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第22話
召喚姫6(アザンゼル王国)
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結局、食べ物をメインに、おもちゃや子ども服も届いた。
その都度、ルセルとジュジュには手紙が届くのだが、それにいよいよ怒ったのがマージナル。父親とは思えない姿で、何で私には届かないんだ!と言い出し、当たり前だろうと皆は思ったが、本人は至って正気だった。
終いにはルセルの手紙を奪おうとして怒られると、幼いジュジュの手紙まで奪おうとしたが、手紙の端をキュッと握ったジュジュにさすがに良心が痛んだそうだ。
ルラーラは情けない息子で恥ずかしいと落ち込んでしまった。
―――そして六日後、ようやくレイ・スズキの詳細が分かった。
年齢は二十九歳。
疫病の危険性はなく、怪我をしているようではあったが、その他は問題なし。
魔力は持っておらず、いわゆる聖女の力(浄化・治癒)のみが使えることが分かった。戦闘には向かないということだ。
ただし、聖女という部類は愛されるべきということなのか、魅了を持っていた。他国のことであったが、異世界人のせいか、今まで見た聖女の中で一番多かったため、眠っている間にセナリアンが封印した。自覚が無くとも操るようになっては、本人も周りにも良いことはない。
とりあえず、様子見となり、ようやくセナリアンは母国に戻った。エンペラールも聖女には興味はないと撤退した。
レイ・スズキはブラックがお姫様と言った様に、国賓級の扱いを受け、豪華な食事や装飾品でもてなされ、最低限のマナーや聖女についても学ぶことになった。
そして他の聖女に会いたいとヨバス王国にも行き、交流を図ったそうだ。セナリアンが疫病の心配はないと判断したため、受け入れたが、本来なら断られている。
ヨバス国からもマナーはまだ身に付いていなかったが、特に悪意もなく、ただアザンゼル王国の者たちが相当自慢げだったらしい。浄化・治癒は使えるため、解呪や治癒術は可能だという。
さらに別の国も見たいと、エメラルダ王国にも訪れたいと打診があり、傍観していられなくなった。セナリアンは後方支援に回ると、担当は王太子と魔術師総団長と、年齢の近い女性魔術師団員が務めることとなった。
レイ・スズキは王太子と総団長と話をすることとなった。総団長と女性団員には召喚のことは伏せ、アザンゼル王国で聖女が見付かったと伝えてある。
「こちらの国はどうして聖女がいないのですか」
「当国は聖女を置かないこととなっているのです」
「もし私がこちらの国に来ることになったらどうですか?」
王太子相手に来て欲しいでしょうと言わんばかりだが、後ろでアザンゼル王国の付き添いの者たちが焦っている。
「どういう意味でしょう?」
「こちらの国は便利なものが多くて移動も早いし、お店だって豪華だし。アザンゼル王国に持ち帰りたいと言ったら、それは難しいと言われてしまって。だったらこの国に来た方が早いかなって」
「アザンゼル王国はどう仰ってるんですか」
「私の意見は叶えられる限り叶えてくれるから大丈夫だと思いますよ」
お姫様扱いした弊害か、叶わないことはないと思っている様子である。
「きちんと話し合うべきだと思いますよ」
「でも、こちらの国も聖女が来たら嬉しいのでしょう?」
聖女は素晴らしい存在だとアザンゼル王国で教えられたのだろう。だからどの国も欲しがっていると思い込んでいる。
「先程も申し上げましたが、当国は聖女を置かないのです」
「いないからでしょう?」
「いないというのは少し語弊がありますね、聖女と同じような力を持つ者はいるということです」
「えっ?そ、うなのですか」
「ええ、ただ当国は聖女と呼ぶことをしないと、言った方が分かり易いですかね?」
シャーロット・マクレガーが嫌がったからに他ならない。そして、今の先祖返りであるセナリアンも嫌がっているため、絶対に覆ることはない。
その都度、ルセルとジュジュには手紙が届くのだが、それにいよいよ怒ったのがマージナル。父親とは思えない姿で、何で私には届かないんだ!と言い出し、当たり前だろうと皆は思ったが、本人は至って正気だった。
終いにはルセルの手紙を奪おうとして怒られると、幼いジュジュの手紙まで奪おうとしたが、手紙の端をキュッと握ったジュジュにさすがに良心が痛んだそうだ。
ルラーラは情けない息子で恥ずかしいと落ち込んでしまった。
―――そして六日後、ようやくレイ・スズキの詳細が分かった。
年齢は二十九歳。
疫病の危険性はなく、怪我をしているようではあったが、その他は問題なし。
魔力は持っておらず、いわゆる聖女の力(浄化・治癒)のみが使えることが分かった。戦闘には向かないということだ。
ただし、聖女という部類は愛されるべきということなのか、魅了を持っていた。他国のことであったが、異世界人のせいか、今まで見た聖女の中で一番多かったため、眠っている間にセナリアンが封印した。自覚が無くとも操るようになっては、本人も周りにも良いことはない。
とりあえず、様子見となり、ようやくセナリアンは母国に戻った。エンペラールも聖女には興味はないと撤退した。
レイ・スズキはブラックがお姫様と言った様に、国賓級の扱いを受け、豪華な食事や装飾品でもてなされ、最低限のマナーや聖女についても学ぶことになった。
そして他の聖女に会いたいとヨバス王国にも行き、交流を図ったそうだ。セナリアンが疫病の心配はないと判断したため、受け入れたが、本来なら断られている。
ヨバス国からもマナーはまだ身に付いていなかったが、特に悪意もなく、ただアザンゼル王国の者たちが相当自慢げだったらしい。浄化・治癒は使えるため、解呪や治癒術は可能だという。
さらに別の国も見たいと、エメラルダ王国にも訪れたいと打診があり、傍観していられなくなった。セナリアンは後方支援に回ると、担当は王太子と魔術師総団長と、年齢の近い女性魔術師団員が務めることとなった。
レイ・スズキは王太子と総団長と話をすることとなった。総団長と女性団員には召喚のことは伏せ、アザンゼル王国で聖女が見付かったと伝えてある。
「こちらの国はどうして聖女がいないのですか」
「当国は聖女を置かないこととなっているのです」
「もし私がこちらの国に来ることになったらどうですか?」
王太子相手に来て欲しいでしょうと言わんばかりだが、後ろでアザンゼル王国の付き添いの者たちが焦っている。
「どういう意味でしょう?」
「こちらの国は便利なものが多くて移動も早いし、お店だって豪華だし。アザンゼル王国に持ち帰りたいと言ったら、それは難しいと言われてしまって。だったらこの国に来た方が早いかなって」
「アザンゼル王国はどう仰ってるんですか」
「私の意見は叶えられる限り叶えてくれるから大丈夫だと思いますよ」
お姫様扱いした弊害か、叶わないことはないと思っている様子である。
「きちんと話し合うべきだと思いますよ」
「でも、こちらの国も聖女が来たら嬉しいのでしょう?」
聖女は素晴らしい存在だとアザンゼル王国で教えられたのだろう。だからどの国も欲しがっていると思い込んでいる。
「先程も申し上げましたが、当国は聖女を置かないのです」
「いないからでしょう?」
「いないというのは少し語弊がありますね、聖女と同じような力を持つ者はいるということです」
「えっ?そ、うなのですか」
「ええ、ただ当国は聖女と呼ぶことをしないと、言った方が分かり易いですかね?」
シャーロット・マクレガーが嫌がったからに他ならない。そして、今の先祖返りであるセナリアンも嫌がっているため、絶対に覆ることはない。
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