187 / 228
第23話
閑話 ファーマス子爵家1
しおりを挟む
同じ子爵家ではあるのだが、コルロンド家の分家とも言われるのが、現在ジョンラが当主を務めるファーマス家である。カサブランカの誕生に伴い、陞爵よりも望んだのはコルロンド家を支える家であった。
子どもたちの魔術の指導も行うことになったため、顔を合わせることはあったが、改めてグロー公爵家本邸に挨拶に来た。
「セナ様、お会いしたかったです」
「この前も会ったじゃない」
「二週間も、経ちます」
ミシェルに結果を報告したのが最後だった。
「たった二週間じゃない。クレオンも、この前はありがとう」
「いえ、両親がいつもすみません」
「あれ?母はどうしたの?」
「出る時にあれもこれもと言い出して、父と揉めて、先に来たんです」
改めてクレオンに、夫のマージナルですと紹介を終え、とりあえず座りましょうかという時に、再びセナリアンを呼ぶ声が聞こえ出し、クレオンは渋い顔をしながら、マージナルに母ですと告げた。
どんな屈強な女性なのかとマージナルは身構えた。
グロー公爵家本邸は基本的にはマナーを必要とするが、別邸はセナリアンの仲間も度々訪れるためにマナーは甘く、出入りを許されている者には各々に目こぼしをという意味も含めて、特殊な装飾品を渡してあり、出入りが可能となっている。
そして本日、ジョンラは何度も来ているが、クレオンと母もセナリアン特製のピンブローチを付け、初めての訪問となっている。
「セナ様~!!」
「ヒアル」
ヒアルは両手一杯に、酒とお菓子を抱えていた。
「お会いしたかったです!これ、おすすめのお酒と子どもたちにお菓子です」
「夫婦揃って同じことを言うのね、ありがとう」
「げっ」
喋り方と顔が一致しないというのは、こういうことを言うのだろう。可憐という言葉がぴったりな女性であった。一体いくつなのだろうと問いたくなるほどであった。お土産を置くと、セナリアンをぎゅうぎゅうと抱きしめている。
マージナルはこういった場面で、蔑ろにされることはまずない生活を送ってきたために、唖然としていたが、セナリアンが、トップオブトップということを改めて感じる場面であった。
ヒアル夫人にもマージナルを紹介され、最高の奥様を貰って幸せ者でございますねと、言われるほどだった。
そして、揃って本邸に挨拶に行き、セナリアンとファーマス夫妻は子どもたちのところへ行き、マージナルはクレオンと待つこととなった。
公爵令息ということで、緊張させるかもしれないと思ったが、クレオンにそんな様子はなく、ホッと一息という顔でお茶を飲んでいる。セナリアンと一緒にいる以上、マージナルくらいでは緊張しない。
「はあ、色々申し訳ございません」
「いや、謝られることは一切ないですよ。こちらこそ、子どもの指導をありがたいと思っています」
子どもたちへ魔術の指導は、セナリアンは忙しくて難しいため、コルロンド家とファーマス家が行うことになった。
「そう言ってもらえるとありがたいです。父は表向きはしれっとしていますが、母と同じくらい過激派で…」
「過激派…?」
「ええ、愛すべき敬うべき最上級だと、上も下もないセナ様だけだと」
「なるほど…」
「コルロンド家にも了承されているので、問題にはならないのですが、何というか、セナ様がよくおっしゃることがあるのですが…」
「何ですか?」
「おむつも変えた子に、ここまで狂信が出来るのはなぜなのだろうと、気付いたら下僕のようになっていたそうです」
そうなのである、最初は先祖返りと知っても、ここまで酷くはなかった。しかし、セナリアンの功績に、目の色がどんどん変わって来て、この有様である。
マージナルも自身の父親がシャーロット様の隠れファンであるため、無言でニコニコしていたり、何となくクレオンの立ち位置を察した。
子どもたちの魔術の指導も行うことになったため、顔を合わせることはあったが、改めてグロー公爵家本邸に挨拶に来た。
「セナ様、お会いしたかったです」
「この前も会ったじゃない」
「二週間も、経ちます」
ミシェルに結果を報告したのが最後だった。
「たった二週間じゃない。クレオンも、この前はありがとう」
「いえ、両親がいつもすみません」
「あれ?母はどうしたの?」
「出る時にあれもこれもと言い出して、父と揉めて、先に来たんです」
改めてクレオンに、夫のマージナルですと紹介を終え、とりあえず座りましょうかという時に、再びセナリアンを呼ぶ声が聞こえ出し、クレオンは渋い顔をしながら、マージナルに母ですと告げた。
どんな屈強な女性なのかとマージナルは身構えた。
グロー公爵家本邸は基本的にはマナーを必要とするが、別邸はセナリアンの仲間も度々訪れるためにマナーは甘く、出入りを許されている者には各々に目こぼしをという意味も含めて、特殊な装飾品を渡してあり、出入りが可能となっている。
そして本日、ジョンラは何度も来ているが、クレオンと母もセナリアン特製のピンブローチを付け、初めての訪問となっている。
「セナ様~!!」
「ヒアル」
ヒアルは両手一杯に、酒とお菓子を抱えていた。
「お会いしたかったです!これ、おすすめのお酒と子どもたちにお菓子です」
「夫婦揃って同じことを言うのね、ありがとう」
「げっ」
喋り方と顔が一致しないというのは、こういうことを言うのだろう。可憐という言葉がぴったりな女性であった。一体いくつなのだろうと問いたくなるほどであった。お土産を置くと、セナリアンをぎゅうぎゅうと抱きしめている。
マージナルはこういった場面で、蔑ろにされることはまずない生活を送ってきたために、唖然としていたが、セナリアンが、トップオブトップということを改めて感じる場面であった。
ヒアル夫人にもマージナルを紹介され、最高の奥様を貰って幸せ者でございますねと、言われるほどだった。
そして、揃って本邸に挨拶に行き、セナリアンとファーマス夫妻は子どもたちのところへ行き、マージナルはクレオンと待つこととなった。
公爵令息ということで、緊張させるかもしれないと思ったが、クレオンにそんな様子はなく、ホッと一息という顔でお茶を飲んでいる。セナリアンと一緒にいる以上、マージナルくらいでは緊張しない。
「はあ、色々申し訳ございません」
「いや、謝られることは一切ないですよ。こちらこそ、子どもの指導をありがたいと思っています」
子どもたちへ魔術の指導は、セナリアンは忙しくて難しいため、コルロンド家とファーマス家が行うことになった。
「そう言ってもらえるとありがたいです。父は表向きはしれっとしていますが、母と同じくらい過激派で…」
「過激派…?」
「ええ、愛すべき敬うべき最上級だと、上も下もないセナ様だけだと」
「なるほど…」
「コルロンド家にも了承されているので、問題にはならないのですが、何というか、セナ様がよくおっしゃることがあるのですが…」
「何ですか?」
「おむつも変えた子に、ここまで狂信が出来るのはなぜなのだろうと、気付いたら下僕のようになっていたそうです」
そうなのである、最初は先祖返りと知っても、ここまで酷くはなかった。しかし、セナリアンの功績に、目の色がどんどん変わって来て、この有様である。
マージナルも自身の父親がシャーロット様の隠れファンであるため、無言でニコニコしていたり、何となくクレオンの立ち位置を察した。
455
お気に入りに追加
1,518
あなたにおすすめの小説
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
王子妃だった記憶はもう消えました。
cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。
元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。
実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。
記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。
記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。
記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。
★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日)
●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので)
●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。
敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。
●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
誰にも信じてもらえなかった公爵令嬢は、もう誰も信じません。
salt
恋愛
王都で罪を犯した悪役令嬢との婚姻を結んだ、東の辺境伯地ディオグーン領を治める、フェイドリンド辺境伯子息、アルバスの懺悔と後悔の記録。
6000文字くらいで摂取するお手軽絶望バッドエンドです。
*なろう・pixivにも掲載しています。
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。
豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」
「はあ?」
初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた?
脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ?
なろう様でも公開中です。
何を間違った?【完結済】
maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。
彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。
今真実を聞いて⋯⋯。
愚かな私の後悔の話
※作者の妄想の産物です
他サイトでも投稿しております
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる