末永くお幸せに!
*女性軽視の言葉が一部あります(すみません)
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【完結】この運命を受け入れましょうか
なか
恋愛
「君のようは妃は必要ない。ここで廃妃を宣言する」
自らの夫であるルーク陛下の言葉。
それに対して、ヴィオラ・カトレアは余裕に満ちた微笑みで答える。
「承知しました。受け入れましょう」
ヴィオラにはもう、ルークへの愛など残ってすらいない。
彼女が王妃として支えてきた献身の中で、平民生まれのリアという女性に入れ込んだルーク。
みっともなく、情けない彼に対して恋情など抱く事すら不快だ。
だが聖女の素養を持つリアを、ルークは寵愛する。
そして貴族達も、莫大な益を生み出す聖女を妃に仕立てるため……ヴィオラへと無実の罪を被せた。
あっけなく信じるルークに呆れつつも、ヴィオラに不安はなかった。
これからの顛末も、打開策も全て知っているからだ。
前世の記憶を持ち、ここが物語の世界だと知るヴィオラは……悲運な運命を受け入れて彼らに意趣返す。
ふりかかる不幸を全て覆して、幸せな人生を歩むため。
◇◇◇◇◇
設定は甘め。
不安のない、さっくり読める物語を目指してます。
良ければ読んでくだされば、嬉しいです。
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる