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第23話

閑話 ファーマス子爵家1

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 同じ子爵家ではあるのだが、コルロンド家の分家とも言われるのが、現在ジョンラが当主を務めるファーマス家である。カサブランカの誕生に伴い、陞爵よりも望んだのはコルロンド家を支える家であった。

 子どもたちの魔術の指導も行うことになったため、顔を合わせることはあったが、改めてグロー公爵家本邸に挨拶に来た。

「セナ様、お会いしたかったです」
「この前も会ったじゃない」
「二週間も、経ちます」

 ミシェルに結果を報告したのが最後だった。

「たった二週間じゃない。クレオンも、この前はありがとう」
「いえ、両親がいつもすみません」
「あれ?母はどうしたの?」
「出る時にあれもこれもと言い出して、父と揉めて、先に来たんです」

 改めてクレオンに、夫のマージナルですと紹介を終え、とりあえず座りましょうかという時に、再びセナリアンを呼ぶ声が聞こえ出し、クレオンは渋い顔をしながら、マージナルに母ですと告げた。

 どんな屈強な女性なのかとマージナルは身構えた。

 グロー公爵家本邸は基本的にはマナーを必要とするが、別邸はセナリアンの仲間も度々訪れるためにマナーは甘く、出入りを許されている者には各々に目こぼしをという意味も含めて、特殊な装飾品を渡してあり、出入りが可能となっている。

 そして本日、ジョンラは何度も来ているが、クレオンと母もセナリアン特製のピンブローチを付け、初めての訪問となっている。

「セナ様~!!」
「ヒアル」

 ヒアルは両手一杯に、酒とお菓子を抱えていた。

「お会いしたかったです!これ、おすすめのお酒と子どもたちにお菓子です」
「夫婦揃って同じことを言うのね、ありがとう」
「げっ」

 喋り方と顔が一致しないというのは、こういうことを言うのだろう。可憐という言葉がぴったりな女性であった。一体いくつなのだろうと問いたくなるほどであった。お土産を置くと、セナリアンをぎゅうぎゅうと抱きしめている。

 マージナルはこういった場面で、蔑ろにされることはまずない生活を送ってきたために、唖然としていたが、セナリアンが、トップオブトップということを改めて感じる場面であった。

 ヒアル夫人にもマージナルを紹介され、最高の奥様を貰って幸せ者でございますねと、言われるほどだった。

 そして、揃って本邸に挨拶に行き、セナリアンとファーマス夫妻は子どもたちのところへ行き、マージナルはクレオンと待つこととなった。

 公爵令息ということで、緊張させるかもしれないと思ったが、クレオンにそんな様子はなく、ホッと一息という顔でお茶を飲んでいる。セナリアンと一緒にいる以上、マージナルくらいでは緊張しない。

「はあ、色々申し訳ございません」
「いや、謝られることは一切ないですよ。こちらこそ、子どもの指導をありがたいと思っています」

 子どもたちへ魔術の指導は、セナリアンは忙しくて難しいため、コルロンド家とファーマス家が行うことになった。

「そう言ってもらえるとありがたいです。父は表向きはしれっとしていますが、母と同じくらい過激派で…」
「過激派…?」
「ええ、愛すべき敬うべき最上級だと、上も下もないセナ様だけだと」
「なるほど…」
「コルロンド家にも了承されているので、問題にはならないのですが、何というか、セナ様がよくおっしゃることがあるのですが…」
「何ですか?」
「おむつも変えた子に、ここまで狂信が出来るのはなぜなのだろうと、気付いたら下僕のようになっていたそうです」

 そうなのである、最初は先祖返りと知っても、ここまで酷くはなかった。しかし、セナリアンの功績に、目の色がどんどん変わって来て、この有様である。

 マージナルも自身の父親がシャーロット様の隠れファンであるため、無言でニコニコしていたり、何となくクレオンの立ち位置を察した。
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