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第23話

向こう見ずな計画15

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「ありましたか」

 セナリアンは過去の記録を、陛下に調べてもらうようにお願いしてあった結果が出て、ミシェルと共に王宮の執務室にいた。

「あった、確認できたのは二件だ」
「どうなっておったのだ」
「はい、一件は既に両家ともありませんが、約八十年前にパスルナ伯爵家。妻となったスノット子爵家の養子になった令嬢が、魔力のない子を産んでいました」

 出生記録だけで分かることは限られ、全員というのは難しいだろうから、平民から貴族、貴族も爵位の上の養子になったというケースを調べてもらっていた。

「子は?」
「親子鑑定も出来ませんから、不貞だと決め付けられて離縁されておりました。子爵家からも養子ですから追い出されていて、足取りは不明でした」
「そうか、親子鑑定があったとしても、魔力がない子は難しいかもしれぬな」

 現在よりも魔力がない人間の働くところも少なく、不貞とされたとなると、状況は厳しいものだっただろう。

「はい、そしてもう一件は百年前で、王家です」
「王家!?そのような者はおらぬかっただろう」
「公にはと言うことです」
「誰だ?曾祖父か、高祖父か」
「いえ、トーソア殿下です」

 トーソア殿下は陛下の高祖父の兄で、王太子であったが、亡くなったために高祖父が国王になっている。

「トーソア殿下か…」
「どのような方なのです?」
「才能のある方だったのは間違いないそうだが、同時に人と違うこと、やっていないことをやりたがる人だったそうだ」
「へえ、その方の子が魔力がなかったと?」
「ああ、他国の平民の踊り子だったそうで、気に入って、魔力があったために愛妾としたが、魔力のない子が生まれたと…」
「愛妾は処分されたのか」
「はい、当時は不貞の証だとされたでしょうからね。実は逃がしたかもしれませんが、そう書いてありました。王家の記録からはいなかったことになっています」
「愛妾であれば消されるだろうな」

 現在も父も祖父の時代も側室、愛妾もいない。条件は現在も残っており、側妃は必要がある場合、愛妾は国が認めた者ではないため、予算すら出ない。

「この平民の出は、詳しくは分かりませんでした」
「貴族より平民の方が、出生が分かりませんからね。告知はしない方がいいだろうと、魔法省でも意見が一致しています」

 セナリアンの力で探し出して、チームが調査を行うが、告知はしない。

 貴族であれば対応が必要だろうが、平民であれば、問題がある可能性の方が低く、生活を乱すことになり兼ねないため、測定に来ない限りは動くことはない。

「そうだな…」
「これからはあり得るということを、徐々に周知させていく予定になっています。魔力がなくても出来ることは沢山あります。私も明日なくなったとしても、構わないと思って生きていますよ」
「セナちゃんっ!」

 ミシェルは感動する瞳でセナリアンを見つめ、陛下とクーリットはこういったところが、ミシェルの好むところなのだなと感じた。

「そうだな、我が国は魔力の恩恵を受けてはいるが、別の道もきちんと示して来たつもりだ。魔力がある者が使わなくとも、魔力のない者が魔術の研究者になることも出来る」

 持っていないからこその視点で、新しい発見もあり、持っているから使わなくても生きていける。

「ええ、出来ないこともありますが、希望は持って欲しいとは思います。ただ子に関してだけはやはり難しいことが多いのも事実。だからこそ先祖返りが生まれるのかもしれませんね」
「なるほど…私は思うに、我が国は爵位よりも魔力、他国は魔力よりも爵位なだけではないか」
「ええ、そうとも言えますね」

 テンポラリーは全ての組み換えが終わり、一年が経ってから、魔法省によって魔力がゼロの父と魔力の器を持った母から、仮魔力を持つテンポラリーというタイプが生まれること。生活するのに問題はないこと。

 ただし、調査の結果、テンポラリーは男子の場合は、魔力を持たないことが分かり、女子の場合は魔力があっても初潮が始まるとなくなり、魔力を持つ男性との間に子どもを産んでも、魔力を持たない子が生まれると、発表された。

 ポテトは自分のことだとは思わず、関係ないと気にもしなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

お気に入りに入れていただいている皆様、誠にありがとうございました。

テンポラリー編?ポテト編?はこれで終わりとさせていただきます。
明日からは閑話を投稿させていただきます。

また清書出来ましたら、順次投稿させていただきます。

よろしくお願いいたします。
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