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第24話
婚約者と貴重な公女2(ヨバス王国)
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「受け取り方にもよりますが、揶揄うのと馬鹿にするのは違うでしょう?今日の様に傲慢な態度で言われたら、馬鹿にしていると思わざる得ませんわね。フランシス嬢のことを知っているのね?」
「話したわけではないのですが、そう思っていると言っていいと思います」
婚約者はフランシスに決まったと思ってはいるが、まだ発表はしておらず、だからこそ近付いてきているのかもしれない。
「フランシス嬢とエイベルは、短期留学の際も手紙をやり取りしていて、公女にやり取りしている相手を聞かれて、幼なじみだと言うと、好きなのかと揶揄われて、その時はそのような間柄ではなかったのですが、公女にとってはあの頃からと思っているのかもしれません」
それならば、年上として、素直に喜んであげればいいと思うが、そうはいかない何かがあるのだろう。
「あの事件が起こって、やっとここまで来たのに」
「それでなくとも、あの事件の後、塞ぎ込んでしまって、女性不振気味なんです」
事件とはセナリアンが鑑定をした不法侵入、性的暴行並びに妊娠騒動である。十六歳のエイベルには大きな傷となった。
だからこそ、エイベルは二十一歳になっても一人も婚約者がいなかった。
フランシスのことも遠ざけていたこともあったが、少しずつ前のような関係に戻り、ようやく婚約をしようというところまで辿り着いたのだ。
今回のパーティーは最後の見極めのようなもので、だからこそセナリアンが呼ばれているのだ。
「実は到着した際に私の方が価値があるのに、何も見えていないのねなどとも言われたそうで…警備は厳重にはしていたんですけどね」
「また前のようなことになったら、堪りませんからね」
相手は二十六歳ならば、身体を使うような真似をする可能性もある。
「ええ、含みの言葉だけで、返すわけにはいきませんからね」
「エイベル殿下が今二十一歳ですから、公女は二十六歳ということですよね?婚約もされていないのですか」
いくら恋愛結婚が主流で、自由なお国柄のイシュバン公国でも、二十六歳の公女ではさすがに結婚を考えているのではないだろうか。
「はい、そのようです」
「一度も?」
「はい」
「他のきょうだいも?」
「確か、兄君と妹君は既に結婚されているはずです」
「今回はどうして誘われたのですか?」
「エイベルに是非行きたいと手紙が届いたようで、相手は公女ですから、お誘いしたのです」
ヨバス王国は危険なことであれば別だが、ちょっと面倒な人だからということで、拒否するような考えではないので、不思議ではない。
「イシュバン公国に行った際に、調べてくれば良かったわね」
「イシュバン公国に?」
「ええ、野暮用で行ったのですが、大公家は関わらなかったので。ジョンラ、ヒアルは何か知っている?」
イリクス・コモーランが目的だったのもあるが、あまりの気分の悪さに、さっさと帰って来ていた。
「いえ…これと言った情報は」
「私もです、ですが何か引っかかっておりまして」
「そう?閃いたら教えて」
「はい!」
ヒアルは先程から、何やらずっと考えている。
「ジェネヴィーヴ公女は、まだ運命の相手に出会えていないから、結婚していないだけと仰っているようで、エイベルに待っててあげたのにとも言われたようです」
「成長するのを待っていたというの?五つも年下の子に?待ってて欲しいとも言われていないのに?」
「仰る通りです。ですが、イシュバン公国に、事を荒立てたくはないので、大人しく引いてくれるの良いのですがね」
「エイベルもフランシスも強く出る子ではないから」
「そこがいいのではありませんか、ヨバス国に相応しいお二人だと思いますよ」
ヨバス王国はおおらかな国柄なのである、弱きを助け、誤った者を導くような優しさを持っている。
エメラルダと同じく聖女を治癒師や神官と変えたのも、ヨバスでは近年は聖女、聖女と負担を大きくしないように周りも気を配っていたため、早くすればよかったと言われるほど受け入れも早かった。
「話したわけではないのですが、そう思っていると言っていいと思います」
婚約者はフランシスに決まったと思ってはいるが、まだ発表はしておらず、だからこそ近付いてきているのかもしれない。
「フランシス嬢とエイベルは、短期留学の際も手紙をやり取りしていて、公女にやり取りしている相手を聞かれて、幼なじみだと言うと、好きなのかと揶揄われて、その時はそのような間柄ではなかったのですが、公女にとってはあの頃からと思っているのかもしれません」
それならば、年上として、素直に喜んであげればいいと思うが、そうはいかない何かがあるのだろう。
「あの事件が起こって、やっとここまで来たのに」
「それでなくとも、あの事件の後、塞ぎ込んでしまって、女性不振気味なんです」
事件とはセナリアンが鑑定をした不法侵入、性的暴行並びに妊娠騒動である。十六歳のエイベルには大きな傷となった。
だからこそ、エイベルは二十一歳になっても一人も婚約者がいなかった。
フランシスのことも遠ざけていたこともあったが、少しずつ前のような関係に戻り、ようやく婚約をしようというところまで辿り着いたのだ。
今回のパーティーは最後の見極めのようなもので、だからこそセナリアンが呼ばれているのだ。
「実は到着した際に私の方が価値があるのに、何も見えていないのねなどとも言われたそうで…警備は厳重にはしていたんですけどね」
「また前のようなことになったら、堪りませんからね」
相手は二十六歳ならば、身体を使うような真似をする可能性もある。
「ええ、含みの言葉だけで、返すわけにはいきませんからね」
「エイベル殿下が今二十一歳ですから、公女は二十六歳ということですよね?婚約もされていないのですか」
いくら恋愛結婚が主流で、自由なお国柄のイシュバン公国でも、二十六歳の公女ではさすがに結婚を考えているのではないだろうか。
「はい、そのようです」
「一度も?」
「はい」
「他のきょうだいも?」
「確か、兄君と妹君は既に結婚されているはずです」
「今回はどうして誘われたのですか?」
「エイベルに是非行きたいと手紙が届いたようで、相手は公女ですから、お誘いしたのです」
ヨバス王国は危険なことであれば別だが、ちょっと面倒な人だからということで、拒否するような考えではないので、不思議ではない。
「イシュバン公国に行った際に、調べてくれば良かったわね」
「イシュバン公国に?」
「ええ、野暮用で行ったのですが、大公家は関わらなかったので。ジョンラ、ヒアルは何か知っている?」
イリクス・コモーランが目的だったのもあるが、あまりの気分の悪さに、さっさと帰って来ていた。
「いえ…これと言った情報は」
「私もです、ですが何か引っかかっておりまして」
「そう?閃いたら教えて」
「はい!」
ヒアルは先程から、何やらずっと考えている。
「ジェネヴィーヴ公女は、まだ運命の相手に出会えていないから、結婚していないだけと仰っているようで、エイベルに待っててあげたのにとも言われたようです」
「成長するのを待っていたというの?五つも年下の子に?待ってて欲しいとも言われていないのに?」
「仰る通りです。ですが、イシュバン公国に、事を荒立てたくはないので、大人しく引いてくれるの良いのですがね」
「エイベルもフランシスも強く出る子ではないから」
「そこがいいのではありませんか、ヨバス国に相応しいお二人だと思いますよ」
ヨバス王国はおおらかな国柄なのである、弱きを助け、誤った者を導くような優しさを持っている。
エメラルダと同じく聖女を治癒師や神官と変えたのも、ヨバスでは近年は聖女、聖女と負担を大きくしないように周りも気を配っていたため、早くすればよかったと言われるほど受け入れも早かった。
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