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第23話
向こう見ずな計画11
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「もう面倒です、ポテト・ブブスラー!偽名はここまで、ここからは真名であるブブスラーで呼びます」
ポテトは目を見開き、孤児院に入れられた時から、フェアリー・ルピーと名乗って、バレたこともなかった。
どう言い訳しようか頭を巡らせ、違うといっても嘘を言っていると思われている自分が信じてもらえるのかと、言葉が出なかった。校長がどういうことでしょうかと問うこととなった。
「この者の真名はホープ・ブブスラーとジャスミン・ブブスラーの娘、ポテト・ブブスラーです。現在の名は偽名。貴族と偽ったわけではないけれど、スパイと間違われてもおかしくないこと。分かっているの?」
全てがバレているのだと思ったポテトは、開き直った。
「だって、可愛くないんだもの!私に似合わないでしょ」
「そんなことは知らぬ!真名がある以上、偽名はもう通用しない!名前を偽って、学園に通うことの処罰は学園に任せます」
校長と教頭は魔術師に向けて、頭を下げた。
緊張感のある場のために失笑は起きなかったが、皆が顔を見合わせて、どういうことだと意思疎通している。
「今のところ、器が強化されるといった事例はありません!ファウダン侯爵令息、そんなことが出来れば、皆がやっていると思いませんか」
「こっそりやっているのかと…好きな相手でも魔力のことで結ばれないなんて、理不尽ではないですか!」
いくら想い合っても結ばれないのは不幸ではある、だが婚約者がいる者の言っていい台詞ではない。
「理不尽ねぇ?ではせめて婚約を解消すべきではないか?」
「あっ、いや…」
「都合よく扱えるから?そんな者が理不尽などと言う資格があるのか?侯爵令息でもあろう者が、相手の気持ちにもなれないとは、嘆かわしい」
「っ」
リーズラー伯爵令嬢や、爵位の下の者には偉そうにしているそうだが、恋に溺れた愚かな青年でしかない。
「こちらの国は魔力の恩恵を受けているではありませんか、それも理不尽だと?どうしても好いた相手なら、何でもできるというのならば、平民になるなり、特例を使うなり、体の関係を結ばず、寄り添う方もいるそうではありませんか。そうすればいいのですよ」
セナリアンが生まれる前、男性側の魔力をなくせばいいのでは?という案もあったが、エラーと同じで、生まれ持った質を奪うことで、どんな弊害が出るか分からないからと、却下されたこともある。
それでも同じように考え、愛する人と結ばれたいがために、勝手に薬草を調合して自己流で魔力を消した男性もおり、一年も生きられず、子どもも出来なかった。
「でもそれは…」
「全部欲しいなんて、赤子くらいしか許されませんよ!あなたは赤子なのですか?」
「ッッッ!」
「殺したい願望があったとしても即刻止めなさい。彼女はこのままでは死にますよ」
「死ぬ?」
「ええ、このまま続ければ待っているのは衰弱と、死のみです」
「…そんな」
実感はなかったが、ロミックはいずれ実を結ぶと信じていた。ソフィアも辛いけど、侯爵令息であるロミックと結ばれるためにと頑張っていた。
不貞行為でしかないことを、純愛だとすり替えて。
ポテトは怒られたので、黙って成り行きを見ていたが、自分のことを話していると思っているため、死ぬってどういうことなのだろうかと、怖くなった。
今度はポテトは、ちゃんと手を挙げた。
「ブブスラー、何ですか?」
「死ぬって何ですか…私、死ぬんですか?」
「いいえ、あなたは死にません」
「えっ、でも」
「質問は以上ですか?」
「はい、死なないんですよね?」
「はい、死にません」
ポテトはどこか腑に落ちなかったが、再び黙るしかなかった。
ミトイ子爵令息、コミラン子爵令息も同様で、事情を知っているラーリッツ・ノート伯爵令息だけが、状況を理解していた。
ポテトは目を見開き、孤児院に入れられた時から、フェアリー・ルピーと名乗って、バレたこともなかった。
どう言い訳しようか頭を巡らせ、違うといっても嘘を言っていると思われている自分が信じてもらえるのかと、言葉が出なかった。校長がどういうことでしょうかと問うこととなった。
「この者の真名はホープ・ブブスラーとジャスミン・ブブスラーの娘、ポテト・ブブスラーです。現在の名は偽名。貴族と偽ったわけではないけれど、スパイと間違われてもおかしくないこと。分かっているの?」
全てがバレているのだと思ったポテトは、開き直った。
「だって、可愛くないんだもの!私に似合わないでしょ」
「そんなことは知らぬ!真名がある以上、偽名はもう通用しない!名前を偽って、学園に通うことの処罰は学園に任せます」
校長と教頭は魔術師に向けて、頭を下げた。
緊張感のある場のために失笑は起きなかったが、皆が顔を見合わせて、どういうことだと意思疎通している。
「今のところ、器が強化されるといった事例はありません!ファウダン侯爵令息、そんなことが出来れば、皆がやっていると思いませんか」
「こっそりやっているのかと…好きな相手でも魔力のことで結ばれないなんて、理不尽ではないですか!」
いくら想い合っても結ばれないのは不幸ではある、だが婚約者がいる者の言っていい台詞ではない。
「理不尽ねぇ?ではせめて婚約を解消すべきではないか?」
「あっ、いや…」
「都合よく扱えるから?そんな者が理不尽などと言う資格があるのか?侯爵令息でもあろう者が、相手の気持ちにもなれないとは、嘆かわしい」
「っ」
リーズラー伯爵令嬢や、爵位の下の者には偉そうにしているそうだが、恋に溺れた愚かな青年でしかない。
「こちらの国は魔力の恩恵を受けているではありませんか、それも理不尽だと?どうしても好いた相手なら、何でもできるというのならば、平民になるなり、特例を使うなり、体の関係を結ばず、寄り添う方もいるそうではありませんか。そうすればいいのですよ」
セナリアンが生まれる前、男性側の魔力をなくせばいいのでは?という案もあったが、エラーと同じで、生まれ持った質を奪うことで、どんな弊害が出るか分からないからと、却下されたこともある。
それでも同じように考え、愛する人と結ばれたいがために、勝手に薬草を調合して自己流で魔力を消した男性もおり、一年も生きられず、子どもも出来なかった。
「でもそれは…」
「全部欲しいなんて、赤子くらいしか許されませんよ!あなたは赤子なのですか?」
「ッッッ!」
「殺したい願望があったとしても即刻止めなさい。彼女はこのままでは死にますよ」
「死ぬ?」
「ええ、このまま続ければ待っているのは衰弱と、死のみです」
「…そんな」
実感はなかったが、ロミックはいずれ実を結ぶと信じていた。ソフィアも辛いけど、侯爵令息であるロミックと結ばれるためにと頑張っていた。
不貞行為でしかないことを、純愛だとすり替えて。
ポテトは怒られたので、黙って成り行きを見ていたが、自分のことを話していると思っているため、死ぬってどういうことなのだろうかと、怖くなった。
今度はポテトは、ちゃんと手を挙げた。
「ブブスラー、何ですか?」
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「いいえ、あなたは死にません」
「えっ、でも」
「質問は以上ですか?」
「はい、死なないんですよね?」
「はい、死にません」
ポテトはどこか腑に落ちなかったが、再び黙るしかなかった。
ミトイ子爵令息、コミラン子爵令息も同様で、事情を知っているラーリッツ・ノート伯爵令息だけが、状況を理解していた。
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