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第23話

閑話 ファーマス子爵家3

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「あの…セナは、子どもの頃はどんな感じでしたか?コルロンド家での様子とか」
「マージナル様は、本当にセナ様がお好きなんですね」

 マージナルは優しい瞳で、しみじみ言うクレオンに首を傾げた。

「いえ、セナ様のこととなると、魔術のことばかり聞かれるので、新鮮です」
「愛していますから!」

 クレオンは結婚して子どももいるのに、恥ずかしげもなく言い切り、キラキラさを増すマージナルに眩しさを感じた。

「一目惚れなんて安易に使いたくはないですが、初めて見た時に眠れずに朝を迎えました。父に頼んではみましたが、公爵家でもコルロンド家の直系は競争率が高いと言われ、それでもどうにかと婚約を打診したのですが、断られてしまい、今度は泣き疲れて朝を迎えました」

 マージナル少年、淡い初恋ではなく、しつこい初恋の始まりである。

「そ、それは…何と言えばよろしいのか…」
「両親も折を見て、義両親に売り込んでくれていたようで、何とかここまで漕ぎ着けました」

 誇らしそうに胸を張っているが、セナリアンにはあまり伝わっていないことを知っているクレオンは、何とかフォローしなくてはと思った。

「セナ様は色恋に疎いというよりは、重きを置けない境遇ですから、マージナル様に出会えて良かったと思います」
「ありがとうございますっ!」

 マージナルは少年のような笑顔で、弾けた声を上げ、ひと悶着あった結婚だと知っているが、一生愛し続けそうな様子に、心から良かったとクレオンは思った。

 言うつもりはないが、ファーマス家でセナ様は一体どのような方と結婚するのが幸せなのかと、本気で家族会議が開かれたこともある。

「セナ様の子どもの頃の話ですよね…」
「はい!」
「幼いことから優秀でしたので、正直…今とあまり変わらないですね。振り回されたとしても、待っているのは成果でしたから」
「親子鑑定とか?」
「はい、ただ…セナ様がたまに暑い日に、アイスを食べたいと言い出すことがありまして。アイくらいで、何味がいい?ってジュシ様がおっしゃって」
「想像が出来ます」

 ジュシ殿がセナリアンに優しい顔を向ける姿が、容易に想像が出来る。

「はい、そこから買いに行こうとするジュシ様に私が行きますと、うちの父と揉める訳です。いや、私が頼まれたから、それを頼まれるのが私でしょうと。さらに別の魔術師もいますから、私たちが買って来ますと、またややこしくなって」

 いい大人が本気で、わちゃわちゃと揉めている光景である。

「それをリルラビエ様に気付かれた際は、早く買って来なさいと怒られて終わるのですけど、時間が掛かるわけです。これが今回は私がになって、毎回繰り返されるんです。セナ様は買って来たら、教えてくれるだろうと思っているので、飄々と別のことをされています」
「それも想像が出来ます。効率がいいことが、セナリアンは好きですから。ずっと可愛かったんだろうな」

 マージナルは初めて会った時、イエローのドレスを着た、天使のような四歳のセナリアンを思い出していた。

「セナ様は必要なものは言いますが、あれが欲しいなんて、まず言うことがないものですから、争奪戦なんですよ。アイスを買ってきたことですら誇りなのです」
「確かに…強請られたことはないような気がします。私も言われたら買いに走る自信があります」
「ええ、私も走ります。ただコルロンド家は我が我がと…私は未だに買いに行けたことはありません。子どもの頃はそれを私も頂いていたんですけども」

 クレオンも当時は子どもだったので、ちゃっかり美味しいアイスのおこぼれを貰い、セナリアンと美味しいねと食べていたが、それは言わないことにした。

「羨ましい…今度、食べに行こうと誘ってみようかな」
「暑い日が良いと思います」

 うんうんと嬉しそうに頷くマージナルが、セナリアンに懐いている子どもの様で、もはや可愛いとすら思えたのだった。


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お気に入りに入れていただいている皆様、誠にありがとうございました。

閑話もこちらで終了となります。
お読みいただきありがとうございました。

また清書が出来ましたら、よろしくお願いいたします。
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